すてきな三にんぐみ 作・絵:トミー・アンゲラー / 訳:今江 祥智出版社:偕成社 |
いつもちょっとシニカルなところがある、トミー・アンゲラーの絵本です。
最初は、3種類のおどしの武器を持ったどろぼうたちの、どろぼうのやり口が説明されます。うちの子はそこが気に入っている様子で、わざわざ開いて説明してくれました。
ある日、襲った馬車に残されていた女の子を連れて帰ったことをきっかけに、三人は盗んだお金で城を買い、そこに寂しい思いをしている孤児たちを連れてきます。
息子の感想は、「いいことをしているけどぬすんだお金でしちゃだめだろ」でした。
道徳的に言ったらそうなのですが、これを100%良いとか悪いと断じるのは難しいし、ヤボな話です。
どろぼうたちは、お金持ちから盗んでいるということが分かるし、盗んだものをどう使うか、初めは考えていませんでした。つまり自分の欲のためというより、盗むこと自体を楽しんでいるようなふしがあります。
子どもたちは大きくなって城の周りに集落を築き、自立して、3人のことを忘れないように象徴的な塔を建てます。寂しい環境から救い出してくれた人たちだからです。
子どもの時や、もっと若い時なら、「これ駄目だろ」の気持ちのほうが強かったと思いますが、貧富の差を考えるとこういうのもありだな、金持ちのぜいたく品になるより有効なお金の使い道だろう、と思ったりします。
アンゲラー氏は広告美術を手掛けていた方なので、グラフィック的な配色、センス良さも魅力のひとつです。
この絵本は娘のフィービーちゃんにささげられた作品だとか。すてきなお父さんですね。