2021年最後のブログです。その前の発信から半年以上あいてしまいました。
そのことが2021年の激動を物語っています。2021年は東日本大震災と福島第一原発事故から10年の節目の年でしたが、その記憶はかすれ、新型コロナウィルスと東京オリンピックが強烈な印象を残しました。原子力市民委員会では、原発ゼロ社会への道2021を世に出すべく頑張りましたが、問題が山積しすぎていて、年内にまとまりませんでした。GPPセミナーでも「フクシマ、この10年を思い起こそう!何が変わり、何が変わっていないのか。」と題して、全6回のセミナーをやりましたが、問題解決ではなく、問題の上に問題が積み上がった感を深くしました。
第1回目のセミナー「福島ではいま、何が起こっているのか」
https://www.greenpeople.co.jp/event/2979/
ゲストは武藤類子さん(福島原発告訴団団長)
仕事上では、卸電力取引所(電気小売市場)の市場価格「暴騰」で始まった1年でした。そして4月に父と母が天国に旅立ちました。そして年末、市場価格がじわりと再び高騰しています。今も、その対策に追われ、実は年末年始をゆっくり過ごす余裕もありません。それでも、なんとか「タケちゃん」の声を届けねばと、年の終わりにパソコンに向かっています。
★トップ画像は「再エネ応援ファンド」。年間目標額2000万円で、再エネへの支援をお願いしています。
一口は1000円、小さな金額をいっぱい集めたいのです。
https://www.greenpeople.co.jp/fund/
突然襲ってきた市場価格高騰
たけちゃんは、電気をつくって、電気を売っています。世に言う「新電力」、昔の言葉?では電力会社です。ただし、その言葉がイメージさせるものとはかなり違う、「小さな小さな電力会社」です。電気は太陽光発電でつくっています。もはや、その電気だけでは足りませんので、他の市民電力などの電気を仕入れ(専門用語では「調達」と言います。)供給しています。
会社の名前は「グリーンピープルズパワー」と言います。発電しているのは「イージーパワー」という会社です。電気小売市場からは、多い月でも半分くらいしか購入しておらず、4月、5月は、調達した電気でほぼ100%再生可能エネルギー(再エネ)の電気を供給しています。
新電力の会社を2017年に設立してから5年でようやくここまで到達しました。ところが、日本の電力システムでは、私たちがつくった再エネ電気に「市場価格」で支払うことになっています。100%自分たちの電気でも、仕入れは「市場価格」で請求され、市場価格が高騰すると大打撃を受けるのです。
どうしてそんなことに?それは日本のFIT制度という仕組みのせいです。FIT制度は、再エネ発電所の電気は、他の電気より高く買い取るという制度で、発電事業社にはありがたい制度です。買い取るのは電力会社ということになっているのですが、2016年に一般家庭も電力会社を選べる「電力自由化」が行われたとき、新電力の負担を和らげるという理由で、「送配電事業者が買取る」と改められたのです。
それでは、自社調達した発電所の電気も買えないのかということになりますので、新電力と発電所での買取契約があるときには、送配電事業者がその新電力に電気を引き渡すという仕組みを作ったのです。これを「特定卸供給制度」と言います。そして、その「特定卸」の引渡し価格が「市場価格」と決められました。だから自社調達した電気でも、とても高い市場価格を支払うことになってしまったのです。
こんな複雑な制度、人に説明するのが大変ですよね。だから新電力は大打撃といっても、なかなか理解してもらえませんでした。さらに、市場価格高騰の原因が、当初は全くわかりませんでした。原因解明と、再エネ新電力大打撃の説明と、1月、2月は本当に大変でした。
REAP(再エネ推進新電力協議会)が設立
日本の電力システムの問題はこれだけではありません。再エネ発電所は、なかなか送電線につないでもらえない(接続制限)、接続されても原発や石炭火力が優先されて再エネ発電所の電気は送電を止められる(送電抑制)、さらには複雑な電力システムを改善するためにという名目で、「もっと悪くなるんじゃないのー」というような仕組みがいろいろ作られました。その一つに「容量市場」というものがあります。
