ろうげつ

花より男子&有閑倶楽部の二次小説ブログ。CP :あきつく、魅悠メイン。そういった類いが苦手な方はご退室願います。

若宗匠の懐刀(総+つく)後篇

2022-01-02 02:01:00 | 短篇(花より男子)
※下品な会話が出てまいります。
苦手な方は回れ右でお願いします。
なお、読まれた後の苦情は受付不可ですのであしからず。





「にぃ〜しぃ〜くぅあどぉぉ〜!おんどりゃワレェ〜どういうつもりじゃあああ〜コラァァ〜!!」

「ななな何だ!?」

二軒目に訪れたクラブで見事、若宗匠を見つけ出した牧野様に私は感動しました。
流石、流石でございます。
若宗匠の行動パターンや行きつけの店など、ちゃんと把握されているんですね。
司様やあきら様、類様が「牧野に聞け」と口を揃えて仰っしゃられた意味が今、分かりました。

「このボケ、カスゥ〜!どういうつもりじゃ」

「どういうもこういうもお前、口が悪すぎるぞ。つうか、個室のドアを蹴破るな。凶暴すぎるだろ。どうすんだコレ、ドア壊れてんぞ」

「そんなの決まってんでしょ!アンタが弁償するのよ」

「何で俺!?壊したのは牧野だろ。俺は関係ねぇ」

「関係ないワケないでしょ!アンタのせいでしょうが」

「はぁ?」

「はぁ?じゃないっつーの。大事な茶会を明日に控えてんのに、フラフラ夜遊びしてるアンタのせいだっつってんの。可哀想にアンタの秘書さん、「若宗匠の居場所を探して下さい」って、私に泣きついてきたのよ!?」

いや、あの、泣きついてはいません。
泣き言めいた発言はしましたけれども。
と、反論したいところをジッと堪え、お二人の成りゆきを見守ります。

「そっちの事情は分かった。けど、俺の事情は?分かってんの?」

「アンタの事情?・・・って何よ」

「お前、この状態を見て何も思わないワケ?勤労処女とは言え、ニブすぎるだろ」

「ナイスバディなオネーサンが、半裸状態でアンタに跨ってるだけでしょーが。そんなのどーでもいいわ。こっちはねぇ、こんな夜更けに下半身が病気なアンタを探す羽目になって、とんだ迷惑被(こうむ)ってんのよ。さっさとサクッと終わらせて、秘書さんと一緒に家に帰れ!このスカポンタン!」

す、凄いです、牧野様。
その・・・何と言うか、営みの最中であろう若宗匠を正視出来るんですから。
並の心臓をお持ちじゃないですね。肝が据わってます。
私なんて、目の遣りどころがなくて困っておりますのに・・・流石です!牧野様。

「あと何分で終わるの!?つうか、今すぐフィニッシュして。ほら、早く」

「出来るかー!」

「そっ。じゃ、オネーサンから離れてチャッチャと服を着てちょうだい。で、続きは明日の茶会が終わってからドウゾ。て言うかさ、大事な茶会を控えてるのによくこんな事できるよね。性欲を抑えきれず欲望の赴くまま行動するって、何かの病気じゃない!?自分の欲に忠実すぎるのってどうよ。そんなんで家元になれるの?もう破門じゃね?」

「お前・・・処女のくせして恥じらいはないのか!?何で冷静に説教できるんだよ」

「アンタと違って、まともな人間だからに決まってんでしょ」

「お前のドコがまともなんだよ。立派な異常者だ!つうか、何でお前が俺の秘書と一緒にいるんだよ」

「秘書さんがアンタの居場所を教えてくれって言うから仕方なく」

「何で牧野に?」

「そんなの知らないわよ!アイツらに聞いてよ」

「アイツら?」

「美作、花沢、道明寺の三バカの事に決まってんでしょ!?バカの大親分」

「誰がバカの大親分だ!」

「アンタ以外に誰がいるってのよ!何で私がそんなバカの大親分のお目付け役をやらなきゃなんないの。なぁぁぁ〜んの関係もありゃしないのに。それをあの三バカ・・・かぁぁ~腹立つ」

