夏になるとなぜかホラーが読みたくなる。そして、「AΩ」でなかなかスプラッタなSFを楽しませてくれた小林泰三の未読の作品がいっぱいある。「なんて、幸せ!」と本屋に買いに行って読み始めた最初の作品がこれです。
うちには、奥さんが買ってきた面白そうな本が本当に山と積まれているので、普段は自分で本を買わず、書斎の山を漁って、今日読む本を選んで行くのですが、久しぶりに自分で買いました。(うちの奥さんはホラー嫌いだったり、司馬遼太郎嫌いだったりするので、たまにこういう楽しみがある。)
表題作「玩具修理者」自体もなかなか面白かったですが、裏表紙の粗筋から大体予想できる展開でした。もちろん、スプラッタな描写は健在で、見事に生理的嫌悪感をイタ気持ちよく刺激してくれましたが。
しかし、それ以上に面白かったのが、同時収録されている「酔歩する男」。これは、全然ホラーじゃなくて、正真正銘のSFでしたが。
何で時間軸だけ不可逆なんだろうというのは、理工系大学で学んだ人には結構共通の疑問なんじゃないかなと思っていました。X軸、Y軸、Z軸はプラス方向にもマイナス方向にも動けるのに、どうしてT軸方向だけ一方通行なんでしょう。
タイムマシン物つーかタイムパラドックス物は並行宇宙などという概念をよく持ち出しますが、並行宇宙があるのなら、自分が生きているのはどの並行宇宙なんだろうとか、時間を移動する場合に、その移動した先の空気をどうやってどけるのだろうとか、自転と公転運動している地球の上で、どうして常に同じ街の中で移動できるんだろうとか、そういうSFって、よっぽど考えて作らないと矛盾だらけになってしまいますよね。
いや、最近は「サマータイムマシンブルース」とか「時をかける少女」とか、タイムパラドックスシチュエーションを開き直って楽しんでいる作品まで出てくる中で、さすが小林泰三と唸らされる作品が、このジャンルで出ているとは思いませんでした。
でも、これホラーじゃなくて、SFでしょうと思いながら、最後まで読んで、読み終えてしばらくしてから、何となく自分の足元が不確かになる気持ち悪さがあって、そういう意味ではホラーなのかなと。
これの気持ち悪さは、あなたの隣人が、必ずしもあなたと同じ時間を生きているとは限らないという、コミュニケーションの不可能性を示唆されたところから生まれてきています。なんか、 ネタとしてはハードSFなのに、それをこういう気持ち悪い読後感を生むように再構築するのが、小林泰三らしいです。
ちなみに、同時に買った「密室・殺人」は、小林泰三らしくないまともなミステリーなのですが、ミステリーのネタとしてはいまいちで、気持ち悪い読後感も、あっと思うひねりもなく、僕には全然魅力が通じませんでした。解説まで読んで、解説の指摘で、そう読むと結構気持ち悪いなというところがありましたが、作品単独では、そこまで深読みできなかった僕の頭が悪いのかしらんってとこで。
うちには、奥さんが買ってきた面白そうな本が本当に山と積まれているので、普段は自分で本を買わず、書斎の山を漁って、今日読む本を選んで行くのですが、久しぶりに自分で買いました。(うちの奥さんはホラー嫌いだったり、司馬遼太郎嫌いだったりするので、たまにこういう楽しみがある。)
表題作「玩具修理者」自体もなかなか面白かったですが、裏表紙の粗筋から大体予想できる展開でした。もちろん、スプラッタな描写は健在で、見事に生理的嫌悪感をイタ気持ちよく刺激してくれましたが。
しかし、それ以上に面白かったのが、同時収録されている「酔歩する男」。これは、全然ホラーじゃなくて、正真正銘のSFでしたが。
何で時間軸だけ不可逆なんだろうというのは、理工系大学で学んだ人には結構共通の疑問なんじゃないかなと思っていました。X軸、Y軸、Z軸はプラス方向にもマイナス方向にも動けるのに、どうしてT軸方向だけ一方通行なんでしょう。
タイムマシン物つーかタイムパラドックス物は並行宇宙などという概念をよく持ち出しますが、並行宇宙があるのなら、自分が生きているのはどの並行宇宙なんだろうとか、時間を移動する場合に、その移動した先の空気をどうやってどけるのだろうとか、自転と公転運動している地球の上で、どうして常に同じ街の中で移動できるんだろうとか、そういうSFって、よっぽど考えて作らないと矛盾だらけになってしまいますよね。
いや、最近は「サマータイムマシンブルース」とか「時をかける少女」とか、タイムパラドックスシチュエーションを開き直って楽しんでいる作品まで出てくる中で、さすが小林泰三と唸らされる作品が、このジャンルで出ているとは思いませんでした。
でも、これホラーじゃなくて、SFでしょうと思いながら、最後まで読んで、読み終えてしばらくしてから、何となく自分の足元が不確かになる気持ち悪さがあって、そういう意味ではホラーなのかなと。
これの気持ち悪さは、あなたの隣人が、必ずしもあなたと同じ時間を生きているとは限らないという、コミュニケーションの不可能性を示唆されたところから生まれてきています。なんか、 ネタとしてはハードSFなのに、それをこういう気持ち悪い読後感を生むように再構築するのが、小林泰三らしいです。
ちなみに、同時に買った「密室・殺人」は、小林泰三らしくないまともなミステリーなのですが、ミステリーのネタとしてはいまいちで、気持ち悪い読後感も、あっと思うひねりもなく、僕には全然魅力が通じませんでした。解説まで読んで、解説の指摘で、そう読むと結構気持ち悪いなというところがありましたが、作品単独では、そこまで深読みできなかった僕の頭が悪いのかしらんってとこで。
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