「決めた!私、告白する」
「「「はっ?」」」
「このままじゃ、余計に想いが募って自分が苦しくなる。後にも退けず先にも行けず、八方塞がり状態がずっと続く。だったら、玉砕覚悟で美作さんに当たって砕けろ。そう西門さんに指摘されたから・・・って訳じゃないけど、背中を押してもらったからさ。だから、自分の為にも美作さんに告白する!」
「方向転換しすぎやろ。振り切れすぎや」
「極端すぎるわ」
「1か100しかないの?50はないんか?牧野には」
ノゾヤ、難波、山科が飽きれ顔でそんな事を言うけど、仕方ないじゃん。
これが私の、持って生まれた性格なんだから。
ついウジウジ悩んじゃって、自分の気持ちから逃げる為に関西にある大学に進学しちゃったけど、それじゃあ何の解決にもならないよね。
薄々自分でも気付いてたけど、みんなに指摘され、西門さんに止めを刺されてからやっと向き合えるようになった。
周りに迷惑かけて道明寺と付き合った割に、あっけなく別れて次の恋に走る軽薄な女。
そう思われるのが怖くて、想いが膨らみすぎる前に美作さんから逃げ出してきたけど、これ以上自分を偽るのは限界だ。
だから、正面からぶつかる。
西門さんじゃないけど、当たって砕けろの精神で美作さんに告白するよ。
「告白するって勇んでるけど、いつ美作氏に告白するん?」
「あきら君にどうやって告白するの?」
「何て言うて告白するつもりやの?」
矢継ぎ早にノゾヤ、難波、山科からそんな事を言われたけど、まだ具体的な日や場所なんて決めてる訳ないじゃん。
だって、美作さんに告白するって決意したのは、ついさっきなんだから。
「無計画かいな。無鉄砲すぎるやろ」
「牧野らしいと言えば、牧野らしいけど」
「東京に行って告白するの?」
「東京に行ったらお金かかるじゃん。無理無理」
「「「じゃあ、どうするの」」」
「手紙をね、出そうと思うんだ」
「「「手紙!?」」」
「うん。美作さんと約束したんだよね。暑中見舞いとバースデーカードと年賀状を必ず出すって。だから、暑中見舞いの代わりに手紙を出そうと思って」
ほら、手紙の方が素直な気持ちを綴れるでしょ?
自分自身に向き合えるって言うかさ。
面と向かって言えない事も、書面でなら伝えられる。
それに、メールや電話で気持ちを伝えるよりも、情緒溢れてない?
なんて言う私に対し、三人の反応は芳(かんば)しくない。
「美作氏って、美作商事のボンボンなんやろ?そのボンボンに女性からの手紙をお手伝いさんとか執事とかが、おいそれと渡すかね!?慎重になるんちゃう?仮にボンボンに渡すとしても、検閲してからなんちゃうか?」
「検閲!?勝手に手紙の封を開けて読んじゃうの!?そんなの絶対イヤ!」
「可能性はなきにしもあらずだよね。だからさ、こっちに遊びに来る夢子おばさんと双子ちゃん達に託したら?それなら確実に本人の手に渡るでしょ」
「そっか・・・うん、そうだね!ナイスアイデア、難波」
「逆に握り潰されるんやない?息子が牧野の毒牙にかからない様にって」
「「「山科!」」」
毒舌にも程があるでしょ。
毒牙って何よ!?毒牙って。わたしゃ、性悪女か。
まあ、私みたいな庶民というか貧民が、美作さんの周りをウロチョロしてたら目障りだろうけどさ。
でも、告白するくらいは許されるでしょ。
何も、嫁にしてくれとか彼女にしてくれとか言ってるワケじゃないんだから。
ただ、好きだって気持ちを打ち明けるだけなら、美作さんのお母さんも見逃してくれると思うんだよね。
そう話す私に、三人は呆気にとられた表情を浮かべた。
「ど、どうしたの!?三人とも」
「どうしたのって・・・それはこっちのセリフや。なあ!?難波」
