よんたまな日々

サッカーとゲームと本とおいしい食べ物

菅 浩江 「雨の檻」

2004年12月07日 | 読書
初読は、もう10年近く前だと思う。「メルサスの少年」で強烈な印象を抱いていたこの作家の、僕が出あった二つ目の作品。
最初は、捻ったアイデアと鮮烈なイメージに舌を巻いた。ただ、本書最長編の「お夏清十郎」が、SFのイメージと、近世の下町のイメージがうまく合わなくて(作品としてそうなのか、自分の問題なのか、この時はわからなかった。)、著者が一番力を入れたように感じながら、理解が及ばないことを残念に思った。
その後、2回目に読み直したときに、ちょっと1回目よりも違和感が大きくなったような気がして、首を傾げながら、しばらく置いておくことにした。
最近になって、うちの奥さんが「末枯れの花守り」を買ってきて、この人のことを思い出した。そして、偶然、本棚の整理をしていて、この本をふと拾い出したので、通勤の合間に読み直した。
読み直してみて、あの頃、僕に強力なイメージを喚起したSFは、既に手垢にまみれてしまったのだなと思った。ただし、「お夏 清十郎」は後に「末枯れの花守り」へとつながる作品だったのかもしれないが。和風の艶やかなSF。
逆にそれ以外の短編は、確かにプロットとして優れているかもしれないが、伏線の引き方から先が見えてしまう。長期間置いたのに、そうなってしまうのは、当時としては、斬新なプロットだったはずなのに、その後、山のように書かれた同工異曲が、今のこの本の面白さを消してしまったのかもしれない。古きよき90年代SF。

今度は「メルサスの少年」を読みなおしてみようと思っている。

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