ここでは容量市場の解説はしませんが、興味ある人はグリーンピープルズパワーのホームページに「用語解説」がありますので、読んでみてください。
https://www.greenpeople.co.jp/term/
また、「容量市場、竹村英明」とウェブ検索していただくと、20以上の記事や映像が出てくると思います。
この制度によって、新電力は2024年に莫大な額の拠出金を求められることになっています。制度の是非はともかくとして、経営が成り立たないほどの請求をされ、潰れる新電力も続々というような制度です。政府の電力システム設計がおかしいからで、これは新電力側からもの申す(政策提案できる)新電力の団体が必要だよね・・ということで、ライバルである新電力どうしが話し合い、再エネ推進新電力協議会(略称「REAP」)を設立しようと2020年12月に動き出しました。
その中で、電力小売市場の市場価格高騰に突然襲われたのです。おかげですぐに緊急相談会ができ、直ちに市場の管理者であるJEPX(日本卸電力取引所)や監督者である「電力・ガス取引監視等委員会」、そして経産省の電力・ガス事業部などと直接話し合うことができました。その結果、比較的早く、この市場価格高騰の原因を見つけることができたのです。
その内容については、「市場価格高騰、竹村英明」で検索してください。やはり20以上の記事や映像が出てきますよ。2021年には、本当にたくさんの原稿を書き、取材を受けました。
REAPの登場は日本の電力システム改革にとって大きな意味があるかもしれません。12月28日には、経産省主導で「第1回 卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の在り方勉強会」が開催されました。大前提として、現在の電気小売市場が「不確実性の高い」ものであること、このままでは安定した電力供給にも支障をきたす恐れがあることなどが話されています。ともかく、「このままではいけない」ということになったということです。
非FIT発電所とPPA(長期電力購入契約)への展開
タケちゃんの新電力「グリーンピープルズパワー」(これ以後は、「GPP」と略させてもらいます。)は、FIT発電所で電気を供給していると、これからたびたび不確実な小売電気市場の価格高騰で打撃を受けることになるなと感じました。そこで、FITではない発電所の電気を増やすことにしました。
FIT制度では、FIT価格で電気を買い取るために、再エネ発電所がFIT認定を受けることを求めています。この認定を受けない再エネ発電所は「非FIT発電所」となります。非FIT発電所の比率が50%になれば、今あるFIT発電所の電気は余ります。それは市場に販売すれば良いのです。もし非FIT50%、自分で使うFIT50%、市場販売するFIT50%で、全部が150%になれば、市場高騰したときに、自分で使うFITの価格が高騰しても、市場で販売するFITの価格も高騰しているので、プラスマイナスゼロになります。非FITの電気は固定価格で長期契約していますから高騰はしません。つまり、市場の影響を受けない、安定した電力供給ができるのです。
GPPの自立化、強靭化作戦ですが、非FIT発電所をどんどん作るにはお金が必要です。そのお金を作る方が、発電所を作るよりも実は大変なのです。これまでの発電所は、社債(少人数私募債)を発行し、それを引き受けてもらう(出資してもらう)ことで発電所の建設資金をつくってきました。1回の社債で、低圧49.5kWの発電所がやっと一つできるくらいです。これでは非FIT50%構想は間に合わないかもしれません。
そうしたら、非FIT発電所をつくったので電気を買ってくれないか、これから作るが買ってくれるのか・・という問い合わせが次々に入るようになったのです。実はFIT制度も2012年にスタートしてから、どんどん買取価格を下げており、2021年度の買取価格(10kW以上、50kW未満)は税抜12円/kWhになっていました。GPPが提案している非FIT電気の買取価格は税込12円/kWhです。もはや税込か税抜かの差しかなかったのです。継続して20年間買ってくれるのだったらFITと同じだ、ということでお話が舞い込んだのです。
これを専門用語でPPA(長期電力購入契約)と言います。
世の中では、もう一つのPPAも始まりました。屋根や屋上の上に、新電力が発電所を作り、その施設に電気を直接供給します。オンサイトPPAと呼ばれます。さらに、特定の発電所の電気を特定の施設に遠距離でも送電線を使って供給する「オフサイトPPA」という仕組みも始まっています。この場合、電気は直接契約なので、市場価格の不確実性に左右されません。ということでGPPも発電所を作り、PPA供給を始めることになりました。横浜の瀬谷区にある愛成苑という特別養護老人ホームです。この話は、実際に発電所ができて供給を始めたら、改めて詳しくご紹介しようと思います。
初めての非FIT「馬来田発電所」
最後は12月6日に発電を開始した「馬来田発電所」です。イージーパワーの発電所ですが、GPPに税込12円/kWhの電気を売る「非FIT発電所」です。GPPの自立化、強靭化計画を実現すべく積極的に発電所の設置場所を探しました。場所はいろいろ現れました。神奈川県、埼玉県、茨城県そして千葉県。その候補地の中で、最も早く発電所設置が実現したのが、ここです。
千葉県のJP久留里線「馬来田」駅の近くです。FIT発電所を予定していたのに、諸般の事情で作れなくなった土地でした。農地でしたので、農地転用から、土地の購入、東電パワーグリッドへの接続申請など、一通りの実地練習になりました。コロナ禍であっても、発電所づくりには現地を見ることは欠かせません。周辺住宅へのご挨拶も含めて、馬来田には三度出向きました。
その次の候補地は、もう少し房総半島の内部に入った高滝というところです。すぐ近くには高滝湖というダム湖があります。候補地は、むしろ次から次に現れます。農家が高齢化し、農地を維持できなくなっている現状が、背景にはあります。畑や田んぼが、宅地になるか発電所になるか、都会では猛烈な勢いで宅地になっているのですが、田舎では発電所になるということでしょうか。本来は農地として活用しながら、その上で発電するソーラーシェアリングが望ましいのですが、タケちゃんももはや「高齢」になっていて、耕作者になることは難しいのです。それでも、農地転用は簡単にはできない「一種農地」での相談も現れています。発電所にするには「ソーラーシェアリング」しかなく、各方面に相談してみようと思っています。
馬来田発電所写真
2022年を迎えて、10年後を予測する
こうして1年を振り返ると、仕事の話ばっかりで、本当に仕事していたなあ・・と、改めて思います。新型コロナウィルスの感染拡大の中、2020年の3月から「テレワーク体制」に入り、2020年の暮れまでは近隣の散歩で得た情報など発信していたのですが、1年9ヶ月を越えた今、ZOOM漬けの日々となっています毎日のようにZOOM会議やZOOM商談や、ZOOMセミナーです。移動時間が無いので、会議から会議へワープできます。1日のスケジュールがびっしりと埋まり、文字通り息つく暇もありません。仕事の効率性は絶大にアップで、この2年で4、5年分の仕事をしたような感じです。
でも、そのぶん身体も神経も相当に疲れているのではと思います。誰もがおそらく似たり寄ったりなのではないでしょうか?画面の中だけのコミュニケーション、またはメールに頼るコミュニケーションは、どうしても不十分です。伝えたいことが伝わっていないということが当たり前で、トラブルもたくさん起こりました。人間関係がギスギスして、険悪な空気となったこともありました。逆にそれを解消するために、どんなコミュニケーション方法が大事なのか、どういうルールが必要なのかを真剣に考えるようにもなりました。毎日顔を合わせて「微調整」できていたら、生まれなかった思考法かもしれません。これも進化です。