「うん。あきら君と付き合いたいから告白するんじゃないの?あきら君と彼氏彼女の関係になりたいんじゃないの!?」
「好きですって告白して終わり?思いきり牧野の独りよがりやないの。告白された方も困惑するやろ」
と、まあ散々な言われようで。
正直言うと、美作さんに私の想いが受け入れられるなんて考えた事ないんだよね。
だってさ、美作さんの好きなタイプと真逆じゃん?私って。
童顔だし幼児体型だし子供っぽいし。
多分、美作さんにとって私は妹みたいな存在だと思うんだよね。
そんな人に対して「彼女にして」とか「彼氏になって」なんて、言えるはずないでしょ。
おまけに、道明寺の元彼女っていう肩書きまで背負ってるし。
「山科の言う通り、独りよがりで自分勝手だと思う。ただ告白するだけなんて」
「「「牧野・・・」」」
「美作さんに迷惑かけるだけかもしれない。告白した事によって、友達関係が崩れるかもしれない。それでも、私が美作さんを好きなんだって本人に伝えたい。知ってもらいたい。爪痕を残したい。完全なるエゴだけどね」
「せやな。完全なるエゴやな」
「自覚してるんだ」
「ドSやね。ま、せいぜい気張りなはれ」
三人の言葉にさすがの私も多少は凹む・・・はずもなく、余計に燃えてきた。
何が何でも美作さんに告白するぞって。
一度腹を括れば、後は前進するのみ。
踏ん切りつくまで時間がかかるけど、私の性格上、踏ん切りをつけてしまえば後は早い。
やらずに後悔より、やって後悔の方が自分自身にケジメをつけられるもん。
だから、
「フラれたら慰めてね」
「分かった。ウチの実家の本堂で、残念会を開こうや。多少騒いでも大丈夫や」
「それいいね。ノゾヤの実家で、ノゾヤの叔父さんも加えて一緒に騒ごう」
「心配しなくても、私達が牧野の骨を拾ってあげるから。未練なく成仏してな?」
「「「山科!」」」
あーでもない、こーでもないと言いながら、美作さんに告白する宣言をした私は、自分の思いの丈を手紙にしたためる事を改めて決意した。
そして、夢子おば様と双子ちゃん達に会うという難波に恋文を託した私は、審判が下されるのを待つだけの身になった・・・はずだったのに、難波からの電話で事態は急変した。
「どうしたの?難波。夢子おば様と双子ちゃん達を、新幹線の駅まで迎えに行ってる時間じゃない?」
『ききき緊急事態発生!』
「はっ?」
『来た!来ちゃったよ!』
「ちょっ・・・落ち着いて、難波。どうしたのよ」
『落ち着ける訳ないでしょ!来ちゃったのよ』
「来ちゃった?夢子おば様と双子ちゃん達の事でしょ?そんなの知ってるってば。何を興奮してんのよ」
『違う違う!本人が来ちゃった』
「本人?」
『そう!夢子おばさんじゃなくて、あきら君が双子ちゃん達と来たのよ!』
「・・・」
『・・・』
「えー!?」
『ウルサイ!牧野』
「ちょっ、なっ、ええっ!?美作さんが双子ちゃん達を連れて来たの!?何でよ!?」
『そんなの知らないわよ。まだ声をかける前の状態なんだから』
「そんな・・・」
『あと・・・何て名前だったかな・・・そうそう!ノゾヤの実家のお寺で会ったエロ門さん!その人も一緒にいるよ』
「何ですって!?」
予想外の出来事に、頭が全く働かない。
え~っと、夢子おば様じゃなく美作さんが来て、美作さんへの恋文を難波が持っていて、エロ門・・・西門さんも一緒にいる。
で、私は・・・どうすればいいの!?
って言うか、面白がってついて来たでしょ!エロ門め!
〈あとがき〉
くどい様ですが、あきつく話です(笑)
やっと、少しずつ動き始めましたね。
つくしはどう出るのでしょうか。