「おいおい、よく思い出せ。俺達、何の関係もない仲とは言えねぇだろ」

「はぁぁ〜!?」

「お前が国立大学を受験するって言い出した時、ボンビーなお前の為に誰が家庭教師役を買って出たっけ?貴重な時間を割いてまで問題集を手作りし、ボランティアで受験勉強に付き合ってやった、心が広くて優しい男は誰だったっけなぁ〜!?」

「ぐっ!そ、それとこれとは別でしょ」

「カァ〜!随分と都合がいい事で」

「うっさい!」

あの〜お二人とも、周りの状況が目に入ってます?
ここ、VIP客用の個室とは言え、人目にはつくんですけど。
この騒ぎで数人の従業員が駆けつけて来ちゃったんですけど。
そして、若宗匠に跨ってた女性もこの騒ぎに乗じて、さりげなく消えちゃったんですけど。
て言うか牧野様、人知れず若宗匠を連れ帰るという作戦が見事に失敗ぶっこいちゃってますけど!?
これじゃあいずれ、家元のお耳にも入っちゃいますよ。
と、なれば、若宗匠と私は大目玉を喰らう訳でありまして・・・。
その辺り、分かってますかね?
分かって・・・ないだろうなぁ。
絶対、失念してるだろうなぁ。
と、言う訳で若宗匠、仲良く家元から説教喰らいましょうね。逃しませんよ!?


《あとがき》

コメディ系が書きたくなったので、衝動的に描いてしまいました。
コメディだとやはり、この二人が一番書きやすいです。
需要があるか分かりませんが、おまけ的な話を書いてアップする予定です。


若宗匠の懐刀(総+つく)前篇

2022-01-01 01:11:00 | 短篇(花より男子)
私がお仕えする西門流の若宗匠は、半端なくモテる。
想像を絶するほどのモテ具合なのだ。
何せ若宗匠は、美形でスタイル抜群で頭脳明晰でお金持ちで家柄も良くて愛想も良い。
だから当然、女性陣が放っておかない。
ワンナイトラブでもいいからお相手願おうと、女性達が若宗匠の周りをウロウロする。
となれば、どうなるかは火を見るより明らか。
据え膳食わぬは男の恥とばかりに、アッチへフラフラ、コッチへフラフラとして日に日に女遊びが激しくなっていく。

そしてある日の事、ついに若宗匠はやらかしてしまう。
大事な茶会を翌日に控え、事もあろうに夜の街へと繰りだしてしまったのだ。
流石にこれはマズい。
こんな事が家元にバレたら、叱責を浴びるだけではなく三日三晩、説教を喰らう羽目になるだろう。
若宗匠も、若宗匠のお目付け役である私も。
まあ、それだけで済むのならまだいい。
宗家だけの話として、内々に処理すればいいのだから。
一番厄介なのは、一門衆や後援会や門弟にバレた時だ。
大事な茶会を前に遊び惚けていたと知られたら、叱責どころの騒ぎではなくなる。
示しがつかないどころか、下手をすればそっぽを向かれ、若宗匠を返上しなくてはならなくなる・・・かもしれない。
そう思い至った私は若宗匠の居所を掴むべく、一人の女性の元へと駆けつけた。


「いや、あの、何で私に聞くんですか?私は西門さんの彼女でもなければ、友達でもありません。単なる後輩です。しかも、大学は別々だし余計に接点は少ないです。なので当然、西門さんの居場所なんて知りませんよ」