対面営業を得意としていたGPPは、それを封じられたコロナ禍では、あまりユーザーが増えませんでした。今季は黒字達成が確実だったはずなのに、市場価格高騰の影響を差し引いいても目標達成ならずでした。もっとも、そのおかげで市場価格高騰の影響が小さくて済んだとも言えます。ユーザー数が多く売上が多いほど、逆ざや損失額は大きくなるからです。そして不幸中の幸いと言うべきか、GPPが新電力として進むべき姿が見えてきました。
一つは「取次店」の展開です。とくに「東電エリア外」でGPPの電気を求めている人たちがたくさんいらっしゃると言うことです。ZOOMセミナーは地域の垣根を取り除きました。東京の人も沖縄の人も、北海道の人も一緒に話せるのです。GPPは日本中で電気売らなければいけない、と言うことです。
「取次店」にはできるだけ利益が落とせるようにしました。100人のユーザーがあれば9万円、500人なら40万円、少なくとも一人に人が生きていける「ベーシックインカム」になるのではないかと考えました。いま仕事がない人は、GPPの電気売ってください!と言うわけです。各地の人に「取次店」になっていただきたいと思います。
もう一つはVPPです。バーチャルパワープラントと読みます。もともとは発電所を代替する省エネという意味です。市場価格の動きは、太陽光発電の電気がない早朝と夕方に高騰するパターンになってきています。そこで昼間の太陽光発電の電気を蓄電池に貯めて、朝夕に使う。詳細な技術の話は、後日に回しますが、実現すると夜の電気もほぼ再エネで賄えるようになります。
非FITで市場価格に左右されず、朝夕も安価な電気を供給する、そんな仕組みを日本中でGPPが提供するという時代がやってくるかもしれません。市場価格高騰していても、安価に再エネ100%の電気をお届けする新電力。こりゃ、10年後「一人勝ちだな。」
うーむ、やっぱり仕事の話で終わった2022年でした。
★なおGPPは今年から、エネルギー問題だけでなく、広く社会の課題を取り上げ、解決するにはどうしたら良いかを考えていきたいと思います。最初まずは貧困問題、反貧困ネットワークの瀬戸大作さんと考えます。
日時 1月25日(火)18時から
申し込みはこちらから
https://www.greenpeople.co.jp/event/6749/
そのことが2021年の激動を物語っています。2021年は東日本大震災と福島第一原発事故から10年の節目の年でしたが、その記憶はかすれ、新型コロナウィルスと東京オリンピックが強烈な印象を残しました。原子力市民委員会では、原発ゼロ社会への道2021を世に出すべく頑張りましたが、問題が山積しすぎていて、年内にまとまりませんでした。GPPセミナーでも「フクシマ、この10年を思い起こそう!何が変わり、何が変わっていないのか。」と題して、全6回のセミナーをやりましたが、問題解決ではなく、問題の上に問題が積み上がった感を深くしました。
第1回目のセミナー「福島ではいま、何が起こっているのか」
https://www.greenpeople.co.jp/event/2979/
ゲストは武藤類子さん(福島原発告訴団団長)
仕事上では、卸電力取引所(電気小売市場)の市場価格「暴騰」で始まった1年でした。そして4月に父と母が天国に旅立ちました。そして年末、市場価格がじわりと再び高騰しています。今も、その対策に追われ、実は年末年始をゆっくり過ごす余裕もありません。それでも、なんとか「タケちゃん」の声を届けねばと、年の終わりにパソコンに向かっています。
★トップ画像は「再エネ応援ファンド」。年間目標額2000万円で、再エネへの支援をお願いしています。
一口は1000円、小さな金額をいっぱい集めたいのです。
https://www.greenpeople.co.jp/fund/
突然襲ってきた市場価格高騰
たけちゃんは、電気をつくって、電気を売っています。世に言う「新電力」、昔の言葉?では電力会社です。ただし、その言葉がイメージさせるものとはかなり違う、「小さな小さな電力会社」です。電気は太陽光発電でつくっています。もはや、その電気だけでは足りませんので、他の市民電力などの電気を仕入れ(専門用語では「調達」と言います。)供給しています。
