簡単で分かりやすい派遣の書類作成と運用方法

派遣事業における個別契約書などの関係書類の作成方法や期間制限の延長手続きなどの運営方法について分かりやすくお伝えします

労使協定方式 労使協定の作成方法⑨ 途中で待遇決定方式を変えない旨

2021年09月24日 | 労使協定方式




労使協定に定めなければいけない事項については、以下の通りとなります。

















前回は、【労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する

場合におけるその理由】について説明いたしました。













今回は、【特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に

係る派遣労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者である

か否かを変更しない旨】について説明したいと思います。













【特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に係る派遣

 労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者であるか否か

 を変更しない旨】

「労働者派遣事業関係業務取扱」には、「派遣労働者の待遇決定方式(「派遣先均

 等・均衡方式」又は「労使協定方式」のことをいいます)が、派遣先の変更を理

 由として、一の労働契約期間中に変更されることは、所得の不安定化を防ぎ、中

 長期的なキャリア形成を可能とする労使協定制度の趣旨に反する恐れがあること

 から、特段の事情がない限り、認められないことを労使協定に記載すること」と

 規定されています。











要するに、労使協定対象派遣労働者(労使協定に基づいて賃金額が支払われる派遣

労働者)として派遣先で働いていたのに、その派遣労働者の雇用契約期間の途中で

派遣先が変わることによって、派遣元から「君、明日から労使協定に基づいた賃金

額ではなく、派遣先均等・均衡方式で賃金額を計算するからね」というような取り

扱いはしないことを労使協定の中に明記しなさい!ということです。











ただし、以下の「特段の事情」がある場合には、一の労働契約の契約期間中でも待

遇決定方式を変更することができます。

 ① 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲が職種によって定められている場合

   であって、派遣労働者の職種の転換によって待遇決定方式が変更される場合

   で、かつ当該派遣労働者から合意を得た場合

    → 例えば、プログラマーは労使協定の対象となっているが、システムエ

      ンジニアは労使協定の対象となっていない場合で、当初、プログラマ

      ーの職種で派遣されていた派遣労働者が、次の派遣先ではシステムエ

      ンジニアの職種に派遣されることになり、その派遣労働者に対して労

      使協定の対象から外れることについて説明した上で、その派遣労働者

      から同意を得た場合等を意味します。

 ・待遇決定方式を変更しなければ派遣労働者が希望する就業機会を提供できない

  場合であって、当該派遣労働者から合意を得た場合

    → 例えば、プログラマーは労使協定の対象となっているが、システムエ

      ンジニアは労使協定の対象となっていない場合で、当初、プログラマ

      ーとして派遣就業していた派遣労働者が、「次の派遣先は、是非、

      ●●●●(株)で派遣就業したい。そこはプログラマーではなく、シス

      テムエンジニアでの派遣労働者しか求めていないが、自分もシステ

      ムエンジニアの経験があるので、システムエンジニアとして派遣就

      業したい」という希望があった場合に、その派遣労働者に対して労

      使協定の対象から外れることについて説明した上で、その派遣労働

      者から同意を得た場合等を意味します。













【記載例】

(対象となる派遣労働者の範囲)

 第○条 本協定は、派遣先で以下の職種の業務に従事する従業員(以下「対象従

     業員」という)に適用する

      ・プログラマー

      ・システムエンジニア

  2 対象従業員については、派遣先が変更される頻度が高いことから、中長期

    的なキャリア形成を行い所得の不安定化を防ぐため、本労使協定の対象と

    する。

  3 対象従業員について、一の労働契約の契約期間中に、特段の事情がない限

    り、本協定の適用を除外しないものとする。











今回で「労使協定に定める事項」の説明はすべて終了となります。

















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(資料)

 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」

  https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf

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労使協定方式 労使協定の作成方法⑧ 職種を限定する理由

2021年09月22日 | 労使協定方式



労使協定に定めなければいけない事項については、以下の通りとなります。















前回は、【労使協定の有効期間】について説明いたしました。











今回は、【労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する

場合におけるその理由】について説明したいと思います。













【労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合にお

 けるその理由】

以前のブログで、労使協定の対象となる派遣労働者については客観的な基準(「職

種ごと」や「有期雇用派遣労働者又は無期雇用派遣労働者ごと」)があれば限定す

ることができることについて説明しました。

(「派遣労働者ごとに労使協定を適用する」又は「派遣先ごとに労使協定を適用す

 る」と労使協定に記載することは、故意に派遣労働者の賃金を低下させる目的と

 して行われる恐れがあるため、客観的な基準には含まれません。もしこのような

 内容を労使協定に記載した場合は、労働局から法違反として指摘を受ける可能性

 があります。












もし限定した場合は、労使協定の中に「限定した理由」の記載が必要となります。











【記載例】

(対象となる派遣労働者の範囲)