「えっ!?あ、いえ、あきら様に若宗匠の居所を尋ねたんですが、『生憎と俺は知らない。牧野なら知ってるかもな』と言われたものですから」

「はぁぁ!?」

「とは言え、いきなり牧野様を訪ねても、牧野様が面食らってしまうと思い、道明寺財閥の司様に若宗匠の行方を尋ねてみました」

「・・・既に面食らってますけど」

「司様のオーラに圧倒されそうになりましたが、それでも私は勇気をふり絞って窺(うかが)ったんです」

「・・・スルーかい!」

「そうしましたら『牧野に聞け!』と一喝されまして」

「あぁん!?」

「もっと粘ろうかと思いましたが、取り付く島もない状態でして。ですが、立ち止まる訳には参りません。若宗匠不在を家元に知られる前に、是が非でも見つけ出さなければ。ですので、一縷(いちる)の望みをかけ、花沢類様に尋ねました。そうしましたら・・・」

「そうしましたら?」

「類様は『俺が総二郎の居場所を知ってる訳ないだろ?そんなの、牧野に任せておけばいいんだよ』と、仰っしゃられまして」

「あンのヤロー・・・」

「と、言う訳で牧野様、後生ですから若宗匠の居場所を教えて下さい。でないと、私も若宗匠も大目玉を食らってしまいます。下手すればお家騒動になるやもしれません。お願いですから助けて下さい」

「ですから、何で私!?先程も言った通り、私と西門さんとの間にはなんっっっにもありません。ええ、ええ、それは見事なまでに何っっっひとつもありません。ぺんぺん草一つ生えないくらい真っさらなもんです。そんな私が、西門さんの居場所を知る訳ないじゃないですか」

「ですが、あきら様や司様、類様は口を揃えて牧野様に聞けと・・・」

「アイツら・・・鏖魔(みなごろし)にしてやろうか」

「はっ?」

「いえ、こちらの話です。兎に角、私はアイツらとは何の関係もありませんから」

「そんな後生な!お願いですから、お力を貸して下さい。若宗匠がいそうな所を教えて下さい。私にはもう、牧野様を頼るしか道がないんです」

「何でやねん!」

何でやねんと言われても、意味不明だとボヤかれても、私は諦めませんから。
頼みの綱は牧野様、あなたしかいないんですから。
貴女様は私にとって救いの神なのですから。



サチあらん未来へ(あきつく)

2020-10-05 06:39:01 | 短篇(花より男子)
※若干、後味の悪い話となっております。
ですので、読む読まないは自己責任でお願いします。
尚、読まれた後の苦情は受け付けませんので、あしからず。



私は牧野サチと申します。
お気付きかとは思いますが、私の母は牧野つくしです。
あ、ご心配なさらなくても、私は貴方様の娘ではございません。
それは自信をもって断言致します。

私の母は何事にも一生懸命で、悪い事をするとちゃんと叱ってくれて、真正面から受け止めてくれて、温かい心を持ち、ホッとする笑顔を浮かべる人でした。


「でしたって・・・過去形じゃないか。過去形って事はつまり───」

「心臓は動いています。ただ、生きる屍となった状態だという意味です」

「なっ!?」

「母は父の作った借金を返す為に、無理をしました。朝早くから夜遅くまで働いて、その合間に私の世話や家事をこなし、手抜きは一切しませんでした」

「借金・・・だと!?」

「はい。今は完済してます」

「借金額はいくらだったか分かるかい?」

「確か、3千万円くらいだったかと」

「3千万!?それを牧野一人で返したって!?」

「はい。私も役に立ちたくて、アルバイトで稼いだお金を渡したんですけど、受け取ってもらえませんでした。なので結果的に、母が一人で借金を返しました」

「牧野・・・君のお母さんだけで返した?じゃあ、君のお父さんは何をしてたんだ」

「酒と女に溺れた父は、完全にヒモ状態でした」

「・・・なんだと?」

「初めからそんな人間じゃなかったんです。でも、ある日を境に父は変わってしまった」

「・・・」

「リストラされ再就職も上手くいかなかった父は、貴方様に口利きしてくれと母に迫りました」


母の心の根っこには、未だ貴方様が住んでいる。
母が自ら手離したくせに、断ち切れずにいる貴方様との恋。
貴方様のお立場、貴方様の幸せを考え身を引いたくせに、ずっと頑固に引きずっている恋。
その事は、父も薄々は気付いていたようでした。
母が本当に愛しているのは自分ではないと。