会社の名前は「グリーンピープルズパワー」と言います。発電しているのは「イージーパワー」という会社です。電気小売市場からは、多い月でも半分くらいしか購入しておらず、4月、5月は、調達した電気でほぼ100%再生可能エネルギー(再エネ)の電気を供給しています。
新電力の会社を2017年に設立してから5年でようやくここまで到達しました。ところが、日本の電力システムでは、私たちがつくった再エネ電気に「市場価格」で支払うことになっています。100%自分たちの電気でも、仕入れは「市場価格」で請求され、市場価格が高騰すると大打撃を受けるのです。
どうしてそんなことに?それは日本のFIT制度という仕組みのせいです。FIT制度は、再エネ発電所の電気は、他の電気より高く買い取るという制度で、発電事業社にはありがたい制度です。買い取るのは電力会社ということになっているのですが、2016年に一般家庭も電力会社を選べる「電力自由化」が行われたとき、新電力の負担を和らげるという理由で、「送配電事業者が買取る」と改められたのです。
それでは、自社調達した発電所の電気も買えないのかということになりますので、新電力と発電所での買取契約があるときには、送配電事業者がその新電力に電気を引き渡すという仕組みを作ったのです。これを「特定卸供給制度」と言います。そして、その「特定卸」の引渡し価格が「市場価格」と決められました。だから自社調達した電気でも、とても高い市場価格を支払うことになってしまったのです。
こんな複雑な制度、人に説明するのが大変ですよね。だから新電力は大打撃といっても、なかなか理解してもらえませんでした。さらに、市場価格高騰の原因が、当初は全くわかりませんでした。原因解明と、再エネ新電力大打撃の説明と、1月、2月は本当に大変でした。
REAP(再エネ推進新電力協議会)が設立
日本の電力システムの問題はこれだけではありません。再エネ発電所は、なかなか送電線につないでもらえない(接続制限)、接続されても原発や石炭火力が優先されて再エネ発電所の電気は送電を止められる(送電抑制)、さらには複雑な電力システムを改善するためにという名目で、「もっと悪くなるんじゃないのー」というような仕組みがいろいろ作られました。その一つに「容量市場」というものがあります。
ここでは容量市場の解説はしませんが、興味ある人はグリーンピープルズパワーのホームページに「用語解説」がありますので、読んでみてください。
https://www.greenpeople.co.jp/term/
また、「容量市場、竹村英明」とウェブ検索していただくと、20以上の記事や映像が出てくると思います。
この制度によって、新電力は2024年に莫大な額の拠出金を求められることになっています。制度の是非はともかくとして、経営が成り立たないほどの請求をされ、潰れる新電力も続々というような制度です。政府の電力システム設計がおかしいからで、これは新電力側からもの申す(政策提案できる)新電力の団体が必要だよね・・ということで、ライバルである新電力どうしが話し合い、再エネ推進新電力協議会(略称「REAP」)を設立しようと2020年12月に動き出しました。
その中で、電力小売市場の市場価格高騰に突然襲われたのです。おかげですぐに緊急相談会ができ、直ちに市場の管理者であるJEPX(日本卸電力取引所)や監督者である「電力・ガス取引監視等委員会」、そして経産省の電力・ガス事業部などと直接話し合うことができました。その結果、比較的早く、この市場価格高騰の原因を見つけることができたのです。
その内容については、「市場価格高騰、竹村英明」で検索してください。やはり20以上の記事や映像が出てきますよ。2021年には、本当にたくさんの原稿を書き、取材を受けました。
REAPの登場は日本の電力システム改革にとって大きな意味があるかもしれません。12月28日には、経産省主導で「第1回 卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の在り方勉強会」が開催されました。大前提として、現在の電気小売市場が「不確実性の高い」ものであること、このままでは安定した電力供給にも支障をきたす恐れがあることなどが話されています。ともかく、「このままではいけない」ということになったということです。