 第○条 本協定は、派遣先で以下の職種の業務に従事する従業員(以下「対象従

     業員」という)に適用する

      ・プログラマー

      ・システムエンジニア

  2 対象従業員については、派遣先が変更される頻度が高いことから、中長期

    的なキャリア形成を行い所得の不安定化を防ぐ等のため、本労使協定の対

    象とする。















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労使協定方式 労使協定の作成方法⑦ 労使協定の有効期間

2021年09月21日 | 労使協定方式




労使協定に定めなければいけない事項については、以下の通りとなります。















前回は、【段階的かつ体系的な教育訓練】について説明いたしました。







今回は、【労使協定の有効期間】について説明したいと思います。







【労使協定の有効期間】

労使協定の有効期間を記載してください。

具体的には、労使協定の始期と終期を記載します。







有効期間の長さについては特に規定はないので、何年でもいいのですが、労使協定

の有効期間中に職業安定局長通知の一般賃金の額が変更された場合には、有効期間

中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の

額であるか否かを確認する必要があります。

(職業安定局長通知の一般賃金の額については毎年、6月~7月の間に発表される

 ことになっています)







もし、確認した結果、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額でない場

合には、労使協定に定める賃金の決定方法を変更するために労使協定を締結しなお

す必要があります。







また、確認した結果、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であった場

合でも、派遣元事業主は、同等以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に

添付しなければいけません。








従って、労使協定の有効期間は毎年「4月1日~翌年3月31日」とすることをお薦

めします。

(いくら労使協定の有効期間を3年とか5年と定めても、どうせ、毎年、見直さなけ

 ばいけないため)









【記載例】

(労使協定の有効期間)

 第○条 本協定の有効期間は、令和3年4月1日から令和4年3月31日までの

     1年間とする。













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労使協定方式 労使協定の作成方法④  公正な評価により賃金を決定する旨

2021年09月15日 | 労使協定方式


労使協定に定めなければいけない事項については、以下の通りとなります。













前回までは、【派遣労働者の賃金の決定に関する事項】について説明いたしました。







今回は、【公正な評価に基づき賃金額を決定する旨】について説明したいと思いま

す。









【公正な評価に基づき賃金額を決定する旨】

派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に

関する事項を公正に評価され、賃金の改善に反映されるよう、適切な評価方法を定

めることが必要です。









評価の具体的な方法としては様々なものが考えられますが、例えば、

 ・キャリア(スキル)マップを整備し、一定期間ごとに能力評価、派遣就業の

  状況の確認等により、派遣労働者の就業の実態に当てはめて行う

 ・派遣労働者と面談して成果目標を設定し、一定期間後に達成状況について改

  めて面談を行って評価を決める

などの方法が挙げられます。











【記載例 ①】

(賃金の決定に当たっての評価)

 第○条 賃金の決定については、半期ごとに派遣労働者の職務の内容、職務の成果

     、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に基づいて勤務評価を行い、そ

     の結果、派遣労働者の能力の向上が認められ、より高度な業務を行うこと

     ができると認めた場合には、より高度な業務に係る派遣就業の機会を提供

     するよう努める。














【記載例 ②】

(賃金の決定に当たっての評価)

 第○条   賃金の決定については、半期ごとに派遣労働者の職務の内容、職務

     の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に基づいて勤務評価

     を行い、その結果、派遣労働者の能力の向上が認められ、より高度な

     業務を行うことができると認めた場合には、より高度な業務に係る派

     遣就業の機会を提供するよう努める。

      また、上記の勤務評価の結果、より高度な業務に係る派遣就業の機

     会を提供するまでには至らないが、派遣労働者の職務に係る経験の蓄

     積、能力の向上が認められた場合には、基本給・手当額を下記の各号

     棒に増額する。

















【記載例 ③】

(賃金の決定に当たっての評価)

 第○条  賃金の決定については、半期ごとに派遣労働者の職務の内容、職務

     の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に基づいて勤務評価

     を行い、その結果、派遣労働者の能力の向上が認められ、より高度な

     業務を行うことができると認めた場合には、より高度な業務に係る派

     遣就業の機会を提供するよう努める。

      また、上記の勤務評価の結果、より高度な業務に係る派遣就業の機

     会を提供するまでには至らないが、派遣労働者の職務に係る経験の蓄

     積、能力の向上が認められた場合には、基本給額の1~3%の範囲で

     追加の能力手当を支給する。






















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(資料)

 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」

  https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf

   厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」

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労使協定方式 労使協定の作成方法③-4 退職手当

2021年09月15日 | 労使協定方式
派遣先均等・均衡方式では、派遣先の正社員に支払われている手当の種類や額に

応じて派遣労働者にもその手当や額を支給することになりますが、労使協定方式

では有無を言わせず

 ① 基本給+賞与+手当(通勤手当を除く)

