今回から企業のハラスメント対策について数回にわたって説明したいと思います。
企業のハラスメント対策としては、
① セクシュアルハラスメント対策(すべての企業で義務化)
② 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策(すべての企業で義務化)
③ パワーハラスメント対策(令和2年6月1日から大企業が義務化。令和4年
4月1日から中小企業も義務化)
があります。
今回は、
① セクシュアルハラスメント対策(すべての企業で義務化)
について解説したいと思います。
ちなみに今回の内容については、下記のパンフレットの内容を解説したものとなりま
す。詳細については下記のパンフレットをご参照ください!

(厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」)
今回のブログはかなり長くなりますが、企業にとってハラスメント対策は非常に重要
な内容となるためどうか最後までお付き合いください!
【根拠条文】
職場におけるセクシュアルハラスメント対策については、男女雇用機会均等法
第11条に以下のとおり規定されています
<男女雇用機会均等法>
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働
者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言
動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談
に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を
講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対
応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他
不利益な取扱いをしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要
な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
<筆者解説>
上記の条文は要約すると、
均等法11条第1項では、「会社は労働者がセクハラの被害を受けないようにする
ため及びもし被害を受けた場合は適切な処置を行うための必要な措置を講じなさい
よ」
均等法11条第2項では、「会社は、労働者からセクハラの相談を受けたことに対
してその相談をした労働者を罰する等の不利益な取扱いをしてはいけませんよ。ま
た、セクハラの事実関係の確認のために関係者から事情聴取を行った際に、セクハ
ラの事実があったこと等をその関係者が証言したことに対して、会社は証言を行っ
た者を罰するなどの不利益な取り扱いはしてはいけませんよ」
均等法11条第3項では、「自社(A社)の労働者等が他社(B社)の労働者にセ
クシュアルハラスメントを行ったとして、B社から事実確認や再発防止に向けた協
力依頼があった場合、A社はB社の依頼にできるだけ応ずるように努めなさいよ」
となります。
【セクハラ対策の対象企業】
中小企業、大企業、個人事業主、法人等、労働者を雇用するすべての事業主はこ
れから説明するセクハラ対策を講じる義務があります。
講じていない場合は行政からの指導を受ける可能性があります!
【セクシュアルハラスメントの定義】
では、「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは何かというと『職場(※1
)において行われる、労働者(※2)の意に反する性的な言動(※3)に対する労
働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動に
より就業環境が害されること』をいいます。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の1)
<筆者解説>
つまり、職場におけるセクシュアルハラスメントとは、「職場で、労働者が他の
労働者等から受けた性的な言動により被った精神的・肉体的被害及び当該性的言動
に対し不快感や拒否したことによる加害者からの嫌がらせ」のことをいいます。
※1 「職場」とは「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働
者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する
場所であれば「職場に」含まれます。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(2))
勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務
の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては
、職場との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考
慮して個別に判断されます(上記のほかにも、「出張先」「業務で使用する
車中」「取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む)」等)
<筆者解説>
人事等のハラスメント対応に当たる方は、プライベートで起こったことだ
から対応は不要と考えず、基本的には労働者からセクハラの申し出があれば
対応しなければいけないものと認識しておいたほうが無難でしょう
※2 被害者となる「労働者」とは「正規雇用労働者のみならず、パートタイム労
働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、会社が雇用する全て
の労働者」をいいます。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主も
自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(3))
(労働者派遣法第47条の2)
さらに、事業主は自社が雇用する労働者のみならず、個人事業主、インタ
ーンシップを行っている者、他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学
生等に対する自社の労働者の言動についてもセクハラ防止措置をとることが
望ましいとされています。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の7)
<筆者解説>
派遣労働者については、就業先が派遣先となるため、セクハラについても
派遣先で発生する可能性があり、もし、派遣労働者からセクハラ相談を派遣
元責任者や派遣元の営業担当者が受けた場合であっても、派遣元は派遣先と
