函館深信 はこだてしんしん-Communication from Hakodate

北海道の自然、そして子どもの育ちと虐待について

ミュンヒハウゼン症候群と映画『シックスセンス』

2008-12-26 | ”自殺”・虐待・ヒトの育ちを考える

1歳娘の点滴に腐敗水 京都府警 殺人未遂で母逮捕 過去3児病死(産経新聞) - goo ニュース

こんな事件に遭遇すると、「それでも親なのか。」などといった言葉に出会うが、そんな言葉を聴くと、なんとなく空々しくて寒気さえ覚える。いろいろな人間がいて、親もいろいろな親がいることを、自分の目の前から切って捨てて生活する中から生まれる言葉だと思うから。

いろいろな親がいる。実の娘に性虐待を10歳前から20歳までしていた父親がいる。夫婦げんかの末、けがをし小学生の娘に病院に付き添わせる母親がいる。家を追い出され、娘がひそかに家に招き入れたのに、腹がへったからと冷蔵庫をガサガサ音をたて、娘の立場を悪くして娘がなぐられる状況をつくる母親がいる。自分には虐待を繰り返してきた父が孫である娘にはやさしくすることに耐えられず「娘なんか大嫌いだ!」と泣く親がいる。
みな、親なのだ。

今回の事件で母親が疑われている病気が『代理性ミュンヒハウゼン症候群』という精神のやまい。
”ミュンヒハウゼン”とカタカナで聞くと、たいへんなむずかしい病気のように思われるが、要は”ほらふき男爵症候群”という意味。
仮病(けびょう)なんか誰でも一生に一度は経験していると思うが、それがくせになると自分で血管に汚物を注射してまで病気を作り出したりする。そうまでしても、医師や看護師やまわりの人たちに心配されたり注目されたりしていなければ生きていけない人たちがいるのだ。
それが、自分ではなく自分のまわりの人を代理にたてて病人にして、その人を甲斐甲斐しく看護する役を自分にとる場合が、『代理性ミュンヒハウゼン症候群』。

『ミュンヒハウゼン症候群』の人も、『代理性ミュンヒハウゼン症候群』の人も、そのような病理をかかえるようなおいたちをもった”被害者”だ。育ってくる中でなにかが本人たちをそんなふうに仕向けたのだと思う。
本来子どもたちは、なにができるとか何の才能があるとかではなく、無条件で愛されるべき存在だ。しかし、そこに条件付きの愛しか与えられないと、ウソをついても自分で条件をつくるしかなくなっていくのではないか。
条件付きの愛が横行する現代では、この病はさらに増えていくのではないか。

けれども、虐待や不適切な育て方は、連鎖させてはいけないんだよ。
自分の中の大人の自分が、「自分がされたことを弱い立場の人間にはしない」生き方を選ばなければならないんだよ。
大人のあなたは、精神科へ通院するなり誰かに相談するなりして、防いでいかなければならない。

『シックスセンス』という映画がある。
映画のジャンルとしては、サスペンスホラーのように分類されていると思うが、私はあの映画『シックスセンス』は、一方で児童虐待のことをたいへん深く取り上げた映画だと思っている。
主人公の職業が児童カウンセラーだったり、霊が見える少年が虐待を疑われていたり、その少年の母親も母親に愛されていなかったと思っていたり、なにより『シックスセンス』の中にまさしく娘に毒を飲ませ悲劇の母親を演じている代理性ミュンヒハウゼン症候群の母が出てきたりしている。
ミュンヒハウゼン症候群のことを、もっと多くの人が知り、そんな人間は特別な存在ではないのだということを、もっと認識すべきだと思っている。

そして、子どもたちに、まわりの人たちに、交換条件付きではない愛を灯すことで、ウソをつかなくても大切にされる社会、生きていける社会をつくっていかなくてはならないのだと思う。

 

 

シックス・センス [DVD]シックス・センス [DVD]
ポニーキャニオン


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。