「再就職も上手くいかない父は、苛々が募っていったんでしょう。自力で母の過去を調べました」

「それで、俺の存在を知ったんだな」

「はい」


母が昔、付き合っていた男性が誰であるのか、その男性がどんな立場の人間なのかを知ってしまった。
しかし、肝心の貴方様に関する情報は素人では手に入れられない。
だから父は、なけなしのお金を叩いて探偵に調べさせたようです。
そして、貴方様のご事情を多少なりとも知り得る事が出来た。


「夫婦仲は冷えきっていて長年別居し、子供もいない俺の家庭事情を知ってるんだな」

「はい。だから父は母に、貴方様と浮気しろと馬鹿な事を命令して・・・」

「美人局か。浮気の証拠を握ったら慰謝料を請求し、ついでにウチの会社に就職させてもらおうって魂胆だったかな?君のお父さんは」

「申し訳ございません」

「君が謝る必要はない」

「はい」


自分の要求を突っぱねた母が、父には憎たらしく思えたんでしょう。
このやり取りの後から、父の生活が乱れました。
酒浸りになり、風俗店に通いつめ、キャバクラ嬢に入れあげる。
そうすればきっと、母は貴方様の元へ向かい助けを求めるはず。


「そんな父の狡さを母は分かっていたようです。貴方様の元へは行かず、パート先を増やして生活費を稼いでいました。けどそれが、ますます父を意固地にさせてしまって、遊びが派手になっていきました」

「借金が出来、牧野は更にパート先を増やしたってトコか」

「はい。身を粉にして働き、生活費を稼ぎながら借金も少しずつ返済していたようです。でもそんなの、焼け石に水でした」

「稼いだ金より使う金の方が多い。違うか?」

「ええ、その通りです」


だから母は、思いもしない方法でお金を稼ぎました。
海外の貧しい国ではよくある話だそうです。
想像つきますか?
そうです、臓器売買です。
無論、日本では違法行為にあたります。
ですが、裏ルートがあるんでしょうね。
母は伝手を頼り、道明寺財閥の御曹司の元婚約者だという付加価値をつけ、自分の臓器を高く売りました。


「腎臓と左目を売り、父の借金を完済しました。ですが、その時の違法手術で視神経を傷付けたのか、母の視力が低下しました。今では、ぼんやり見える程度の視力しかありません」

「っ!!」

「そんな母を見限った父は、勝手に離婚届を提出し、愛人と一緒に姿をくらませました」

「・・・る」

「えっ?」

「許さねぇ。必ず見つけ出して制裁を加えてやる。牧野を傷付け苦しませるヤツは、絶対に許さん。地獄のような苦しみを与え続けてやる」

「あ、あの・・・!?」

「・・・君のお母さん、入院したままなのか?」

「え?」

「入院してるのか?」

「あ、いえ。今は私の住むアパートで一緒に暮らしてます」


若い頃から働き詰めで、その無理が祟ったんでしょう。
母の体はあちこちガタがきていて、寝たきりの状態が続いています。
入院させようとしても、頑なに拒否します。
お金のかかる事はするな。
可愛い娘にそんな事はさせたくないし、してもらいたくない・・・と、その一点張りで。
だから貴方様に母を説得してもらいたく、こうして恥を忍んで会いに来ました。


「母から聞きました。貴方様との間に子供が出来たら男の子にはヒカル、女の子にはサチと名付けたいんだという、他愛ない話をした事があると」

「ああ。だから最初、君の名前を耳にした時は驚いたよ」

「だと思いました。だから最初に、決して貴方様の娘ではないと前置きした上で、母の現状をお伝えしたんです」


貴方様のご都合やご家庭の事情も考えず、自分勝手なお願いをしている事は、重々承知しています。
それでも私は、母を助けたい。救いたい。
本当に愛してやまない人に会わせてあげて、生きる気力を与えたい。
そうすれば、元気になろうと病院にも通うだろうし、入院もしてくれるだろうから。

