令和3年1月1日に派遣法の改正がありました。
主な改正内容は以下のとおりです。
① 派遣労働者として雇用しようとする際に説明する事項の追加
(令和3年1月1日)
② 日雇派遣における労働者派遣契約の解除等の措置(令和3年1月1日)
③ 労働者派遣契約の電磁的記録による作成(令和3年1月1日)
(出典:厚生労働省「キャリアアップ措置や雇用安定措置等の派遣元の責務が強化されます」)
今回は、上記のリーフレットには掲載されていませんが、
④ 日雇派遣における要件確認の厳格化(令和3年1月1日)
について解説させていただきます。
日雇派遣については下記のブログをご参照ください。
日雇派遣の原則禁止 – 東谷社会保険労務士事務所(派遣部門)
https://haken-higashitani.com/2019/01/02/hiyatoihakennogensokukinshi/
上記のブログでも説明しているとおり、日雇派遣は原則禁止されているのですが、
下記の(1)~(5)の場合は日雇派遣を行うことができます。
(1) 日雇派遣の禁止の例外業務(18業務)に派遣する場合
① 情報処理システム開発関係(派遣法施行令第4条第1項第1号)
② 機械設計関係(派遣法施行令第4条第1項第2号)
③ 機械操作関係(派遣法施行令第4条第1項第3号)
④ 通訳、翻訳、速記官系(派遣法施行令第4条第1項第4号)
⑤ 秘書関係(派遣法施行令第4条第1項第5号)
⑥ ファイリング関係(派遣法施行令第4条第1項第6号)
⑦ 調査関係(派遣法施行令第4条第1項第7号)
⑧ 財務関係(派遣法施行令第4条第1項第8号)
⑨ 貿易関係(派遣法施行令第4条第1項第9号)
⑩ デモンストレーション関係(派遣法施行令第4条第1項第10号)
⑪ 添乗関係(派遣法施行令第4条第1項第11号)
⑫ 受付・案内関係(派遣法施行令第4条第1項第12号)
⑬ 研究開発関係(派遣法施行令第4条第1項第13号)
⑭ 事業の実施体制の企画、立案関係
(派遣法施行令第4条第1項第14号)
⑮ 書籍等の制作・編集関係(派遣法施行令第4条第1項第15号)
⑯ 広告デザイン関係(派遣法施行令第4条第1項第16号)
⑰ OAインストラクション関係(派遣法施行令第4条第1項第17号)
⑱ セールスエンジニアの営業、金融商品の営業関係
(派遣法施行令第4条第1項第18号)
※ 各業務の詳細は厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱
要領(令和3年4月)」p222~p232を参照
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_h24/dl/all.pdf
(2) その派遣労働者が60歳以上の場合
(3) その派遣労働者が昼間学生の場合
(4) その派遣労働者の主たる収入額が500万円以上の場合
(5) その派遣労働者が扶養されている世帯全体の収入合計が500万円以
上の場合(ただし、その派遣労働者の収入が当該世帯全体の収入合計
の50%未満の場合に限る)
「(1) 日雇派遣の禁止の例外業務(18業務)に派遣する場合」については、
各業務ごとに詳細な基準が定められておりますので、それに該当しない場合は、日
雇派遣をすることはできません。
「(2) その派遣労働者が60歳以上の場合」については、その派遣労働者が60
歳以上であれば、日雇派遣をすることが認められています。
「(3) その派遣労働者が昼間学生の場合」については、次の①~⑤の学生は含
まれません。
① 夜間大学の学生
② 夜間高校の学生
③ 通信制の課程に在学する学生
④ 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に既に、卒業後に就職する予
定の会社にアルバイト等として雇用されて働いている学生
⑤ 休学中の学生
「(4) その派遣労働者の主たる収入額が500万円以上の場合」については、例
えば、その派遣労働者が保有しているマンションの家賃収入や株の売買収入など、
複数の収入源がある場合は、その中で一番収入額が高い収入が500万円以上
あるかどうかで判断します。その派遣労働者のすべての収入が500万円以上かど
うかではないのでご注意ください。
「(5) その派遣労働者が扶養されている世帯全体の収入合計が500万円以上の
場合(ただし、その派遣労働者の収入が当該世帯全体の収入合計の50%未満の場
合に限る)」については、文字通り
① 世帯収入の合計(その世帯のすべての者の収入の合計)が500万円以上で
あり
かつ
② その派遣労働者の収入が世帯収入の合計額の50%未満
である場合は、日雇派遣をすることができます。
また、日雇派遣の禁止の例外の要件に該当するかどうかの確認方法については、
(1) 日雇派遣の禁止の例外業務(18業務)に派遣する場合
⇒ 18業務のいずれかに該当しているかどうかを業務内容で適正に判
断していただくことになります。
仮に該当しない場合は当然、派遣法に抵触することになるのでお気
をつけください。
(2) その派遣労働者が60歳以上の場合
⇒ 年齢が確認できる公的書類(住民票、健康保険証、運転免許証等)に
より確認していただかなければいけません。
(3) その派遣労働者が昼間学生の場合
⇒ 学生証等で確認
(4) その派遣労働者の主たる収入額が500万円以上の場合
⇒ 原則、所得証明書や源泉徴収票等で確認
(5) その派遣労働者が扶養されている世帯全体の収入合計が500万円以上
の場合(ただし、その派遣労働者の収入が当該世帯全体の収入合計の
50%未満の場合に限る)
⇒ 原則、その世帯全員の所得証明書や源泉徴収票等で確認
となっています。
令和3年1月1日
以前の労働者派遣事業関係業務取扱要領には、
「合理的な理由により上記の書類が用意できない場合はやむを得ない措置として
日雇労働者本人からの申告(誓約書の提出)によることも差し支えない」
と記載されていましたが、
令和3年1月1日
以降の労働者派遣事業関係業務取扱要領には、
「合理的な理由により上記の書類が用意できない場合はやむを得ない措置として
日雇労働者本人からの申告(誓約書の提出)によることも差し支えない」
「要件の確認時に、本人に公的書類等の提出・提示を求めず、合理的な理由がな
いにも関わらず、誓約書の提出で代替するように誘導することは不適切である
こと」
という記載が追加されました。
日雇派遣を行う場合は、是非、公的書類等で確認いただくようご注意ください!
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本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需
給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務
を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方で
も簡単に派遣関係書類が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただい
ています。
派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われ
る方は是非、ご一読ください!
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(資料)
厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf