よんたまな日々

サッカーとゲームと本とおいしい食べ物

銀座百点

2005年02月12日 | 読書
先日、うちの奥さんと銀座の喫茶店で珈琲を飲んだ。レジで支払いをしている間に、ふと見ると、「銀座百点」が置いてあった。
「ああ、懐かしい。」と思わず手にとってしまった。

うちの実家は、何度も書いた通り、奈良の片田舎なのだが、なぜかうちには銀座百点のバックナンバーがずらりと揃っていた。
祖母は、とてもハイカラなばあちゃんで、朝ご飯はトーストと紅茶。趣味は俳句と旅行で、当時としては珍しくヨーロッパにも足を伸ばしていた。後から思うに、多分この祖母が定期購読を申し込んでいたのだろう。

祖母だけでなく、実は母もその銀座百点をよく読んでいた。幼い僕にもよく銀座百点を見せてくれ、滅多に行かない銀座の話をしたりした。「有楽町で会いましょう」とか「銀座の恋の物語」を口ずさみながら、家事をしている母のそばで、僕もまだ行ったことない大人の街、銀座への憧れを、遥か奈良から育んでいた。

それから30年以上の月日が流れ、僕は東京で結婚した。夫婦ともども街暮らしが好きな癖に人混みが嫌いという性分で、新宿や渋谷に遊びに行くと、二人ともすぐに人混みに疲れてしまう。
そんな僕達が足を向ける街は、自然と銀座になった。
何だか幼い頃の憧れの街が行きつけの街となっているのが、くすぐったいような不思議な心持ちがする。

その銀座百点に連載された短編小説を集めた本を買いました。
「銀座24の物語」 銀座百点編 文春文庫
です。
タイトル通り、24の銀座を舞台にした掌編を集めています。
僕は弁当も幕の内が好きで、アンソロジーも一粒で何度もおいしいので、結構好きです。アンソロジーの中には、ときどき、単純に一つのテーマにそって集めただけで、集めることによるプラスアルファがないものがあります。
これは、それぞれの作品が銀座という舞台を必要としている作品で、それぞれが銀座の異なる側面(たとえば、画廊の街、ファッションの街、ビジネスの街、歌舞伎座のある街、スナックのある街...etc)に光を当てているので、そういう面でも好感度が高いものとなっています。

今は新宿や渋谷や池袋が中心になってきて、銀座は老舗という感じになっていますが、こういう作品を読むと、銀座ならではの人々の寄せる思いというものがあることを再確認できました。

山田太一、赤川次郎、藤堂志津子、常盤新平、森村誠一、群ようこ、鷺沢萌と言った各氏の作品が印象的でした。もちろん、他の作品も、銀座という場所、風俗の一断面を描いていて、面白く読めました。

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