ですからどうかお願いします。
一度だけでいいんです。
母に会って貰えないでしょうか。
母の心を動かせるのは、貴方様だけなんです。
重ねてどうか、お願い致します。

母が愛する美作社長。



〈あとがき〉

限りなく、蔵入り部屋行きに近い作品ですね。
何とも後味が悪く、胸糞悪い話です。
どんな精神状態で書いたんだよ。
色々と大丈夫か!?
と、自分で自分にツッコミを入れたくなるくらい、病んだ話ですね。

この後あきらは、マッハの勢いで嫁と離婚し、つくしの元へと駆けつけます。
そして、いつの間にやら内縁関係に。
あきらもつくしも、穏やかな日々を過ごします。
当然ながら、つくしの元旦那にキツい仕置きをしますが、その事はつくしに悟られないよう配慮します。


相合傘(あきつく)

2020-08-08 11:53:23 | 短篇(花より男子)
雨の降る日は嫌いだった。
だって、辛くて悲しくて苦しかった出来事を、思い出してしまうから。
でも、今は───

「今日は、鎌倉にあるレストランに行ってみないか?」

「鎌倉のレストラン?」

「ああ。雨の日に来店して食事をすると、10%割引になるんだってよ」

「わぁ!」

「つくし、好きだよな?割引」

「もちろん大好き!」

「よし!じゃ、行くか」

「うん!ありがとう、あきらさん」

いつだって貴方が傍にいるから。
だから私は、雨が降っていても平気。
憂鬱な気持ちにはならないの。
それに、貴方に告白された日も、初デートの日も、初お泊まりの日も、全て雨の日だったでしょ。
だから私は、雨が降っていても大丈夫。

