函館から札幌へ向かう特急の中から撮った小幌駅です。ホームには人の歩いた跡が…
小幌海岸やオアラピヌイへ降りる道は歩けるのかなぁ…
夏には、「積雪期にも来てみたい」とか思いましたが、今の私にはそのような冒険心は起きません………
心だけは、小幌に思いを馳せます。
17時55分、秋の山間はすでに闇に黒く塗りつぶされていました。私は、長万部からやってきた下り普通列車に乗り込み、小幌駅を離れました。
小幌駅滞在、10時間41分。便の関係でほんの小一時間で小幌を離れざるをえない観光のみなさんから見れば、たいへん贅沢な滞在でした。
その間、いろいろなことを考えましたが、同時に、波の音、風の音、波に転がる小石の音、小鳥の鳴く声、トンネルから吹く風、列車がトンネルの反対側に入ったとたんに噴き出す突風、トンネルの警報音、駅構内に流れる注意を促す放送、遮断機の警報音、レールから聞こえる列車の車輪の音、列車の警笛、列車が横切っていく轟音と風の音、など、いろいろな音にもまれ、癒されました。
目にもいろいろな光景が今もはっきりと残っていて、今も私を癒し続けてくれています。
小幌は秘境であり、私たちに必要な存在なのだと、今回の滞在を通して小幌は私に思わせてくれました。
ありがとう、小幌駅 17時55分発下り列車に乗り込む
小幌駅に到着した時から目に飛び込んできた枯れアジサイだった。
小幌駅を離れる前、最後の通過列車の動画を録ろうとした時、なぜか「通過列車の灯りと風に踊る枯れアジサイを録ってみようか」と思い立ち、アジサイにレンズを向けていた。
人は誰しも人生の途中で少なくとも一度は、「もう自分の人生を終えてしまおうか」と考えることがあるのではないだろうか。
私も何度かそんな思いが頭をかすめたことがあるが、実行に移すことなく今日に至っている。
小幌から戻って、2週間。インターネットで小幌に関する情報を拾っていた時に見つけた情報に私は狼狽した。5年以上前の話だが、小幌駅から夕方下車した母子が翌日海岸で変わり果てた姿で見つかったという。
小幌駅からは二つの海岸に出ることができるが、そのどちらもがきびしい勾配の坂道になっている。子どもを連れて夕暮れ時ではなおさらのことだ。そんな中を子どもの手を引きながら海岸へ下りていく母親の姿、表情を思った。その急な勾配さえも、その母親の”自分と子どもを殺そうとする衝動”へのブレーキとなりえなかったということに、私は狼狽した。それはどれほどの怒り、悲しみ、辛さ、恐怖だったのかと思った。
そして、闇の中揺れるアジサイの中に、母子の、そして小幌駅の、小幌海岸の、オアラピヌイの浜の、悲しみを見たように思った。
小幌の悲しみ
10月の小幌駅は17時にはだいぶ暗くなり、信号灯の灯りがはっきりと見えるようになりました。暗くなると先ほどまでの小幌駅がウソのように、静かで寂し気な様子になってきました。
回送の貨物用機関車が一両だけ走っていきました。
しばらくして同じ方向に、また貨物列車が走っていきました。
夕闇の小幌駅 回送機関車と貨物列車
陽が傾いてきたので、崖を登って小幌駅まで戻ることにしました。
ロープが三本下がっていてどれにぶら下がればよいのかわからなかったので、なたを腰に差して下りてきたベテランそうな女性の方に「私みたいな体格でも登れそうなのはどれでしょうねえ。」と尋ねたところ、「そりゃあ、真ん中のロープでしょう。」と即答をいただき、その通りに選び、登りました。崩れやすそうな足場でしたが、なんとか登れました。
ちょうど、夕陽が当たり、岩肌がピンク色に染まっていました。
崖の上から見るオアラピヌイの立岩もすてきで、思わず「ありがとう!」とつぶやいていました。
その先にもまだ難所があり、ロープであんだハシゴが斜面にかかっていました。
ちょうど難所を過ぎたところで、取材にきていたお兄さんに遭遇。
できるだけ避けてガードしていたのに、最後にぶつかってしまいました。
他の人に言っていたのを小耳にはさむに、11月4日(水曜日)テレビ朝日系列の『秘境』シリーズの番組の取材だったようです。
崖の下から小幌駅に戻ると、気持ちがたいへんスッキリして、なんだか憑き物が落ちたように感じました。
オアラピヌイの立岩の浜より小幌駅へ戻る
このひとつ前の投稿は、崖から海岸に降りてすぐに撮ったもの。
こちらは、陽が傾いてきて立岩の陰に入ってしまったので、撮影位置を少しずらして再度撮ったものです。
最近は、この動画をかけながら眠りについています。風もあまりないし、波の音と引き潮にのって小石が転がる音もステキです。スマホの方は、Clipboxという無料アプリに一度ダウンロードしてしまうと、電波の悪いところや機内モードでも見ることができるのでお勧めです。
後光さすオアラピヌイの立岩 小幌
崖を降り立った場所は、オアラピヌイの立岩を見上げるたいへん景色のよい場所でありました。
そこで心ゆくまで波の音を頭に響かせました。
オアラピヌイの浜で波の音を頭に響かせる