2nd Stageトラバース

50代で転職し、第二の人生スタート。
もがいて、笑って頑張るおやじをお届けします。

聞き流された五郎兵衛米

2019-12-12 21:50:49 | お米語り
社会人になったらすぐに結婚するとでも思ったか。

新卒入社2年目、一人暮らしの営業マン。チャラい人生語るなよ。社会の厳しさは半端じゃなかった。
事務所に帰っても誰もおらず、クタクタだから家で自炊なんかしたことない。
昼も外食、夜も外食。
営業数字を出すことが唯一自分の存在価値だったのか。
そう、何でこんなに働いているのか自分自身で分かっていない。

「独身だから遊び放題でしょ。」
人からよく言われたけれど分かってねぇな。
朝起きるのが毎日怖いんだよ。また今日も夜中まで働くのかと思うとね、朝起きても20分くらい、一点見つめてボーっとしている。

実家から届いた小包も、開けずに玄関に置きっぱなし。
「小包届いたら電話くらいしろよ」 
「美味い米、送ってんだから。食べたのか。美味いだろ。」
会社で営業数字を詰められ、親から恩着せがましい言葉で詰められ、うるせーよ。

「五郎兵衛米だぞ。知らないのか。」
知るわけないだろ。どれだけ暇人なんだ。




「五郎兵衛米」って初めて耳にした。初めて出会った。
何の感動もない。信州のどっかのジイさんが作っている米なのか・・・。

美味いお米のありがたさ。美味いご飯を食べた時の感動。
大事なことに気づくにはそれからさらに膨大な時間を要した。

それでも、「五郎兵衛米」を知ったあの刹那は、今でもはっきり覚えている。