労使協定に定めなければいけない事項については、以下の通りとなります。
前回は、【労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する
場合におけるその理由】について説明いたしました。
今回は、【特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に
係る派遣労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者である
か否かを変更しない旨】について説明したいと思います。
【特段の事情がない限り、一の労働契約の契約期間中に、当該労働契約に係る派遣
労働者について、派遣先の変更を理由として、協定対象派遣労働者であるか否か
を変更しない旨】
「労働者派遣事業関係業務取扱」には、「派遣労働者の待遇決定方式(「派遣先均
等・均衡方式」又は「労使協定方式」のことをいいます)が、派遣先の変更を理
由として、一の労働契約期間中に変更されることは、所得の不安定化を防ぎ、中
長期的なキャリア形成を可能とする労使協定制度の趣旨に反する恐れがあること
から、特段の事情がない限り、認められないことを労使協定に記載すること」と
規定されています。
要するに、労使協定対象派遣労働者(労使協定に基づいて賃金額が支払われる派遣
労働者)として派遣先で働いていたのに、その派遣労働者の雇用契約期間の途中で
派遣先が変わることによって、派遣元から「君、明日から労使協定に基づいた賃金
額ではなく、派遣先均等・均衡方式で賃金額を計算するからね」というような取り
扱いはしないことを労使協定の中に明記しなさい!ということです。
ただし、以下の「特段の事情」がある場合には、一の労働契約の契約期間中でも待
遇決定方式を変更することができます。
① 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲が職種によって定められている場合
であって、派遣労働者の職種の転換によって待遇決定方式が変更される場合
で、かつ当該派遣労働者から合意を得た場合
→ 例えば、プログラマーは労使協定の対象となっているが、システムエ
ンジニアは労使協定の対象となっていない場合で、当初、プログラマ
ーの職種で派遣されていた派遣労働者が、次の派遣先ではシステムエ
ンジニアの職種に派遣されることになり、その派遣労働者に対して労
使協定の対象から外れることについて説明した上で、その派遣労働者
から同意を得た場合等を意味します。
・待遇決定方式を変更しなければ派遣労働者が希望する就業機会を提供できない
場合であって、当該派遣労働者から合意を得た場合
→ 例えば、プログラマーは労使協定の対象となっているが、システムエ
ンジニアは労使協定の対象となっていない場合で、当初、プログラマ
ーとして派遣就業していた派遣労働者が、「次の派遣先は、是非、
●●●●(株)で派遣就業したい。そこはプログラマーではなく、シス
テムエンジニアでの派遣労働者しか求めていないが、自分もシステ
ムエンジニアの経験があるので、システムエンジニアとして派遣就
業したい」という希望があった場合に、その派遣労働者に対して労
使協定の対象から外れることについて説明した上で、その派遣労働
者から同意を得た場合等を意味します。
【記載例】
(対象となる派遣労働者の範囲)
第○条 本協定は、派遣先で以下の職種の業務に従事する従業員(以下「対象従
業員」という)に適用する
・プログラマー
・システムエンジニア
2 対象従業員については、派遣先が変更される頻度が高いことから、中長期
的なキャリア形成を行い所得の不安定化を防ぐため、本労使協定の対象と
する。
3 対象従業員について、一の労働契約の契約期間中に、特段の事情がない限
り、本協定の適用を除外しないものとする。
今回で「労使協定に定める事項」の説明はすべて終了となります。
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https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和4年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000817350.pdf
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