そう言えば、告白された日はしとしと雨が降っていたっけ。
相合傘をしながら帰路に着く途中、さりげなく『好きだ』と言われたのを、昨日の事のように覚えている。

初デートの日は、これまた雨が降っていた。
相合傘をしながら博物館に行き、貴方の博識ぶりに驚かされたのを、今でも覚えている。

初お泊まりの日も、当然の如く雨が降っていた。
相合傘をしながら竹林に囲まれた高級旅館を訪れ、湯上りした貴方の色気に胸を高鳴らせた事を、鮮明に覚えている。


「ニヤニヤしてどうした?」

「へっ?べ、別にニヤニヤなんて・・・」

「思い出し笑いか?スケベだなぁ、つくしは」

「ちょっ!?スケベって何よ!?」

「違うのか?」

「あきらさんと一緒にしないでよ」

「それは残念。つくしもスケベなら、あ~んな事やこ~んな事も試せるのになぁ。ベッドの中で」

「あきらさん!」

「あははは」


雨の日の嫌な思い出を、貴方が塗り替えてくれた。
だから私は、雨の日が嫌いじゃない。
むしろ、雨の日が好きになった。


「食事の後、行きたい店が湘南にあるんだけど、寄り道していいか?」

「うん。私は構わないけど」

「よかった。つくしと一緒に訪れないと、意味がないからな」

「意味がない?」

「ああ。本人不在で指輪なんて買えないだろ?」

「・・・えっ?指輪って」

「ペアリングだよ。取り敢えず今は、それで我慢だな」

「我慢?」

「結婚指輪は、俺の抱えてる仕事が落ち着いてから買いに行こう」

「結婚指輪!?」

「何を驚いてんだ?」

「だ、だって・・・何の前触れもなく急に・・・それに、その・・・」

「プロポーズもされてないのに、それをすっ飛ばして結婚指輪だなんて~ってか?」

「ゔっ!」

「図星か。何だ、つくしはロマンティックなプロポーズを夢見てたのか。そういうのは苦手だと思ってたよ。まだまだ勉強不足だな、俺は」

「ち、違───」

「じゃ、つくしの退社時間に合わせて、真っ赤な薔薇の花束を持って勤務先まで迎えに行くよ。で、退社する人達の前でプロポーズするか!?」

「げっ!」

「それとも、夜景の綺麗なホテルのラウンジで、カクテルの中に結婚指輪を入れてプロポーズするか!?」

「どっちもイヤぁ~!」

「ぷっ!」

「あ、私をからかったのね!?あきらさんのバカ!もう知らない」

「悪い悪い。今日の食事はご馳走するから、機嫌直してくれよ」

「・・・デザートは?」

「そりゃ勿論、ご馳走してもらいます。つくしちゃんっていう甘いデザートを」

「ばっ、バカー!意味が違うっての!」

「あははは」


今ではもう、雨が降っても悲しくない。
苦しくも辛くもない。
だって、いつでも貴方が寄り添ってくれるから。
笑顔と元気と、生きる活力を与えてくれるから。

だから私は、貴方との思い出が沢山詰まった雨の日が大好き。


〈あとがき〉

何を血迷ったか、急に「ベタな恋愛話を書きたい」と思ってしまい、この様な話を書いてしまいました。
突発的に書いた話なので、駄作も駄作です。
ま、突発的に書かなくても、駄作だらけですけどね・・・(泣)


触れたい月 後篇(あきつく)

2020-05-02 21:51:15 | 短篇(花より男子)
一緒に帰ろうなって言ってたけど、そもそも私と美作さん家って逆方向じゃん。
だから一緒になんて帰れないよ。
無理無理。
と、お店の裏口で泣く泣くお断りしたんだけど、

「俺ん家に来いよ。みんなでこの和菓子食おうぜ。心配しなくても、帰りは車で送るから」

「みんな?」

「オヤジがさ、和菓子食いたいって言い出したんだよ。それを聞いたオフクロと妹達も食べたいって言い始めてさ。だったら、牧野がバイトしてる店で買って、牧野も一緒に家で食べればいいんじゃねーかって話になったんだよ」

「本当!?嬉し・・・いやいや、こんな時間帯にお邪魔したら迷惑じゃん」

「こんな時間帯って、まだ夜の7時過ぎだぞ?」

「いや、でも、夜にお邪魔するのは失礼だし」

「俺も俺の家族も、迷惑だとも失礼だとも思ってないから。逆にみんな、牧野が来るのを楽しみに待ってる」

「う、う~ん・・・」

「何だよ。この後、予定でも入ってんのか?」

「予定は入ってないけど、でも・・・」

「じゃあ、問題ないな。さ、行くぞ」

一歩も引く気がないのよね、美作さん。
こんな強引な美作さん、本当に珍しい。
いつもは無理強いなんてしないのに、今日はどうしたんだろ。
何が何でも、美作邸に連れて行くぞって意志が伝わってくる。
本音を言えば、誘われて嬉しかったし着いて行きたいんだけど、そうはいかない事情がこちらにもありまして。

いくら抗菌シートを弁当箱の中に入れてても、さすがにこれ以上放置するのはマズイでしょ。
気温も低く寒いとは言え、お弁当のおかずが傷んじゃう。
いくら行き場のないお弁当でも、捨てるのは忍びないし勿体ない。
てなワケで、寄り道してる場合じゃないんだな。
早くボロアパートに帰って、高級食材で作ったお弁当を食べないと。

「折角のお誘いなんだけど、今日はちょっと無理かなぁ~」

「この後の予定がないのに、何で無理なんだよ」

「えっと、その、ゆ、夕飯作らないといけないし、明日受講する講義の予習をしないといけないから」

「夕飯なら俺ん家で食えばいいだろ。それと、明日は日曜で大学やってないぞ?」

「ぎえ~!」

バカバカバカ!私のバカ!
明日が日曜だって事、うっかり忘れてたわ。
こんなの、明らかに嘘だってばれちゃうじゃない。
現にほら。
胡乱(うろん)な目で私を射ぬいてくるし、美作さん。
絶対に何か疑ってるよ。

「嘘を吐いてまで来たくないのか?俺ん家に」

「いや、そう言う訳じゃないんだけど・・・」

「頑なに拒否するのは、牧野が手にしてる紙袋が要因?」

「うおっ!」

「なるほど。その紙袋を渡したいヤツがいるんだな」

ああ、いるさ!
美作あきらって名のヤツに!
と、言えたならどれほど楽か。
けど言えない。
まだ玉砕したくないから。
もう少しだけ、夢を見ていたいから。
だからまだ言わない。
貴方が好きなんですって。
なんて、ポエムチックな事を胸の内で呟いてる場合じゃなかった。
取り敢えず今は、美作さんに怪しまれず不快な思いをさせずに、このままお引き取り願わないと。

「美作さんのお誘いは非常に魅力的で嬉しいんだけど、今日はちょっと。明日じゃダメかな?」

「逆に問う。何で今日はダメなんだ?予定ないって言ってたのに」

「それは・・・ですね、その、何と申しましょうか」

「予定、ないんだよな?」

「ないっていうか、何と言うか・・・」

「どっちなんだ?」

「ある様な、ない様な・・・」

「ハッキリしねぇな」

だって、予定と言える様なもんでもないし。
寒い部屋で好きな人の為に作ったお弁当を、作り手本人が一人虚しく食べるって、予定と言えるの?
言える訳ないじゃん!恥ずかしい。
しかも、ご当人を目の前にしてさ。
なんて心の中でやさぐれる私を他所に、美作さんの追及は続く。

「まどろっこしいからズバリ聞くぞ。その紙袋、バレンタイン用のチョコだろ。誰に渡すつもりなんだ?」

「ほえっ?」

「すっとぼけても無駄だ。この後、誰に会って渡すんだ?」

「誰にって・・・」

「類か?」

「へっ!?」

「そうか。類に渡すんだな、そのチョコを。やっぱり牧野は、類の事が好きだったのか」

ちょっと待てー!
何でそんな突拍子もない事を言い出すの!?
何でここで花沢類が出てくるの。
花沢類は好きだけど、美作さんに対する好きとは種類が全然違うわ!
大体さ、この紙袋の中身はチョコじゃないっつーの。
美作さんへの想いを込めて作った、牧野つくし特製弁当だっての。
変な妄想して、とてつもない方向に暴走するのは止めてくれる!?

「あのね、花沢類の事は確かに好きだけど、それは───」

「認めるんだな。類が好きだって」

「いや、だからそれは───」

「思った以上にダメージ喰らうもんだな。牧野から直接『類が好き』って聞くのは」

ちーがーうーっ!
美作さんの想像する「好き」と、私が言うところの「好き」は全く違うから。
勝手に解釈して、変に誤解しないで欲しいんだけど。

「牧野が類を好きなのは分かった」

「だから、それは誤解───」

「でもな、俺にだって意地がある。惚れてる女が類の所に行くって聞いて、黙って見過ごすほどお人好しじゃない」

「・・・えっ?」

「指を咥(くわ)えて黙って見てろって?それは無理だ。類の所に行かせてたまるかよ。阻止してやる」

えっと・・・今、何と?
聞き間違いじゃなければ確か、「惚れてる女」と仰いませんでした?
それって、私の事だと理解して宜しいのかしら。
つまり、既に私達は両想いだという事で宜しいのかしら。
となると、私の手作り弁当を渡しても、受け取ってもらえるのかしら。

お店の裏口からまだ身動き出来ずにいる私達の未来は、今ここから変わる!?
数分後、数秒後には何かが変わる!?

「あ、あのね!?美作さん───」

まずは一歩、私からも踏み出してみよう。
新しい世界への扉に向かって。




〈あとがき〉


最初に考えてたラストとは、違う内容になってしまいました。
中途半端な場面で終了させるのは、Yahoo!ブログ時代からの名物で(?)ございます。