連携し、両社でセクハラ対策を行わなければいけません。
もし、派遣元・派遣先が後で説明するセクハラ対策を怠っていた場合は男
女雇用機会均等法違反として行政から指導を受ける可能性があります。
また、自社の労働者以外の「請負関係にある個人事業主」や「インターン
シップ制度によって受け入れている者」「取引先の労働者」「就職活動のた
めOB訪問に来ている就活生」等に対しても、セクハラ対策の対象となる自
社の労働者ではないものの、自社の労働者がこれらの者に対して、もしセク
ハラをした場合、当然、自社に対して社会的責任の追及が及ぶ可能性も高い
ため、自社の責任としてセクハラ対策の対象することが望ましいとしていま
す。
※3 「性的な言動」とは「性的な内容の発言及び性的な行動」をいいます。
【性的な言動の例】
① 性的な内容の発言
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布するこ
と、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な
性的体験談を話すことなど
② 性的な言動
性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ
図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為など
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(4))
※4 「性的な言動を行う者」とは、事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他
の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における
生徒等もなり得ます。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(4))
男女とも行為者にも被害者にもなり得ますし、異性に対するものだけでは
なく、同性に対するものも該当します。
また、被害を受ける者の性的志向や性自認にかかわらず、「性的な言動」
であれば、セクシュアルハラスメントに該当します。
<筆者解説>
職場におけるセクシュアルハラスメントの加害者は上司や同僚、部下のほ
か、取引先の営業マンや顧客、病院における患者や学校における生徒等も対
象となるため、自社の雇用する労働者から例えば「取引先の営業マンからし
つこくデートの誘いを受けて困っている」という相談を会社が受けた場合は
、それに対して法に沿った対応をしなければ法律違反として行政から指導を
受ける可能性があります。
また、性的志向(恋愛対象となる性。異性愛、同性愛、両性愛)や性自認
(自分の性の認識。こころの性別)にかかわらず、性的な言動を行った場合
はセクシュアルハラスメントに該当する可能性があります。
【セクシュアルハラスメントの種類】
「職場におけるセクシュアルハラスメント」は大きく分けると
① 対価型セクシュアルハラスメント
② 環境型セクシュアルハラスメント
の2つに分類されます。
① 対価型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、
その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象から
の除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること
● 典型的な例
・事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否
されたため、その労働者を解雇すること
・出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗された
ため、その労働者について不利益な配置転換をすること
・営業所内において事業主が日ごろから労働者に係る性的な事柄について公
然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(5))
② 環境型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなった
ため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過
できない程度の支障が生じること
● 典型的な例
・事務所内において上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働
者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的
に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
・労働者が抗議をしているにもかかわらず、同僚が業務に使用するパソコン
でアダルトサイトを閲覧しているため、それを見た労働者が苦痛に感じて
業務に専念できないこと。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(6))
【セクハラの判断基準】
セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、判断に当たり個別の状況を斟
酌する必要があります。また、「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環
境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、事業主の防
止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要です。
一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一
回でも就業環境を害することとなり得ます。継続性又は繰り返しが要件となるも
のであっても、「明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態」又は「心
身に重大な影響を受けていることが明らかな場合」には、就業環境が害されてい
ると判断し得るものです。また、男女の認識の違いにより生じている面があるこ
とを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働
者の感じ方」を基準都市、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な
男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当です。
<筆者解説>
セクシュアルハラスメントに該当するかどうかは、被害を受けた労働者が訴訟
