有吉佐和子さんといえば有名な小説家で「複合汚染」「恍惚の人」「紀ノ川」などの名作がずらりと並んでいます。特に恍惚の人は映画化され、進行度が強い認知症を老人をテーマにした現在の社会問題を鋭くえぐった作品としてベストセラーにもなりました。
有吉さんは和歌山県の生まれで三大川小説を残されました。「紀ノ川」「日高川」そして「有田川」です。そのうちの「紀ノ川」は1964年にNHKでテレビドラマ化、1966年、中村登監督により松竹で映画化され全国にセンセーションを巻き起こしました。
さて今回、三大川小説の内私が興味を持ったのは有田川の蜜柑栽培を舞台にした「有田川」です。先般小説の舞台になった有田市宮原地区の老舗農園「滝庄農園」さんを訪問させていただきその実に美しい景観に感動したので小説にも興味を持ち、読んだ次第です。
(美しい蜜柑山。遠くに海が眺められるという最高のローケーション!)
小説を多忙なネットユーザーの為に感想を要約すると
・周囲の風景の描写が実に美しい表現で描かれている。特に出だしは見事。
・主人公は貰い子という肩身の狭い運命を背負いながらも蜜柑栽培に情熱を燃やしその人生を、たくましく生きる女性として見事に描かれている
・蜜柑の栽培の勉強になった。栽培は一苦労である。
・有田の蜜柑はやはり日本一だと思った。
(滝庄農園さんから届いた蜜柑です。やや小粒ですが皮に張りがあり実につややか。もちろん味も抜群です。)
主人公のたくましく生きる生き様も素晴らしいものがありましたが、私の場合、併せて周辺の景色の描写の方にも大変ひかれたと思います。
小説家の描写や写真を見てもたしかに充分綺麗なのだけれど、美しいものは海中のサンゴや魚でも自分の目で見て触れることが大切と思っており、逆に実物を見てから小説の描写を味わうと格別なものがあります。実際有吉さんの描写は素晴らしかったです。
手前味噌な発言で恐縮ですが、たいがいの読書感想に重要な視点を欠いていると感じます。
それは生業とはいえ、その美しい田畑を何代もの世代で守ってきた人々こそすばらしいと思うのです。(数世代の継承だと100年ぐらいの時間になる!)
(右側の蜜柑はスーパーで買った他府県もの。皮がむけやすいが味はイマイチ。左側は有田の滝庄農園さんの蜜柑。皮を剥こうとするとボロボロと崩れるが味が抜群!)
多くの人は商売だからとか結局広大な田畑で相応に安定した収入もあるからという気もちがあるからだろうとはおもいますが農園管理は並大抵な苦労ではないはずです。風が吹いているから雨が吹いているからでは放置できない。現在では機械化が進んでおり昔からは楽になっただろうとは言え堆肥、剪定、防虫、収穫の一連は一筋縄ではいかないと容易に想像できます。美しい景色は無形文化財でなく、有形の文化財と考えれば、私が目にした蜜柑畑に美しい蜜柑が人の管理がなく結実しないと、もはや美しさも半減し文化財の価値がなくなるような気がするのです。
それだけに美しい光景を残してくれる皆さんにはいつまでもお元気でいただきたいと切に願います。
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