1956(昭和31)年4月、地方の大学を卒業して就職したのが「ニュースの卸問屋」とも呼ばれる通信社である。その年は確か4月1日が日曜日で、入社式は2日に行なわれた。同期入社したのは30数名だったが、事務職1人、技術職は私を入れて3人、あとは写真記者(カメラマン)を含めて編集関係の記者が多かった。
入社早々から地方支社勤務として配属が決められ、数日の仕事内容の説明を受けただけで赴任することになる。その数日の間にお互いの顔合わせの懇親会が持たれた。そのときだれた付けたか、同期会の名前を「あすなろ」と。
作家の井上靖が1953年に著した小説「あすなろ」(新潮社刊)にちなんだものだろう。井上靖の自伝的小説だと言われている。少年鮎太が明日は檜になろうと願いながらも檜になれないという、「あすなろ」という木の名前にちなむ内容である。
アスナロは、ネズコ、サワラ、コウヤマキ、ヒノキと並んで木曽五木の一つである。漢字で書くと「翌檜」、植物の分類で見ると--ヒノキ科・アスナロ属・種はアスナロ--なのだ。漢字名はいかにも“明日は檜になる”を連想する。
私が岐阜県の明智鉄道を訪ねた時、中央西線の特急ワイドビューしなのを中津川で途中下車した。駅前ロータリーの一角に木曽五木が植えられていた。
中津川駅前ロータリーにて
同期の仲間で社長になったものは残念ながらいないが、役員には数名がなっている。私はコンピューターセンター長を最後に定年を迎えた。大きな病気などで長く休むことはなかったが、やっぱり檜にはなれなかった。その後のお礼奉公も含め健康に恵まれて勤め上げたことに感謝している。
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