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高村薫 未来見据え環境整備を

2012年03月09日 | 新聞から



今日の北海道新聞9面、各自核論(毎週金曜日に掲載)からのアップです


『子どもたちのために』作家 高村薫 「未来見据え環境整備を」


東日本大震災は日本が大きな岐路にさしかかっている時に起きました。

阪神大震災の時とは時代状況が変わっています。

当時、既にバブルは崩壊していましたが、ここまで日本の先行きが不透明になるとは誰も想像していなかった。

国力が落ち、人口が減少し、財政が傾き、その回復の見込みもない。

こんなにも、未来が見えなくなるとは。

今回の震災は三陸沿岸の過疎の町を襲いました。

人口が減少すで、これから社会インフラをどうするんだという時にです。

限りある復興資金で行われるのは、道路であり、港湾であり、住宅の「元通り」の再建です。

失ったものを取り戻したいという気持ちは分かりますが、仮に実現したとしても、その先に未来はあるのか。

でも「元通りではだめだ」と政治もメディアもなかなか言わない。

被災者にはつらい選択ですから。

自分が現地の中高年だったらと考えると私自身も言えない。

これが今の日本社会の限界であり、私たちが直面しているのは「世の中にはどうしようもないことがある」ということではないか。

そんな、ある種の諦観があります。

でも一方で、理性がやっぱり、「このままじゃだめだ」って言うんです。

なぜなら、子どもたちがいるからです。

復興資金は当然、未来のために使わなければなりません。

未来とは何か。それは子どもたちです。

子どもたちのために、今何とかしなければならないことがある、と。

例えば、教育です。港湾や道路と違い、教育は形のないものです。

でも、子どもの教育に手厚いと言う環境がひとつあると、必ず大人が子どものために定着します。

そして、東北を中心に、雇用だけでなく、産業や研究機関、先端技術が集まってくる。

そういう生活圏が築けたら理想的です。

財政難の中で各自治体の要求をひたすら吸い上げる今のやり方では、すべてが中途半端に終わり、新しい廃墟があちこちに残されることになりかねない。

住宅や漁港などの社会インフラを集約することで、復興資金を子どもたちの方に振り分けるべきです。

そして、問題は原発です。

これまで地震国に54基もの原発があるという現実を眺めながら、いろいろな文章を書いてきました。

でも、それは頭で書いてきたもの。それがもはや、原発事故は、私が身体で受け止めた事実になっている。

そうなってしまった今...言葉がないんですよね。

私もこの時代をつくり、生きてきた一人なのですから。

無垢ではありません。

私たち中高年は子どもたちに対し、本当に頭(こうべ)を垂れるべきです。

再び大地震が起きた時の被害とその先の未来を考えたら、電力が少々足りなくても、生活活動が制限されても、原発は止めなければならない。

理性の出番です。

私たちは「どうしようもない」現実を認めた上で、先に進まなければなりません。

さまざまな価値観と欲望に動かされる世の中で、どうやったら最低限の合意点を見いだせるか。

とても難しいことですが、子どもたちのことであれば、私たちは一致できるはずです。


高村薫 53年大阪生まれ。国際基督教大卒。93年に「マークスの山」で直木賞受賞。「神の火」「新リア王」では原発問題を題材として扱っている。



3・11を前に、いろいろな方の考えをアップしたいと思っています。








作家 高村薫 原発







    


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