を起こし裁判で判決が出て初めて確定します。
つまり、それまでは行政であってもセクハラに該当するかどうかは判断できま
せん。
では、セクハラ対策として企業が行わなければならないことは何かというと、
後で説明する「セクハラを防止するための措置」及び「セクハラが発生した際の
対応」について男女雇用機会均等法第11条第1項で定めています。
したがって、企業が労働者からセクハラ相談を受けた場合はまずは、法律に沿
った対応を行うことが重要となります。
法に沿った対応の結果、企業が「セクハラはなかった」という結論を出しても
法律違反とはなりません。
企業の結論に対して納得できない場合は労働者が訴訟を提起してくる可能性も
ありますが、訴訟になった場合は、改めて、企業はセクハラがなかったことを証
明すればいいのです。
また、訴訟になった場合であっても、企業が法に沿ったセクハラ対策が取られ
ていなかった場合は、そのことも判決に影響してくる可能性があります。
まず、企業がしなければいけないことは、今から説明する「セクハラ防止措置
を実施する」ということになります。
【企業が実施しなければいけないセクハラ防止措置】
企業が実施しなければいけないセクハラ防止措置は、大きく分けて次の2つ
に分類されます
(1)今すぐに実施しなければいけない事項
(2)労働者から相談を受けたとき及び相談終了後に実施しなければいけない
事項
(1)今すぐに実施しなければいけない事項
企業がセクハラ防止措置としてすぐに実施しなければいけない事項は次の6
項目となります
① セクシュアルハラスメントの内容、セクシュアルハラスメントを行っては
ならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発するこ
と
→ セクハラとは具体的にどういうことを指すのか、会社としてセクハラ
は絶対許さないという意思表示についてチラシ等を作成し、自社のすべ
ての労働者に周知します。
周知方法については、就業規則のように、作成したものをファイルに
入れて保管し「誰でも見ていいよ」というような周知方法ではなく、す
べての労働者の目に必ず触れるような周知方法(すべての事業所におい
て、そこに就業するすべての労働者が目にする場所にチラシを貼付する
方法やすべての労働者にそのチラシをメールで送信する方法等)が必要
とされています。
② セクシュアルハラスメントの行為者について厳正に対処する旨の方針・対
処の内容を就業規則に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発するこ
と
→ セクハラの行為者に対し厳正に対処する旨の方針及び具体的な処分方
法をチラシ等に記載し、自社のすべての労働者に周知します。
また、実際に行為者を処分するために会社の懲戒規定にセクハラを行
った者に対する処分内容を規定します
懲戒規定の記載例については上記、厚生労働省「職場におけるパワー
ハラスメント対策が事業主の義務になりました!」パンフレットのp38
を参照ください!
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
→ セクハラの相談窓口を設置((例)相談窓口:人事課長)し、チラシ
等に記載し、自社のすべての労働者に周知します。
相談窓口が形式的なものしか設置しておらず、実際の相談ができない
ような場合は、相談窓口を設置していないとして行政から指導を受ける
可能性があります。
相談窓口担当者は「人事課」など、組織全体としても構いませんが、
組織全体とする場合、その組織のすべての労働者が相談対応できない場
合も、相談窓口を適正に設置していないとして行政から指導を受ける可
能性があります。
相談者の個人情報も扱うことから相談窓口の担当者は一定以上の役職
者としておいたほうがよいでしょう。
④ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
セクシュアルハラスメントにに該当するか否か微妙な場合であっても、広く
相談に対応すること
→ 相談窓口担当者が相談者に対し門前払いをしたり、しっかりと話を聞
かなかった場合は適正に相談対応していないとして行政からの指導を受
ける可能性があります。したがって、相談窓口担当者は相談者からの相
談に些細なことでも耳を傾け相談対応に当たる旨を、チラシ等に記載し
、自社のすべての労働者に周知します。
⑤ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周
知すること
→ 相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属
するものであることから、相談及び事後の対応に当たっては、相談者・
行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じる旨を、チ
ラシ等に記載し、自社のすべての労働者に周知します。
⑥ 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局
の援助制度の利用等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を
定め、労働者に周知・啓発すること
→ 労働者がセクハラ相談をしたこと、事業主からの事実関係の確認に協
力したこと、労働局の紛争解決援助制度(労働局が実施するあっせん制
度や調停制度)を労働者が利用したことを理由として解雇やその他の不
利益な取扱いを労働者にしない旨をチラシ等に記載し、自社のすべての
労働者に周知します。
上記のチラシ例は以下のような感じになります。

(大阪労働局「ハラスメントは許しません!チラシ例(改正法対応(パワハラ含む)、Powerpoint、イラスト入り)
(令和2年6月更新)」)
(2)労働者から相談を受けたとき及び相談終了後に実施しなけれ
ばいけない事項
企業が労働者から相談を受けたとき及び相談終了後に実施しなければいけな
い事項は次の4項目となります
① 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
→ 労働者から相談を受けた相談窓口担当者は早急に、相談者及び行為者
から事情を確認しなければいけません。
相談者と行為者との主張が不一致であり、事実確認が十分にできない
と認められる場合は第三者からも事実確認を行う必要があります。
相談者から相談を受けたにもかかわらず、門前払いをしたり、相談者
や行為者から事情確認もせず、「セクハラには該当しない」と相談窓口
担当者が判断することは事実関係を迅速かつ正確に確認していないとし
て、行政から指導を受ける可能性があります。
相談者、行為者とされる者及び第三者からの事情確認の結果、「セク
ハラに該当しない」とする結論を会社が相談者に伝えることは法律上、
特に問題ありません!