非FIT発電所とPPA(長期電力購入契約)への展開
タケちゃんの新電力「グリーンピープルズパワー」(これ以後は、「GPP」と略させてもらいます。)は、FIT発電所で電気を供給していると、これからたびたび不確実な小売電気市場の価格高騰で打撃を受けることになるなと感じました。そこで、FITではない発電所の電気を増やすことにしました。
FIT制度では、FIT価格で電気を買い取るために、再エネ発電所がFIT認定を受けることを求めています。この認定を受けない再エネ発電所は「非FIT発電所」となります。非FIT発電所の比率が50%になれば、今あるFIT発電所の電気は余ります。それは市場に販売すれば良いのです。もし非FIT50%、自分で使うFIT50%、市場販売するFIT50%で、全部が150%になれば、市場高騰したときに、自分で使うFITの価格が高騰しても、市場で販売するFITの価格も高騰しているので、プラスマイナスゼロになります。非FITの電気は固定価格で長期契約していますから高騰はしません。つまり、市場の影響を受けない、安定した電力供給ができるのです。
GPPの自立化、強靭化作戦ですが、非FIT発電所をどんどん作るにはお金が必要です。そのお金を作る方が、発電所を作るよりも実は大変なのです。これまでの発電所は、社債(少人数私募債)を発行し、それを引き受けてもらう(出資してもらう)ことで発電所の建設資金をつくってきました。1回の社債で、低圧49.5kWの発電所がやっと一つできるくらいです。これでは非FIT50%構想は間に合わないかもしれません。
そうしたら、非FIT発電所をつくったので電気を買ってくれないか、これから作るが買ってくれるのか・・という問い合わせが次々に入るようになったのです。実はFIT制度も2012年にスタートしてから、どんどん買取価格を下げており、2021年度の買取価格(10kW以上、50kW未満)は税抜12円/kWhになっていました。GPPが提案している非FIT電気の買取価格は税込12円/kWhです。もはや税込か税抜かの差しかなかったのです。継続して20年間買ってくれるのだったらFITと同じだ、ということでお話が舞い込んだのです。
これを専門用語でPPA(長期電力購入契約)と言います。
世の中では、もう一つのPPAも始まりました。屋根や屋上の上に、新電力が発電所を作り、その施設に電気を直接供給します。オンサイトPPAと呼ばれます。さらに、特定の発電所の電気を特定の施設に遠距離でも送電線を使って供給する「オフサイトPPA」という仕組みも始まっています。この場合、電気は直接契約なので、市場価格の不確実性に左右されません。ということでGPPも発電所を作り、PPA供給を始めることになりました。横浜の瀬谷区にある愛成苑という特別養護老人ホームです。この話は、実際に発電所ができて供給を始めたら、改めて詳しくご紹介しようと思います。
初めての非FIT「馬来田発電所」
最後は12月6日に発電を開始した「馬来田発電所」です。イージーパワーの発電所ですが、GPPに税込12円/kWhの電気を売る「非FIT発電所」です。GPPの自立化、強靭化計画を実現すべく積極的に発電所の設置場所を探しました。場所はいろいろ現れました。神奈川県、埼玉県、茨城県そして千葉県。その候補地の中で、最も早く発電所設置が実現したのが、ここです。
千葉県のJP久留里線「馬来田」駅の近くです。FIT発電所を予定していたのに、諸般の事情で作れなくなった土地でした。農地でしたので、農地転用から、土地の購入、東電パワーグリッドへの接続申請など、一通りの実地練習になりました。コロナ禍であっても、発電所づくりには現地を見ることは欠かせません。周辺住宅へのご挨拶も含めて、馬来田には三度出向きました。