 ② 通勤手当

 ③ 退職手当

を支給しなければいけません。





前回は「② 通勤手当」について説明しました。





今回は最後の「③ 退職手当」ついて説明したいと思います。





退職手当の支給方法は3通りあります。

 (1) 退職金制度で支給する場合

 (2) 前払い退職手当として毎月の賃金額に含めて支給する場合

 (3) 中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金、確定拠出年金等に

     一般賃金の6%以上の掛金を会社が毎月支払う場合

     (以下「中退共に加入する場合」とします)

(1)~(3)のいずれかの方法を必ず取らなければいけません。





(2)の「前払い退職手当として毎月の賃金額に含めて支給する場合」につ

いては、前々回の「基本給+賞与+手当(通勤手当を除く)」のところで既に

説明しましたので、今回は(1)の「退職金制度で支給する場合」と(3)の

「中退共に加入する場合」について説明したいと思います。





ちなみに、前々回も説明しましたが、「基本給+賞与+手当(通勤手当を除く)」

及び「通勤手当」と合計して比較できるのは(2)の「前払い退職手当として毎月

の賃金額に含めて支給する場合」だけです。

(1)の「退職金制度で支給する場合」と(3)の「中退共に加入する場合」につ

いては、それぞれ個々で職業安定局長通知で定める基準以上になっているかどうかを

確認する必要があります。









(1)「退職金制度で支給する場合」

  派遣労働者に適用する退職金制度を作成して、その退職金制度に基づいて

  退職手当を支払う方法です。

  ポイントとしましては、

   ・ 職業安定局長通知の別表4に示している退職金制度の統計以上の退

     職金制度を作成しなければいけない

   ・ もともと自社に退職金制度がある場合であっても、上記の統計以上

     の退職金制度でなければ、あらためて作成しなければいけない

     (もちろん、今ある退職金制度を改善していただいても結構です)

   ・ もともと自社に退職金制度がない場合は、上記の退職金制度を作成

     し、すくなくとも派遣労働者(正社員である派遣労働者、パートタ

     イマーである派遣労働者、有期雇用労働者である派遣労働者のすべ

     ての派遣労働者が対象)には、その退職金制度を適用しなければな

     らない

  などが挙げられます。





では、退職金制度の作成方法について説明します。





まず、職業安定局長通知の別表4をご覧ください。










別表4には、以下の項目が記載されています。

 ① 退職手当制度がある企業の割合(A~Eは統計の種類を指しています)

   (別表4にはA~Eの記載はないですが、今回は説明の便宜上、A~

    Eと記載しています)

    A 平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)

    B 【退職一時金制度】令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    C 【退職年金制度)令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    D 平成28年民間企業退職給付調査(人事院)

    E 令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

 ② 退職手当の受給に必要な所要年数

    A 平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)

    B 令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    E 令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

 ③ 退職手当の支給月数

    A 平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)

    B 令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    E 令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

    F 2018年9月度退職金・年金に関する実態調査結果

      (日本経済団体連合会)

 ④ 退職手当の支給金額

    A 平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)

    B 令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    E 令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

    F 2018年9月度退職金・年金に関する実態調査結果

      (日本経済団体連合会)

    D 平成28年民間企業退職給付調査(人事院)

これらの資料を使って退職金制度を作成していきます。





まずは、③の「退職手当の支給月数」又は④の「退職手当の支給金額」に示されて

いる統計のうち、どの統計を使うかを労使で話し合って決めます。





ちなみに、③の「退職手当の支給月数」と④の「退職手当の支給金額」の違いは、

退職金制度を「給与の何か月分で支払う」と規定するか、「退職金額をそのまま

記載する」と規定するかの違いだけなので、どちらを選ばれても結構です。





今回は、③の「退職手当の支給月数」のうちのEの「令和2年中小企業の賃金

・退職金事情(東京都)」の統計を使うということで説明します。





Eの「令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」を見てみますと、

 ・高校卒(自己都合)+高校卒(会社都合)

 ・高専、短大卒(自己都合)+高専、短大卒(会社都合)

 ・大学卒(自己都合)+大学卒(会社都合)

のそれぞれの退職金について記載されています。













こちらも、そのまま使用していただいても結構ですし、いちいち高卒や大卒で

支給月数を分けるのも後々退職金の計算の際にややこしくなるので、例えば

「高校卒の統計を一律に適用する(派遣労働者の学歴に関係なく適用すると

いう意味)」として、高校卒の統計のみを使用しても結構です。







今回は「高校卒(自己都合)+大学卒(会社都合)」の数値を使うことにし

ます。







次に行うのが、「いつから退職金を支払うのか?」ということを決めます。

これは「② 退職手当の受給に必要な所要年数」のデータから選択します。

②の「退職手当の受給に必要な所要年数」の中のA,B.Eの統計のうち

1つを選択します。

    A 平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)

    B 令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    E 令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)







今回は、Eの「令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都」のデータ

を使用することにします。

(A、B、Eのいずれの統計を選択していただいても結構です)













Eの「令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」のデータでは、

自己都合、会社都合とも勤続年数が3年から退職手当を支給している会社の

割合が一番高いので、支給年数は「勤続年数3年以上」とします。







最後に、「在職何年でいくらの退職金を支払うのか」ということを決めます。

これも③の「退職手当の支給月数」のうちのEの「令和2年中小企業の賃金

・退職金事情(東京都)」の統計を使って決めていきます。











先程、退職金の支給月数については「高校卒(自己都合)+高校卒(会社都合)」

の支給月数を派遣労働者の学歴に関係なく一律に適用することに決めましたので、

「高校卒(自己都合)+高校卒(会社都合)」の支給月数を使うのですが、そのま

ま当該支給月数を使用していただいても結構ですし、①の「退職手当制度がある企

業の割合」を上記の支給月数に乗じて算出した支給月数を使用しても結構です。







どういうことかというと、職業安定局長通知の数値だと、高校卒の自己都合及び

会社都合の場合の支給月数は、以下の通りとなります。

(先ほど、退職金の支給開始年数は勤続年数が3年以上と決めたので、今回の記載

 も勤続年数3年以上のもののみ記載していきます)。

            高校卒(自己都合)   高校卒(会社都合)

 勤続年数  3年     0.9ヶ月分      1.3ヶ月分

 勤続年数  5年     1.7ヶ月分      2.2ヶ月分

 勤続年数 10年     3.9ヶ月分      4.9ヶ月分

 勤続年数 15年     6.5ヶ月分      8.0ヶ月分

 勤続年数 20年     9.6ヶ月分     11.5ヶ月分

 勤続年数 25年    12.9ヶ月分     14.9ヶ月分

 勤続年数 30年    15.8ヶ月分     18.1ヶ月分

 勤続年数 35年    18.6ヶ月分     20.8ヶ月分

 勤続年数 37年    19.5ヶ月分     21.8ヶ月分

 勤続年数 定年まで               26.2ヶ月分







上記の数値に①の「退職手当制度がある企業の割合」の

    A 平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)

    B 【退職一時金制度】令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    C 【退職年金制度)令和元年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)

    D 平成28年民間企業退職給付調査(人事院)

    E 令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)

のいずれかの割合を乗じて算出した月数を支給月数としていただいても結

構です。







今回は、Eの「令和2年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」の退

職手当制度がある企業の割合「65.9%」を乗じて算出した支給月数は

以下の通りとなります。

(上記の月数に65.9%を乗じて、小数点1位未満を切り上げ)

            大学卒(自己都合)   大学卒(会社都合)

 勤続年数  3年     0.6ヶ月分      0.9ヶ月分

 勤続年数  5年     1.2ヶ月分      1.5ヶ月分

 勤続年数 10年     2.6ヶ月分      3.3ヶ月分

 勤続年数 15年     4.3ヶ月分      5.3ヶ月分

 勤続年数 20年     6.4ヶ月分      7.6ヶ月分

 勤続年数 25年     8.5ヶ月分      9.9ヶ月分

 勤続年数 30年    10.5ヶ月分     12.0ヶ月分

 勤続年数 35年    12.3ヶ月分     13.7ヶ月分

 勤続年数 37年    12.9ヶ月分     14.4ヶ月分







上記以上の退職金制度を作成し、それを派遣労働者に適用していただけ

れば結構です。

上記の数値をそのまま使っていただいても結構ですし、下記のように

作り変えていただいても結構です。









以上が「退職金制度で支給する場合」の退職金制度の作成方法となります。











(2)の「前払い退職手当として毎月の賃金額に含めて支給する場合」については、

冒頭で申し上げた通り、前々回のブログで説明していますので、今回は説明を割愛

させていただきます。







(3) 中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金、確定拠出年金等に一般賃金

    の6%以上の掛金を会社が毎月支払う場合(「中退共に加入する場合」)

  これは、会社が「中小企業退職金共済制度」、「確定給付企業年金」、「確定

  拠出年金」等に加入して各派遣労働者の掛金として一般賃金の6%以上の掛金

  を会社が支払っていればよいということです。









もし、掛け金が「一般賃金の6%」より少なければ、掛け金を増やしていただく

か、差額を「前払い退職手当」として毎月の賃金額に含めて支給する方法でも構

いません。







「③ 退職手当」の説明については以上となります。







今回で、労使協定の記載事項の1つである「派遣労働者の賃金の決定に関する事項」

の説明については終了となります。









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(資料)

 厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」

 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf

 厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」

 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」

 https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf

 厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」

  https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf

   厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」

    https://www.mhlw.go.jp/content/000817350.pdf