② 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に
行うこと
→ 事実確認の結果、当該セクハラ行為が事実であった場合、会社は被害
者と行為者を引き離すための配置転換や、行為者の謝罪、被害者の労働
条件上の不利益の回復等の適正な措置を講じる必要があります。
③ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
→ 事実確認の結果、当該セクハラ行為が事実であった場合、会社は行為
者に対し、会社の就業規則に沿って必要な懲戒その他の措置を講じる必
要があります。また、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き
離すための配置転換や、行為者の謝罪等の措置も講ずる必要があります。
④ 改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発
する等の再発防止に向けた措置を講ずること
→ 事実確認の結果、当該セクハラ行為が事実であった場合、または事実
が確認できなかった場合であっても、労働者に対して職場におけるセク
シュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改
めて実施することが必要となります。
【まとめ】
最後に、今回説明したセクハラ対策として企業がしなければいけないことを
まとめると、
① ハラスメント全般に対する相談窓口を決定する(至急)
② ハラスメントチラシを作成し、すべての職場の職員が目にしやすい場所
にチラシを貼る(至急)
③ 就業規則の懲戒規定にセクハラ(次回、次々回で説明するマタハラ、育
児ハラスメント、パワハラについても規定)をした場合の懲戒処分を規定
する(速やかに)
④ 相談窓口の担当者に相談者から相談があった場合の対応方法の研修を実
施する(遅滞なく)
対応方法としては、以下の内容をしっかりと担当者に説明する
・決して相談者に対して門前払いをしない
・相談者から必ず話を聞く
・行為者から必ず話を聞く
・関係者から話を聞く(場合によって)
・事情聴取の結果を相談者に伝える(セクハラがなかったと会社が判
断した場合はその旨を伝える)
・セクハラが事実と会社が判断した場合、被害者に対する配慮措置を
行う(被害者の配置転換等、出来るだけ被害者の希望に沿うように
する)
・セクハラが事実と会社が判断した場合、加害者(行為者)に対する
懲戒処分等の措置を行う
・再発防止に向けた措置(ハラスメント研修等の実施)を行う
⑤ 会社のハラスメント対応に納得しない労働者から訴訟を起こされた場合
、又は起こされそうな雰囲気を感じた場合は、早急に弁護士に相談する
→ 訴訟に発展しそうな場合や泥沼化しそうな場合はすぐに弁護士さんに
相談しましょう。
費用を気にして弁護士さんへの相談が遅れると、状態がより悪化する
可能性があります!
今回は、セクハラ対策について説明しましたが、次回の「妊娠・出産・育児
休業等に関するハラスメント対策」「パワーハラスメント対策」も殆ど同じ内
となります。詳細は次回・次々回で説明します!

『労働者派遣契約の結び方』をご購入いただいた方は今回の改正後の様式をダウンロードしていただけます!
拙著「労働者派遣契約の結び方」をご購入いただいた方につきましては、令和3年1月と4月に行われた派遣法改正に対応した派遣関係書類を税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。
本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。
派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われる方は是非、ご一読ください!
本書は専門書のため、ジュンク堂書店、紀伊国屋書店等の大型書店にてお買い求めいただけます!
https://haken-higashitani.com/
(資料)
厚生労働省 「派遣労働者の同一労働同一賃金」サイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
企業のハラスメント対策としては、
① セクシュアルハラスメント対策(すべての企業で義務化)
② 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策(すべての企業で義務化)
③ パワーハラスメント対策(令和2年6月1日から大企業が義務化。令和4年
4月1日から中小企業も義務化)
があります。
今回は、
① セクシュアルハラスメント対策(すべての企業で義務化)
について解説したいと思います。
ちなみに今回の内容については、下記のパンフレットの内容を解説したものとなりま
す。詳細については下記のパンフレットをご参照ください!

(厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」)
今回のブログはかなり長くなりますが、企業にとってハラスメント対策は非常に重要
な内容となるためどうか最後までお付き合いください!
【根拠条文】
職場におけるセクシュアルハラスメント対策については、男女雇用機会均等法
第11条に以下のとおり規定されています
<男女雇用機会均等法>
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働
者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言
動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談
に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を
講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対
応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他
不利益な取扱いをしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要
な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
<筆者解説>
上記の条文は要約すると、
均等法11条第1項では、「会社は労働者がセクハラの被害を受けないようにする
ため及びもし被害を受けた場合は適切な処置を行うための必要な措置を講じなさい
よ」
均等法11条第2項では、「会社は、労働者からセクハラの相談を受けたことに対
してその相談をした労働者を罰する等の不利益な取扱いをしてはいけませんよ。ま
た、セクハラの事実関係の確認のために関係者から事情聴取を行った際に、セクハ
ラの事実があったこと等をその関係者が証言したことに対して、会社は証言を行っ
た者を罰するなどの不利益な取り扱いはしてはいけませんよ」
均等法11条第3項では、「自社(A社)の労働者等が他社(B社)の労働者にセ
クシュアルハラスメントを行ったとして、B社から事実確認や再発防止に向けた協
力依頼があった場合、A社はB社の依頼にできるだけ応ずるように努めなさいよ」
となります。
【セクハラ対策の対象企業】
中小企業、大企業、個人事業主、法人等、労働者を雇用するすべての事業主はこ
れから説明するセクハラ対策を講じる義務があります。
講じていない場合は行政からの指導を受ける可能性があります!
【セクシュアルハラスメントの定義】
では、「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは何かというと『職場(※1
)において行われる、労働者(※2)の意に反する性的な言動(※3)に対する労
働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動に
より就業環境が害されること』をいいます。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の1)
<筆者解説>
つまり、職場におけるセクシュアルハラスメントとは、「職場で、労働者が他の
労働者等から受けた性的な言動により被った精神的・肉体的被害及び当該性的言動
に対し不快感や拒否したことによる加害者からの嫌がらせ」のことをいいます。
※1 「職場」とは「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働
者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する
場所であれば「職場に」含まれます。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(2))
勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務
の延長と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては
、職場との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考
慮して個別に判断されます(上記のほかにも、「出張先」「業務で使用する
車中」「取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む)」等)
<筆者解説>
人事等のハラスメント対応に当たる方は、プライベートで起こったことだ
から対応は不要と考えず、基本的には労働者からセクハラの申し出があれば
対応しなければいけないものと認識しておいたほうが無難でしょう
※2 被害者となる「労働者」とは「正規雇用労働者のみならず、パートタイム労
働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、会社が雇用する全て
の労働者」をいいます。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主も
自ら雇用する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(3))
(労働者派遣法第47条の2)
さらに、事業主は自社が雇用する労働者のみならず、個人事業主、インタ
ーンシップを行っている者、他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学
生等に対する自社の労働者の言動についてもセクハラ防止措置をとることが
望ましいとされています。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の7)
<筆者解説>
派遣労働者については、就業先が派遣先となるため、セクハラについても
派遣先で発生する可能性があり、もし、派遣労働者からセクハラ相談を派遣
元責任者や派遣元の営業担当者が受けた場合であっても、派遣元は派遣先と
連携し、両社でセクハラ対策を行わなければいけません。
もし、派遣元・派遣先が後で説明するセクハラ対策を怠っていた場合は男
女雇用機会均等法違反として行政から指導を受ける可能性があります。
また、自社の労働者以外の「請負関係にある個人事業主」や「インターン
シップ制度によって受け入れている者」「取引先の労働者」「就職活動のた
めOB訪問に来ている就活生」等に対しても、セクハラ対策の対象となる自
