階段を20段ほど上ると、草に覆われているが平坦な広場があり、奥に小さな拝殿があった。拝殿は、柱や屋根のところどころが腐って、長期間放置されているのがすぐに分かった。僕たちは拝殿の周りをグルグル回りながら何か変わったものがないか捜し出した。洋太郎さんはしばらく僕らを見ていたが、時間がかかりそうだと判断したのか、先に戻って行った。僕たちはその広場でしばらくうろうろした後昼食にすることにした。持ってきたのはサンドイッチとポットに入れた暖かいコーヒーだ。お腹がすいていたので、サンドイッチはこの上なくおいしかった。視線を感じて拝殿の方を見るとその影に犬がいるではないか。犬は黒と茶と白が混ざった中型犬で、じっとこちらを見ている。敵意は感じられない。僕らを観察しているように見える。しばらくするとゆっくりとこちらへ歩いてきて2m程手前で止まった。首をかしげるようにしながら、まんまるい茶色の目で僕らを見ている。僕は洋介さんが、いたずら神が変身した猫について日記に書いていたのを思い出した。この犬らしくない犬は、ひょっとしたらいたずら神なのかな、などと思っていた。そうした時、犬と目が合った。なんとなく「そうだよ」と言っているような気がしたが、すぐに打ち消した。由美がサンドイッチの切れ端を犬のところへ持っていくと、犬は警戒もせず食べ始めた。
「見てこれ。曽おじいちゃんが神様の子が変身した猫におにぎりをあげたのと似ていない。きっとそうだわ」
「想像力がたくましいな。そんな簡単に神様に会えるわけがないよ。」
「でもそう思っといた方が面白いなあ」
「賛成、きっと猫に変身しようとして未熟だから犬になってしまったのよ。だから名前は猫犬、ネーコイにしましょ。」
「名前なんか付けたって、もう2度と会わないかもしれないのに」
「いたずら神様なんだからこれからも会えるわよ。それにネーコイっていう名前とっても気に入ったわ。」
何でもよくなった。どうせ由美様のいうことは絶対だ、ということにしておこう、平和のために。」
「見てこれ。曽おじいちゃんが神様の子が変身した猫におにぎりをあげたのと似ていない。きっとそうだわ」
「想像力がたくましいな。そんな簡単に神様に会えるわけがないよ。」
「でもそう思っといた方が面白いなあ」
「賛成、きっと猫に変身しようとして未熟だから犬になってしまったのよ。だから名前は猫犬、ネーコイにしましょ。」
「名前なんか付けたって、もう2度と会わないかもしれないのに」
「いたずら神様なんだからこれからも会えるわよ。それにネーコイっていう名前とっても気に入ったわ。」
何でもよくなった。どうせ由美様のいうことは絶対だ、ということにしておこう、平和のために。」