悔しいけど、自分には能力が足りて無い。
嬉しい事に、独立して14年くらいで18軒ほど新築や大きなリノベーションの設計と施工をさせてもらってきました。
求められるのは過去の自分で、「あの時のAさんちのように」「あの家をこんな雰囲気で同じくらいの予算で」と以前建てた家を基準に依頼される事をぶち壊せるだけの能力が無かったのです。
そんな思いを抱え悩んでいたタイミングで谷尻誠さんの案件を施工させて頂く事が出来ました。
友達からは「なんでわざわざ難しい仕事するの?」「ケンタローさんならもっと楽に金になる仕事をいくらでも選べるでしょ?」と言われた事もありましたが、自分が考えていても思い浮かばない形や収まり、建築の予算がいつもよりあるから出来る仕様や素材を体験してみたかったのです。
私がその時思っていた事を谷尻さんの奥様の直子さんに話した時「良いパタンナーが良いデザイナーになりきれない感じと同じかもね」と話してくれたのが的を得ていました。
私は書きながら予算を明確に考えます。作り方も手順も考えるので、設定予算より抑えめに作図してしまいます。予算を越えて書くと「なんで予算を守らないんですか?」となるからです。
ものすごい重い蓋が乗った作図しか出来ない事が嫌でした。
サポーズの様にまずおおよその予算を目指して作ったプランから、無駄を削ぎ落として行く作業で詰めて行く、そんな方法だから生まれる濃縮したデザインがあるんだと思ったのです。
その原動力は谷尻さん、愛さんから生まれる一撃の情熱で、そこはどう足掻いても私には無い能力なんです。
もちろん私は建築家では無いし、そこで戦ってきた訳じゃ無いので、同じでは無いけど、作り手だから分かる能力の差は感じずにはいれなかったのです。
だからって崇拝しているわけじゃないんだけど、近くで感じるからこそ「もっと知りたい」と自分の能力の限界を押し上げる為に共に戦いたいと思っているのです。
それはきっと自分の為、お客さんの為になると思うからです。
足りない事を気づかせてくれた、この人の頭の中の想像をいつか超えてみたい。
それが谷尻さんと共に形にしたいと願った理由です。
まだまだ作る事でも足りない事があるけど、「何も言われない」そんな自然に思える景色を作りたいんですよね。
だから簡単に稼げることより、求めた道なのです。
簡単な家なんて、オレじゃなくても良いじゃん。誰かがやってくれるよ。
オレはオレにしか出来ない事を探したいのです。
足りないからね。
もっと人の脳みそを理解できる様になりたいな。