その次の候補地は、もう少し房総半島の内部に入った高滝というところです。すぐ近くには高滝湖というダム湖があります。候補地は、むしろ次から次に現れます。農家が高齢化し、農地を維持できなくなっている現状が、背景にはあります。畑や田んぼが、宅地になるか発電所になるか、都会では猛烈な勢いで宅地になっているのですが、田舎では発電所になるということでしょうか。本来は農地として活用しながら、その上で発電するソーラーシェアリングが望ましいのですが、タケちゃんももはや「高齢」になっていて、耕作者になることは難しいのです。それでも、農地転用は簡単にはできない「一種農地」での相談も現れています。発電所にするには「ソーラーシェアリング」しかなく、各方面に相談してみようと思っています。
馬来田発電所写真
2022年を迎えて、10年後を予測する
こうして1年を振り返ると、仕事の話ばっかりで、本当に仕事していたなあ・・と、改めて思います。新型コロナウィルスの感染拡大の中、2020年の3月から「テレワーク体制」に入り、2020年の暮れまでは近隣の散歩で得た情報など発信していたのですが、1年9ヶ月を越えた今、ZOOM漬けの日々となっています毎日のようにZOOM会議やZOOM商談や、ZOOMセミナーです。移動時間が無いので、会議から会議へワープできます。1日のスケジュールがびっしりと埋まり、文字通り息つく暇もありません。仕事の効率性は絶大にアップで、この2年で4、5年分の仕事をしたような感じです。
でも、そのぶん身体も神経も相当に疲れているのではと思います。誰もがおそらく似たり寄ったりなのではないでしょうか?画面の中だけのコミュニケーション、またはメールに頼るコミュニケーションは、どうしても不十分です。伝えたいことが伝わっていないということが当たり前で、トラブルもたくさん起こりました。人間関係がギスギスして、険悪な空気となったこともありました。逆にそれを解消するために、どんなコミュニケーション方法が大事なのか、どういうルールが必要なのかを真剣に考えるようにもなりました。毎日顔を合わせて「微調整」できていたら、生まれなかった思考法かもしれません。これも進化です。
対面営業を得意としていたGPPは、それを封じられたコロナ禍では、あまりユーザーが増えませんでした。今季は黒字達成が確実だったはずなのに、市場価格高騰の影響を差し引いいても目標達成ならずでした。もっとも、そのおかげで市場価格高騰の影響が小さくて済んだとも言えます。ユーザー数が多く売上が多いほど、逆ざや損失額は大きくなるからです。そして不幸中の幸いと言うべきか、GPPが新電力として進むべき姿が見えてきました。
一つは「取次店」の展開です。とくに「東電エリア外」でGPPの電気を求めている人たちがたくさんいらっしゃると言うことです。ZOOMセミナーは地域の垣根を取り除きました。東京の人も沖縄の人も、北海道の人も一緒に話せるのです。GPPは日本中で電気売らなければいけない、と言うことです。
「取次店」にはできるだけ利益が落とせるようにしました。100人のユーザーがあれば9万円、500人なら40万円、少なくとも一人に人が生きていける「ベーシックインカム」になるのではないかと考えました。いま仕事がない人は、GPPの電気売ってください!と言うわけです。各地の人に「取次店」になっていただきたいと思います。
もう一つはVPPです。バーチャルパワープラントと読みます。もともとは発電所を代替する省エネという意味です。市場価格の動きは、太陽光発電の電気がない早朝と夕方に高騰するパターンになってきています。そこで昼間の太陽光発電の電気を蓄電池に貯めて、朝夕に使う。詳細な技術の話は、後日に回しますが、実現すると夜の電気もほぼ再エネで賄えるようになります。
非FITで市場価格に左右されず、朝夕も安価な電気を供給する、そんな仕組みを日本中でGPPが提供するという時代がやってくるかもしれません。市場価格高騰していても、安価に再エネ100%の電気をお届けする新電力。こりゃ、10年後「一人勝ちだな。」
うーむ、やっぱり仕事の話で終わった2022年でした。
★なおGPPは今年から、エネルギー問題だけでなく、広く社会の課題を取り上げ、解決するにはどうしたら良いかを考えていきたいと思います。最初まずは貧困問題、反貧困ネットワークの瀬戸大作さんと考えます。
日時 1月25日(火)18時から
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