社の労働者ではないものの、自社の労働者がこれらの者に対して、もしセク
ハラをした場合、当然、自社に対して社会的責任の追及が及ぶ可能性も高い
ため、自社の責任としてセクハラ対策の対象することが望ましいとしていま
す。
※3 「性的な言動」とは「性的な内容の発言及び性的な行動」をいいます。
【性的な言動の例】
① 性的な内容の発言
性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布するこ
と、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な
性的体験談を話すことなど
② 性的な言動
性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ
図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為など
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(4))
※4 「性的な言動を行う者」とは、事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他
の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における
生徒等もなり得ます。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(4))
男女とも行為者にも被害者にもなり得ますし、異性に対するものだけでは
なく、同性に対するものも該当します。
また、被害を受ける者の性的志向や性自認にかかわらず、「性的な言動」
であれば、セクシュアルハラスメントに該当します。
<筆者解説>
職場におけるセクシュアルハラスメントの加害者は上司や同僚、部下のほ
か、取引先の営業マンや顧客、病院における患者や学校における生徒等も対
象となるため、自社の雇用する労働者から例えば「取引先の営業マンからし
つこくデートの誘いを受けて困っている」という相談を会社が受けた場合は
、それに対して法に沿った対応をしなければ法律違反として行政から指導を
受ける可能性があります。
また、性的志向(恋愛対象となる性。異性愛、同性愛、両性愛)や性自認
(自分の性の認識。こころの性別)にかかわらず、性的な言動を行った場合
はセクシュアルハラスメントに該当する可能性があります。
【セクシュアルハラスメントの種類】
「職場におけるセクシュアルハラスメント」は大きく分けると
① 対価型セクシュアルハラスメント
② 環境型セクシュアルハラスメント
の2つに分類されます。
① 対価型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、
その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象から
の除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること
● 典型的な例
・事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否
されたため、その労働者を解雇すること
・出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗された
ため、その労働者について不利益な配置転換をすること
・営業所内において事業主が日ごろから労働者に係る性的な事柄について公
然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(5))
② 環境型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなった
ため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過
できない程度の支障が生じること
● 典型的な例
・事務所内において上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働
者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的
に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
・労働者が抗議をしているにもかかわらず、同僚が業務に使用するパソコン
でアダルトサイトを閲覧しているため、それを見た労働者が苦痛に感じて
業務に専念できないこと。
(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の2
(6))
【セクハラの判断基準】
セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、判断に当たり個別の状況を斟
酌する必要があります。また、「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環
境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、事業主の防
止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要です。
一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一
回でも就業環境を害することとなり得ます。継続性又は繰り返しが要件となるも
のであっても、「明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態」又は「心
身に重大な影響を受けていることが明らかな場合」には、就業環境が害されてい
ると判断し得るものです。また、男女の認識の違いにより生じている面があるこ
とを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働
者の感じ方」を基準都市、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な
男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当です。
<筆者解説>
セクシュアルハラスメントに該当するかどうかは、被害を受けた労働者が訴訟
を起こし裁判で判決が出て初めて確定します。
つまり、それまでは行政であってもセクハラに該当するかどうかは判断できま
せん。
では、セクハラ対策として企業が行わなければならないことは何かというと、
