よんたまな日々

サッカーとゲームと本とおいしい食べ物

車に乗らない話(後編)

2021年06月20日 | 日々徒然
この記事で私がペーパードライバーになるまでを紹介しました。
今回はその続き。ペーパードライバーになって、どんな痛い目が待っていたのでしょう。

まずは大学の友人とのエピソード。三年生の夏休みに海水浴に誘われた。民宿に泊まって城崎の海岸で遊ぼうとのお誘い。大阪から日本海側に出るのは、基本的に車なので、念のために確かめたところ、運転のことは気にするなとの返事。安心して待ち合わせの時間に大学の近くの友人Aの下宿を訪ねた。
ところが時間通りに着いたのに、Aはドアを開けたまま、部屋で高イビキ。他の友人は一人もいない。しばらく待っていたが、全く起きる気配がないので、仕方がなく、勝手に部屋のテレビを付けて、誰か現れるまでテレビを見ていた。夕方になって、ようやく一緒に行く予定の友人のうちの一人Bが現れた。
「よんだ君、やっぱり時間通りに来ていたか。」とBが言うので、思わず座り直すと、
「実は民宿に泊まるというのは嘘で、夜間移動で公園野宿です。よんだ君はボンボンなので、野宿と言うと、お母ちゃんの許可が出ないかなと。」
いや、そんなボンボンやないけど、過保護なのは事実なので、母に正直に話すと本当に来れなかったかも。
「えーと、ペーパードライバーの立場からすると、夜の移動は相当怖いのですが。」
「今回はバイクで移動する人いるので、夏は、夜じゃないと、逆に辛いので。このメンバーでの夜間移動は初めてじゃないので大丈夫。」
という話をしていると、ようやくAも起き出して、
「ごめん、ごめん、夜間移動だから、日が暮れた頃、集合だったんだけど、よんだ君には、そう言う訳にも行かなくて。」
「いえいえ、勝手に上がって、勝手にテレビみておりました。」
などと話しているうちに、三人目のCも登場。日も暮れて薄暗くなったので、ゾロゾロと駐車場に移動。それぞれ愛機を出して来る。BとCはバイクだが、Aが出して来たのは、真っ赤なフェアレディZ。
「すげー、フェアレディZだ。」と言うと、
「ただの日産車です。」
「あ!てっきりフェアレディZかと思った。ごめん。」
後で確認のために調べたところ、フェアレディZは日産で合っていました。てっきり海外製のスポーツカーと思っていた。
ということで、夜のハイウェイを、日本海を目指してフェアレディZ一台と二台のバイクで、疾走しました。私は運転せずに助手席に座っているだけでしたが。楽しかった。
このシチュエーションを楽しみながら、やはり、自分はペーパードライバーでいいと思った。夜のハイウェイをこのスピードて疾走するのは楽しいが、自分の能力では絶対無理だと思った。
結局、この日の深夜に、城崎には到着し、海岸そばの砂浜にテントを張って寝た。翌朝、かなり日が高くなってから、海の家で朝ご飯を食べて、夕方まで、泳いだり、ビーチバレーしたり、酒飲んで寝たりしながら過ごし、夕方、同じく日が暮れてから、大阪に引き返した。帰路はフェアレディZの助手席で爆睡してしまった。

就職の際は、最後のバブル入社組で、IT関連での採用だったため、ペーパードライバーであることが問題になることはなかった。労災対策で、義務上車に乗る必要がある場合社内資格が必要で、逆にそれが仕事で車を使う局面で、お断りできる根拠にもなるため、ペーパードライバーにとって、過ごしやすい会社だった。
SE業務に配置転換があってからも、運転は求められなかった。地方で車がないと移動に困る客先でも、フィールドエンジニア、または販社営業が足を用意してくれた。物を運ぶ場合も、宅配業者、物流業者が面倒を見てくれた。会社には本当に感謝している。

二つ目のエピソードは、東京転勤になって寮で一人暮らししていた頃。
今までこのブログに何度か登場した、高校の同期で、長電話の君で、サッカーパーティーに場違いユニで現れたN君とのことである。

