つれづれなるままに

恐れ多くも、兼好法師のような文才はありませんが、日常の出来事を「ブログ」に表現できれば幸いです。’05.01.27.大安

◆日銀(19日発表)の歴史的金融政策を考察する

2008-12-20 13:32:46 | Weblog
   金融政策決定会合について記者会見する白川方明・日銀総裁=19日午後、日銀本店にて



サブプライムローン問題から端を発した、米国発の深刻な金融危機が世界各国に広がる中、わが国でも年末の資金需要に対処する為に、政策金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を現在の年0.3%から0.1%にすることを決めた。

米連邦準備制度理事会(FRB)のゼロ金利政策による円高と急激な景気悪化が進む中で、一段の金融緩和が必要との長期的な日銀の判断でもある。

今回の政策の画期的な点は、これまで「現先オペ」(優良な大企業が発行するコーマーシャルペーパー「CP」について、企業の経営悪化の影響を直接受けないように、金融機関に資金供給する際の担保として受け入れる)にとどめてきた政策を、「買いきり」(日銀が売り戻し条件をつけない)を実施したことである。金融機関はリスク(企業の経営破綻に伴う回収不能懸念)なしでCPを購入できる事である。

規模や時期などの具体的な調整はこれからだが、更に債権や株式などの有価証券を担保にした資金供給や「買いきり」も検討している。世界経済同時不況が懸念される中、金融、経済、財政対策は先手必勝である。麻生政権も真剣に対処してもらいたい。

1992年当時の宮沢首相が国債を日銀が担保に金融機関に資金供給する金融政策を当時「禁じ手」と批判された時代と隔世の感がある。

米国連銀や、日銀の判断は、金融危機の対処方法で、「金の流れ」(血液の循環)をよく(回復)して、経済活動の活性化を促す試みである。共に、リスクは中央銀行が負い(不良債権発生は公金である税金で充当される)、誤算は高度なインフレを招く。だから、失敗は許されない。

ここで、国際通貨制度の歴史を簡単に振り返ってみたい。

大恐慌の1930年代(大戦前)、自国通貨を切り下げて(当時は各国金本位制だったので、金に対して兌換価格切り下げを意味する)、輸出競争から保護貿易に走り、更に世界経済が停滞した。フーバー大統領(共和党)に替わって、ルーズベルト大統領(民主党)が誕生(1933年4月)、ニューディール政策に着手。財政支出を増し、世界的標準だった金本位制をやめ、金融政策の自由度を高め、金融機関に大量の資金供給を行い、資産価格の下落を止めた。日本では、橋是清蔵相が金輸出を再禁止(1931年12月)、公共事業を増やして、日銀の国債引受を実施。株価や地価の下落を止め、反転した。


1944年7月、米ニューハンプシャー州プレトンウッズのマウントワシントンホテルに連合国側の44カ国の代表が集まって、戦後経済の再建策を話し合った。各国の金本位制度を止め、米ドルを基軸通貨(金1トロイオンス{約31グラム}を35ドルと固定)に決定。米国は、いつでもドルと金を交換に応じることや、国際通貨基金(IMF)と世界銀行(世銀)を第二次大戦後の世界経済を安定させる為に創設された。所謂プレトンウッズ協定である。日本の新幹線や黒四ダムも世銀の融資で作られた。


しかし、60年代に欧州や日本が経済力をつける一方、ベトナム戦争の出費もあって、米国の国際収支が悪化。制度維持が出来なくなり、ニクソン米大統領が突然、金とドルの交換停止を発表(1971、8月)。所謂、「ニクソンショック」である変動相場制(当時1ドル308円)に移行した。

1973年、円、変動相場制へ移行。

1985年、プラザ合意(過度のドル高是正で合意)。

1986年、ルーブル合意(過度のドル安懸念で合意)。

1999年、欧州単一通貨ユーロがスタート。

2007年、サブプライムローン問題が表面化。

2008年11月、初の金融サミット(G20)開催。IMFと世銀は通貨安定や途上国への融資、各国金融部門を分析したりしている。しかし規制緩和と金融工学がもたらした巨大で複雑な金融取引の危険性を充分に認識できず、事前の注意喚起が出来なかった。そのため、11月の金融サミット(G20)では、「早期警戒」機能を国際通貨基金(IMF)に与える事で合意した。日本はIMFへ最大千億ドル(約10兆円)の融資を表明。中東、ブラジル、インドなどの新興国にも経済力に見合った出資を求めている。


サブプライムローンに端を発した世界的金融危機で、経済システムへ根本的な改革案「新プレトンウッズ」が提起され、現状手直しに焦点が充てられている。(プレトンウッズⅡとも呼ばれる)

金への兌換停止というドル紙幣発行の枠をなくした基軸通貨ドルが、今回の金融不安に大きく揺らいでいる現状を考えると、いずれ、ドルに代わる基軸通貨制度の改革が重要課題となってくる。

日本の場合、基本的には手持ち「外貨」枠の中で、日銀券を発行しているが、所謂「禁じ手」で、枠外の日銀券発行・資金注入で景気回復後、タイミングよく、だぶついた日銀券を遅滞なく回収しなければ、バブルの再来とインフレが日常生活を狂わせることになる危険性を孕んでいる。時の政府との兼ね合いが鍵となる。



最近、グリーンスパン(前FRB理事長)氏が、金融機関に対して、もっと厳しい規制をすべきだった旨、当時の金融政策の失敗を自己反省している。

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