後で説明する「セクハラを防止するための措置」及び「セクハラが発生した際の
対応」について男女雇用機会均等法第11条第1項で定めています。
したがって、企業が労働者からセクハラ相談を受けた場合はまずは、法律に沿
った対応を行うことが重要となります。
法に沿った対応の結果、企業が「セクハラはなかった」という結論を出しても
法律違反とはなりません。
企業の結論に対して納得できない場合は労働者が訴訟を提起してくる可能性も
ありますが、訴訟になった場合は、改めて、企業はセクハラがなかったことを証
明すればいいのです。
また、訴訟になった場合であっても、企業が法に沿ったセクハラ対策が取られ
ていなかった場合は、そのことも判決に影響してくる可能性があります。
まず、企業がしなければいけないことは、今から説明する「セクハラ防止措置
を実施する」ということになります。
【企業が実施しなければいけないセクハラ防止措置】
企業が実施しなければいけないセクハラ防止措置は、大きく分けて次の2つ
に分類されます
(1)今すぐに実施しなければいけない事項
(2)労働者から相談を受けたとき及び相談終了後に実施しなければいけない
事項
(1)今すぐに実施しなければいけない事項
企業がセクハラ防止措置としてすぐに実施しなければいけない事項は次の6
項目となります
① セクシュアルハラスメントの内容、セクシュアルハラスメントを行っては
ならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発するこ
と
→ セクハラとは具体的にどういうことを指すのか、会社としてセクハラ
は絶対許さないという意思表示についてチラシ等を作成し、自社のすべ
ての労働者に周知します。
周知方法については、就業規則のように、作成したものをファイルに
入れて保管し「誰でも見ていいよ」というような周知方法ではなく、す
べての労働者の目に必ず触れるような周知方法(すべての事業所におい
て、そこに就業するすべての労働者が目にする場所にチラシを貼付する
方法やすべての労働者にそのチラシをメールで送信する方法等)が必要
とされています。
② セクシュアルハラスメントの行為者について厳正に対処する旨の方針・対
処の内容を就業規則に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発するこ
と
→ セクハラの行為者に対し厳正に対処する旨の方針及び具体的な処分方
法をチラシ等に記載し、自社のすべての労働者に周知します。
また、実際に行為者を処分するために会社の懲戒規定にセクハラを行
った者に対する処分内容を規定します
懲戒規定の記載例については上記、厚生労働省「職場におけるパワー
ハラスメント対策が事業主の義務になりました!」パンフレットのp38
を参照ください!
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
→ セクハラの相談窓口を設置((例)相談窓口:人事課長)し、チラシ
等に記載し、自社のすべての労働者に周知します。
相談窓口が形式的なものしか設置しておらず、実際の相談ができない
ような場合は、相談窓口を設置していないとして行政から指導を受ける
可能性があります。
相談窓口担当者は「人事課」など、組織全体としても構いませんが、
組織全体とする場合、その組織のすべての労働者が相談対応できない場
合も、相談窓口を適正に設置していないとして行政から指導を受ける可
能性があります。
相談者の個人情報も扱うことから相談窓口の担当者は一定以上の役職
者としておいたほうがよいでしょう。
④ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
セクシュアルハラスメントにに該当するか否か微妙な場合であっても、広く
相談に対応すること
→ 相談窓口担当者が相談者に対し門前払いをしたり、しっかりと話を聞
かなかった場合は適正に相談対応していないとして行政からの指導を受
ける可能性があります。したがって、相談窓口担当者は相談者からの相
談に些細なことでも耳を傾け相談対応に当たる旨を、チラシ等に記載し
、自社のすべての労働者に周知します。
⑤ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周
知すること
→ 相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属
するものであることから、相談及び事後の対応に当たっては、相談者・
行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じる旨を、チ
ラシ等に記載し、自社のすべての労働者に周知します。
⑥ 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局
の援助制度の利用等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を
定め、労働者に周知・啓発すること
→ 労働者がセクハラ相談をしたこと、事業主からの事実関係の確認に協
力したこと、労働局の紛争解決援助制度(労働局が実施するあっせん制
度や調停制度)を労働者が利用したことを理由として解雇やその他の不
利益な取扱いを労働者にしない旨をチラシ等に記載し、自社のすべての
労働者に周知します。
上記のチラシ例は以下のような感じになります。

(大阪労働局「ハラスメントは許しません!チラシ例(改正法対応(パワハラ含む)、Powerpoint、イラスト入り)
(令和2年6月更新)」)
(2)労働者から相談を受けたとき及び相談終了後に実施しなけれ
ばいけない事項
企業が労働者から相談を受けたとき及び相談終了後に実施しなければいけな
い事項は次の4項目となります
① 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
→ 労働者から相談を受けた相談窓口担当者は早急に、相談者及び行為者
から事情を確認しなければいけません。
相談者と行為者との主張が不一致であり、事実確認が十分にできない
と認められる場合は第三者からも事実確認を行う必要があります。
相談者から相談を受けたにもかかわらず、門前払いをしたり、相談者
や行為者から事情確認もせず、「セクハラには該当しない」と相談窓口
担当者が判断することは事実関係を迅速かつ正確に確認していないとし
て、行政から指導を受ける可能性があります。
相談者、行為者とされる者及び第三者からの事情確認の結果、「セク
ハラに該当しない」とする結論を会社が相談者に伝えることは法律上、
特に問題ありません!
