ここまでの印象では、長谷は弱いチビ男だと思われているかもしれない。ところが長谷が小さかったのは中学生までで、高校に入ると急に大きくなった。身長は185cm、体重90kgで柔道3段、合気道もやっているという筋骨隆々のストロングマンである。甘いマスクではないが、精悍で男っぽいくせに、涼しげな感じの男である。当然すごくモテる、僕の5倍ぐらいモテる。しかし小さい時に受けた強い印象は続いているようで、僕が殴ったこと、そして虐めから救ったことは今でも覚えているらしい。すこし僕に対しては遠慮するところがある。由美について少し話そう。長谷も僕も一時期由美のことを好きになりかけて、仲良し3人組がギクシャクしたことがあった。そこで僕と長谷は、由美に対しては同性として付き合うことを暗黙のうちに協定したのだ。どうしてわかったって。それはこれぐらい仲が良いと、相手の態度を見ていればその意図するところがお互い分かってくるものなのだ。僕らの暗黙の協定を知ってか、知らずか、由美も僕ら二人から等距離を保っている。それだけならどうということはないのだが、由美の恐ろしいところは、荒ぶるスサノオというのはあったが、それと違って荒ぶる女神のごとく振る舞っているところだ。何か気に入らないことがあると暴力を振るう。といってもか弱い女の子で大したことはないのだが、自分の権利のごとく僕たちに暴力を振るう。まだ僕には肩をパチンと叩くぐらいだが、長谷に対しては、足を思い切り蹴っ飛ばす。面白いのは、あの巨漢長谷が「痛い」と言って逃げ回るところだ。僕たちも最近考えて、由美にはあまり飲まさないようにしているし、社会の矛盾は見せないようにしている。荒ぶる女神を起こさないためだ。
石原慎太郎の評価は高低分かれるている。彼の強引な主張を浴びせられた人や、それを聞いて押しつけがましいと感じる人がする評価は低い。彼の主張を聞いて、そのぶれないことや、筋の通った理屈に魅せられた人がする評価は高い。僕の彼に対する評価はかなり高い。彼の意見が僕の意見と合うことが多いからだ。しかし不満なところもある。それは彼が相手を見て話をしているところがあるところだ。自分が関わりあっていかなければならない相手には、自分の信念であっても相手ともめると思えば話し出さない。そこが少し物足りない気がしたものだ。長い間彼がいろんな相手と喧嘩をするのを見て楽しい思いをさせていただいた。もう見られないとなるとさみしい気がする。