例えばこの記事。

当時のN君は、自慢のCA彼女に振られて、自宅の電話の留守電で葬送行進曲だけ流して電話にも出ず、高校の同期のうちで、相変わらずの迷走ぶりが話題になっていた。一応、私が一番の親友ということにされていたので、「何とかしてくれ。」という電話もあり、迷惑に感じていた。「君が誰に振られようと勝手だが、それで岩戸隠れして、みんなに迷惑かけるのは辞めてくれ。」と思っていた。
そんなある日のこと、N君から突然電話がかかって来て、何故か寮の住所を聞かれた。答えると「一泊旅行の準備をして、寮の前の道路に出てろ。」との指示。旅行鞄に荷物を詰めて、寮の門の前で座っていたら、でかい黒のBMWにクラクション鳴らされた。
中からサングラス姿で現れたN君に、
「相変わらず、ぶっ飛んでんなー。」
と声を掛けると、
「ほら、BMWだぜ。しかもカーナビが付いているので、これでどこにでも行ける。君の寮だって住所だけでたどり着けた。」
「さて、どこに行くんだい。」と乗り込むと、伊豆下田の温泉旅館を予約しているらしい。経緯はどうであれ助かるよと答えると、「高速の入り口で、運転交代でいい?」と聞いてくる。「ちょっと待て。僕はもう10年ハンドル握ってないペーパードライバーだぞ。」と返すと、「な〜に〜‼︎」と激しく驚く。
「くそ〜っ。これから3時間ずっと運転しっぱなしか。」と不満そう。
「そんな話していなかったっけ?」と言いながら、カーステレオがずっと流しているアニソンを止めようとすると、
「ちょっと待て。なぜ止める?」
「あ、そういう趣味だったの?ごめん、ごめん。もっとドライブ向けの音楽流せないかなと思って。」
「君の為に徹夜で作ったベストセレクションなのに、言い方酷くね?」
「ちょっと待て!誰がアニメヲタクやねん!」
えっと、その10年後くらいに私は立派な深夜アニメヲタク(じゃないファン)になるのですが、当時は立派な堅気でしたよ。しかも彼のセレクションはキャンディキャンディとかドラゴンボールとか。ほんまにどこで拾って来たんや。
というわけで、何がなんだかわからないまま、N君の温泉旅行に付き合う羽目になりましたが、聞いてみると案の定、CAの彼女と行くつもりで予定を入れていたのが、振られてしまい、私を連れて行こうとした次第。BMWも彼女とのデートに相応しい車として買ったとのこと。
いいお風呂と素晴らしい食事でしたが、夕飯後に二人で下田の海岸に散歩に行ったら、N君が突然告白を始め、
「やめろ!そういう趣味はないから!」と叫んで逃げ出すと、
「本当は彼女とそういう展開になるはずやったのに。」と、おいおい泣き始めます。「指輪まで準備したのに。」と見せるので、
「それは次の相手まで取っとけ。」と押し返すと、「再利用なんてできるか!」と泣き募ります。
ちょっと距離を置いて、落ち着くまで待って、旅館の部屋に連れ帰りました。
ああ、大変だった。

まあ、これをきっかけに留守電の葬送行進曲もやめたし、無事立ち直ってくれましたけどね。

さらに5年後の正月。私が今の奥さんと初詣に向かう途中に、突然携帯が鳴り、N君から無事婚約まで行ったと報告がありました。こちらもお付き合いしてる彼女がいると報告する前に「変わるから挨拶してくれ」と言って、誰かに携帯を渡す雰囲気が。「ちょっと、誰?」と聞いているので、「初めまして、よんだと申します。」と話しかけました。自己紹介して、
「変なやつですが、これからよろしくお願いします。」「こちらこそ、変なやつで今までご迷惑おかけしました。」
と、なかなかわかってらっしゃる回答で安心しました。N君との腐れ縁も本当にそれで最後になった模様。それから20年経つが、音沙汰なし。こちらが結婚したことも知らないのではないかと思う。

最後のエピソードはお見合いのSさんの話。以前の記事
にも出ております。
二回目のお付き合いの時に、Sさんのお父さんがよくデートの送り迎えをしてくれました。車の中では、どうしても、お父さんとの会話になります。
「君の実家は確か有名なお寺の近くとか?」
「ええ、法隆寺です。」
「戦後すぐに火事のあった?」
「ええ、よくご存知ですね。」
「痴情のもつれによる放火とか?」
「それは金閣寺ですよ。しかも、痴情のもつれは、三島由紀夫の創作じゃないですか。法隆寺は金堂壁画の模写に使った電気ストーブの消し忘れですよ。」
などと、漫才みたいな会話をいっぱいしました。Sさんのお父さんは大手家電メーカーのエンジニアで、とても話が合いました。「もしかしたら、息子さんが欲しかったのでは」と想像するくらい。

その後、Sさんとの縁談は結局まとまらず、お会いすることなくなりました。
うちの奥さんと結婚してから始まった趣味の深夜アニメ。
「化物語」テレビ版の最終話。戦場ヶ原ひたぎさんと阿良々木君との印象的なデートシーンの前に、ひたぎさんのお父さんが運転する車で、デートスポットへ移動するシーンがずっと続きます。お父さんと阿良々木君の気まずい2人きりの場面から、お父さんの素晴らしい名セリフに結びつくのですが、ペーパードライバーの私は、思わず涙腺崩壊しました。
「いや、そこ違う、笑うとこ。」と思いながら、涙止まりませんでした。


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5 コメント

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Unknown (toki-tsubone)
2021-06-20 06:29:39
あー面白かった
よんたまさんの文章は長いけど一気に読めてしまいます
オットとワタシ(同い年です)の青春時代(ユーミンとマンモスがいた頃)は車があってこそつきあい、車前提のデートでした
その後遺症でオットはいまだに車好きでスポーツタイプのエンジン音をご近所に響かせて帰ってくるのでもうちょっと年なりのに乗ってくれよと思う日々
今時の若者はホント車に興味がないみたいで よんたまさんは時代の先取りをなさったってことなのでは?
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Unknown (h_tutiya)
2021-06-20 06:52:25
@toki-tsubone お局さま、いらっしゃいませ。長文最後までお読みいただきありがとうございます。備忘録に書いた課題について、自分なりの結論をきちんと文章にして準備していたのですが、結論に向かってエピソードを並べ、読み返してみると、結論を明示しないほうが良い文章になると思い、あえて省きました。お局さまの感想を読んで、キチンと伝わったと、安心しました。時代の気分も描写できたみたいで、ちょっと鼻高々であります。ご感想ありがとうございます。
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Unknown (h_tutiya)
2021-06-20 07:16:03
@toki-tsubone N君のエピソードは、格好いいBMWで男二人、アニソン鳴らしながら走っているのが面白い。残りの二つのエピソードも車種描写、音楽描写、もっと入れればよかったなと思うのが、心残り。そのうち、ドライブミュージックで記事一本かきたいなと。以上独り言でした。
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Unknown (kotobukibiyori)
2021-06-20 10:31:53
こんにちは!プライベートの話を、こんなに面白く語る才能に嫉妬します。(笑)
都会暮らししてると車運転出来なくても特に目立たず浮かずなんですが、田舎に帰ると車運転出来ない=一人前でないと解釈されて辛いです。
新型コロナ流行して唯一助かったのは、田舎に帰らず済んでる事だったり。

それでは、今後の記事にも期待しております!
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Unknown (h_tutiya)
2021-06-21 04:57:45
@kotobukibiyori ことぶきびよりさん、いらっしゃいませ。後編もお読みいただいてありがとうございます。お褒め(?)に預かり、恐悦至極。
都会暮らししていると忘れてしまうので、帰省できないコロナ禍の日々は本当にちょっと快適だったりします。ちょっと距離を置けるのでこういう文章書けたのかもしれませんね。これからも駄文書きにお付き合いよろしくお願いします。
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