② 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に
行うこと
→ 事実確認の結果、当該セクハラ行為が事実であった場合、会社は被害
者と行為者を引き離すための配置転換や、行為者の謝罪、被害者の労働
条件上の不利益の回復等の適正な措置を講じる必要があります。
③ 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
→ 事実確認の結果、当該セクハラ行為が事実であった場合、会社は行為
者に対し、会社の就業規則に沿って必要な懲戒その他の措置を講じる必
要があります。また、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き
離すための配置転換や、行為者の謝罪等の措置も講ずる必要があります。
④ 改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発
する等の再発防止に向けた措置を講ずること
→ 事実確認の結果、当該セクハラ行為が事実であった場合、または事実
が確認できなかった場合であっても、労働者に対して職場におけるセク
シュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改
めて実施することが必要となります。
【まとめ】
最後に、今回説明したセクハラ対策として企業がしなければいけないことを
まとめると、
① ハラスメント全般に対する相談窓口を決定する(至急)
② ハラスメントチラシを作成し、すべての職場の職員が目にしやすい場所
にチラシを貼る(至急)
③ 就業規則の懲戒規定にセクハラ(次回、次々回で説明するマタハラ、育
児ハラスメント、パワハラについても規定)をした場合の懲戒処分を規定
する(速やかに)
④ 相談窓口の担当者に相談者から相談があった場合の対応方法の研修を実
施する(遅滞なく)
対応方法としては、以下の内容をしっかりと担当者に説明する
・決して相談者に対して門前払いをしない
・相談者から必ず話を聞く
・行為者から必ず話を聞く
・関係者から話を聞く(場合によって)
・事情聴取の結果を相談者に伝える(セクハラがなかったと会社が判
断した場合はその旨を伝える)
・セクハラが事実と会社が判断した場合、被害者に対する配慮措置を
行う(被害者の配置転換等、出来るだけ被害者の希望に沿うように
する)
・セクハラが事実と会社が判断した場合、加害者(行為者)に対する
懲戒処分等の措置を行う
・再発防止に向けた措置(ハラスメント研修等の実施)を行う
⑤ 会社のハラスメント対応に納得しない労働者から訴訟を起こされた場合
、又は起こされそうな雰囲気を感じた場合は、早急に弁護士に相談する
→ 訴訟に発展しそうな場合や泥沼化しそうな場合はすぐに弁護士さんに
相談しましょう。
費用を気にして弁護士さんへの相談が遅れると、状態がより悪化する
可能性があります!
今回は、セクハラ対策について説明しましたが、次回の「妊娠・出産・育児
休業等に関するハラスメント対策」「パワーハラスメント対策」も殆ど同じ内
となります。詳細は次回・次々回で説明します!

『労働者派遣契約の結び方』をご購入いただいた方は今回の改正後の様式をダウンロードしていただけます!
拙著「労働者派遣契約の結び方」をご購入いただいた方につきましては、令和3年1月と4月に行われた派遣法改正に対応した派遣関係書類を税務経理協会様のホームページからダウンロードしていただけます。
本書は、3年間、大阪労働局の需給調整事業部(派遣法の指導監督を行っている部署)で需給調整事業専門相談員として派遣会社や派遣先の企業、社労士や弁護士の方からの相談業務を担当していた筆者が、労働者派遣法のことが全く分からない方や派遣業務が未経験の方でも簡単に派遣関係書類が作成できるよう、記載例も掲載しわかりやすく解説させていただいています。
派遣元の担当者の方や派遣先の担当者の方、社会保険労務士の先生方など派遣業務に携われる方は是非、ご一読ください!
本書は専門書のため、ジュンク堂書店、紀伊国屋書店等の大型書店にてお買い求めいただけます!
https://haken-higashitani.com/
(資料)
厚生労働省 「派遣労働者の同一労働同一賃金」サイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
厚生労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領(2021年4月)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020/dl/all.pdf
厚生労働省 「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000501271.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和2年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000595429.pdf
厚生労働省 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和3年度適用)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000685419.pdf
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます