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ろうげつ

花より男子&有閑倶楽部の二次小説ブログ。CP :あきつく、魅悠メイン。そういった類いが苦手な方はご退室願います。

紫土に染まる 参

2020-12-11 09:21:44 | 紫土に染まる(あきつく)
紫土に染まりし血の花びらに、俺の心は沸き上がる。
幼き頃より想いを寄せ、生涯の伴侶にと秘かに願う女の花を、自分のこの手で散らした。

必死に俺にしがみつき、痛みをこらえつつ受け入れ、羞(は)じらいを見せるその姿に、愛しさが募っていく。
愛とは何たるか、詳しく知らぬ身なれど、今のこの感情は間違いなく愛だと断言できる。

そんな幸せな気持ちで迎えた15回目の誕生日を、俺は一生忘れない。



紫土に染まる(あきつく) 参



深夜0時、部屋のドアをノックする音が耳に届いた。
遠慮がちなその音に、ノックする人物は女性だろうと当たりをつける。

最近、女性の使用人達から秋波を送られる機会が増えてきた。
多分、俺と関係を持ちたいが為のものだろう。
正直、鬱陶しいし煩わしい。
そんなメスの目をして物欲しそうに見られても、俺は昔から一人の娘(こ)しか眼中にない。
だから、このままやり過ごそうとしたのだが、

「あーちゃん、つくしです。寝ちゃってるのかな?」

再度、遠慮がちなノックの音と共に、俺の心を掴んで放さない娘の声が聞こえてきた。


「えっ?つくしか!?」

「あ、うん。遅くにゴメンね。話があるんだけど、中に入れてもらえる?」

「あ、ああ、分かった。すぐ開ける」

面食らいながらも素早くベッドから起き上がった俺は、そのままの勢いでドアに駆け寄り、そして急いでドアノブを回した。

「どうしたんだ!?こんな時間に」

「あ、うん。話があって・・・ここじゃ誰かの目に触れるから、中に入れてもらえると助かるかな」

「あ、そうだな。ワリィ」

そう指摘され慌てて周囲を見渡した俺は、誰もいない事を確認してから、つくしを部屋の中へと招き入れた。

「俺の部屋をつくしが訪ねるなんて珍しいな。ここ数年、近寄りもしなかっただろ。何かあったのか?」

「あ、うん。何かあったと言うか、お願いと言うか何と言うか・・・」

「つくし?」

頬を赤く染め、体を揺らしソワソワしながら視線をさ迷わせるその姿は、挙動不審としか言い様がない。
そんなつくしの様子に何かあるなと踏んだ俺は、急かしたりせず向こうから言い出すのをじっと待つ事にした。

すると突然、何を思ったのか自分の両頬をパシリと叩いたつくしは、意を決したかの様な表情をのぞかせると、そこから一気にまくし立ててきた。


「あーちゃんに『おめでとう』を誰よりも早く言いたくて来たの。あーちゃん、お誕生日おめでとう。大好きなあーちゃんのお誕生日をお祝いさせて下さい。とは言っても、高いプレゼントは用意出来ないから、その・・・あの、わわわ私のバージンを差し上げます。と言うか、貰って下さい。ハジメテの相手は大好きな人がいいから・・・あ、で、でも、あーちゃんには迷惑な話だったかな!?私はあーちゃんが大好きでも、あーちゃんはそうとは限らないし。想いが一方通行なら、こんな誕生日プレゼントなんて迷惑千万よね。誕生日プレゼントって言うより罰ゲーム的な感じだし、押し付けちゃってるし。だけど、これしか思いつかなくて・・・だから、その・・・私のハジメテを貰って下さい」

「・・・」

「い、いりませんか?牧野つくしのハジメテ」

「・・・」

「な、何か言ってよ、あーちゃん。居たたまれないんだけど」

「・・・・・・は?」

いや、ワリィ。
脳が完全に停止しちまって。
だってよ、マシンガントークをぶっぱなしてくるから、考えるヒマがねぇよ。
つうかさ、どのタイミングで息継ぎしてたんだ!?
すげぇな、つくし。
いや、そうじゃなくて、それよりも何だっけ?
あ~、そうそう、バージンがどうのこうの・・・って・・・何だって?

何だって!?


「つくし・・・確認していくぞ」

「う、うん」

「まず、俺の誕生日を誰よりも早く祝いたいって言ったな?」

「うん」

「安心しろ。つくしが誰よりも早く『おめでとう』を言ってくれた」

「本当!?よかった~」

「次に、大好きなあーちゃんって言ってたけど、その『大好き』の意味合いは何だ?家族愛的なものなのか、それとも一人の男として好きなのか。どっちだ?」

「えっと・・・一人の男としてです。あーちゃんは私の初恋の人で、今も好き・・・です」

このつくしの告白に、俺の体は歓喜に震えた。
まさか、つくしが俺に想いを寄せてくれてたなんて、夢にも思わなかったんだ。
時を待って告白するつもりだったのに、何だか格好悪いな。
何て呑気な事を言ってる場合じゃない。
自分からもハッキリ言っておかないと、鈍感なつくしには伝わらない。
それに思い至った俺は、つくしの肩に手を乗せながら自分の気持ちを伝えた。

「俺もつくしが好きだ。ずっとずっと昔から好きで、俺の嫁さんにするんだって心に決めてた。時期がきたらつくしに告白して、それから親父に認めてもらう頭でいたんだ」

「嫁さんって・・・あーちゃん!?」

「えっと・・・プロポーズの予告宣告ってヤツ!?告白はつくしに先越されたからさ、プロポーズは俺からしないと格好つかねぇじゃん」

本番のプロポーズはもう少し先になるけど、その時はもっとスマートにするから。
今はこれで勘弁な?
そう口にした俺を、つくしは何とも言えない表情で見つめた。
戸惑いと言うか困惑と言うか、喜びとは対極している感情と言うか。
兎にも角にも、俺のプロポーズを歓迎していない事だけは分かった。

「懸念材料でもあるのか?嬉しそうじゃねーな」

「う、嬉しい・・・けど」

「けど何だ?将来の事なんて分からない。俺が他の女に心変わりするかもって思ってんのか?そんなのは絶対ない。他の事柄に関しては絶対なんて言い切れないけど、つくしに対する想いだけは絶対だと言い切れる。だから心配すんな」

春から高等部に進学しようが、大学部に進学しようが、社会人になろうが、俺にはつくししか目に入らないし、つくししかいらない。
そう付け加えて言ったものの、やはりつくしの顔色は変わらない。曇ったままだ。

まあ、こればっかりは言葉だけでは信用出来ない部分もあるだろうから、態度でも示していかないとな。
そう自分に言い聞かせた俺は、先を続けた。

「牧野つくしのハジメテをいりませんかって言ったな?」

「うっ!・・・うん」

「いるかいらないかの二択なら、迷わず『いる』って返答する。惚れた女のハジメテを他の野郎に譲ってやるほど、俺はお人好しじゃない」

「ほほほ惚れた女!?」

「今更、動揺すんなっての。もっと過激な発言したんだぞ?つくしは」

「ぐっ!」

「それと、つくしは物じゃない。だから、自分をプレゼントするなんて二度と言うなよ!?」

「・・・はい」

「じゃ、善は急げと言うし!?つくしのハジメテを美味しく頂戴しますかね」

「あ、あーちゃん!」


俺にとって、至福の時間が始まる。


久々の再会

2020-12-07 14:25:53 | 雑記
皆様、ご機嫌いかがでしょうか?
日々、お変わりなく過ごされてますか?
病に打ち勝てるよう、モリモリ食べて体力つけていきましょうね。

さてさて。

結構前の話になりますが、Yahoo!ブログ「たゆたふ」の時から何かと励まし、応援してくれる読者さんがおりまして(かなり長いお付き合いとなるトモダチです)、その方と久々の再会を果たして参りました。

こちらが恐縮するほどの「もてなし」をして下さり、本当に申し訳なかったです。
ま、遠慮せず「もてなし」を受けましたが(笑)
昼、夕ご飯をご馳走になり、お土産も下さり、お土産代もさりげなく支払って下さったり・・・て、とんでもなく図々しいな、私。

こちらからのお土産が霞んでしまうほどの接待を受け、申し訳なくも有り難い気持ちでいっぱいです。
このご恩は、作品で返そうと心に決めた次第であります。

コロナの症状も出る事なく、元気いっぱいな日々を過ごしておりますので、頃合いを見て記事にしました。
その頃合いが、第3波の真っ只中になってしまいましたが・・・。

やはり、話題はコロナが中心になりますね。
今回会うにあたり、フェイスシールドも持参しました。念の為。

席に座る時も、真向かいじゃなくずらして座り、黙々と食べ、食事の最中に話さなくちゃならない時は手で口を覆い小声で。
食事終わったら、さっさと会計済ませて店を出る。
と、いう感じでした。
再会したのは昼前から夕方(夜になる前)までなので、もちろん酒など飲んでおりません。

ずっと気を張りつめるのもシンドイし、どうしても中だるみしちゃいますよね。
でも、最低限の対策だけは心掛けたいものです。

読者さんは喘息持ちで、吸入器を持ち歩いてると仰ってました。
喘息の咳だけど、周囲はそうは見てくれないので神経を使うそうです。
単なる咳もしにくいですよね。
私もノドが弱いので、空咳する事があるんですけど、確かに神経を使います。
早く終息しますように・・・無力な私には神頼みしか出来ません。

コロナで重たい話になりましたが皆様、お互いにこの冬を無事に乗りきっていきましょうね。
それプラス、私はサボリ癖を何とか治さねば・・・。

私のプライベートなど知りたくもないでしょうが、敢えて書いちゃいました。
ではではこの辺で。
長々と失礼致しました。



紫土に染まる 弐

2020-12-05 16:39:14 | 紫土に染まる(あきつく)
※話の内容に、流血や暴力に関する表現が出て参ります。苦手な方は回避願います。






紫土に染まりし絨毯の上で、のたうち回る仇の姿を目の当たりにした時、私の世界は急転した。
仇が倒れた周辺は血が点々とし、部屋の調度品が割れてガラスが飛び散っていた。
仇の右腕と右足の腱は切れ、顎の骨は砕けていた。

そんな日に迎えた14回目の年の瀬を、私は死ぬまで忘れない。


紫土に染まる 弐


美作家の当主には代々、二人の守役が付く。
一人は表舞台で活躍する守役で、現在は私の伯父がその任務にあたっている。
そしてもう一人、裏舞台で暗躍する守役がいる。
その守役は通称『シノブ』と呼ばれ、表舞台には一切姿を見せず淡々と汚れ仕事をこなす。
つまり、裏の仕事を厭(いと)わない・・・と、いう事だ。

当主の身にふりかかる火の粉を払い、危険を察知し回避する。
時として手を血で染め、常に頭を働かし五感を研ぎ澄ませ、どんな状況でも堪え忍ばなければならない。
何が何でも、主を守り抜くという強い意志を持って。
そんな『シノブ』が今、私の目の前にいる。
現当主である、あーちゃんのお父様と一緒に。


「はじめまして、お嬢ちゃん。俺の存在は知ってるかい?」

「はい。父から少しだけ聞いた事があります」

「そうか、マキさんから聞いてたか」

「・・・はい」

「マキさん・・・お父さんの件は残念だったな」

「・・・っ!」

「許せないだろう!?犯人を」

「あ・・・の・・・」

「犯人が目の前に現れたらどうする?」

「!?」

「目には目を、歯には歯をの精神でいくか?それとも、罪を憎んで人は憎まずの精神でいくか?お嬢ちゃんならどっちを選ぶかな」

「わ・・・たしは・・・」

「シノブ、つくしを追い詰めないでくれ」

「へぃへぃ。ご主人様はお優しいことで」

でも、優しさだけじゃ世の中生きていけないのよねと、おどけた口調でそんな事を言う『シノブ』の姿に、私の目は妙に惹き付けられた。

恐ろしいほどに整った相貌、全てを見透かさんが如く澄んだ瞳、そして、均整のとれた体躯。
聡明で冷静沈着そうに見える一方、儚げで危うい雰囲気も身にまとっている。
頼りがいがありそうで、それでいて母性本能をくすぐられるような、そんな相反する『シノブ』の危険な匂いに酔いしれそうになった。
けれど───

「当主には必ず一人の『シノブ』が付く。その『シノブ』は当主のみを守り、当主だけの命令に従う。そして、安易に人前に姿を見せない。そんな『シノブ』が私の目の前にいるのは、何か意味があるんですね?旦那様」

「よく分かったね、つくし」

「もしかして・・・私の家族を殺した犯人が見つかったんですか?」

「その通りだよ」

詳しくは『シノブ』から報告させる。
そう言い置いてから部屋の隅にある椅子に腰掛けた旦那様は、そこから静観するという立場を示した。
そんな旦那様をチラリと見、軽く息を吐いた『シノブ』は、私へと視線を移すと犯人について話し始めた。

「マキさん達を殺った実行犯はプロだ。だから既に、俺が始末しておいた」

「始末?」

「この世から抹殺したって意味だ。分かる?お嬢ちゃん」

「!?は・・・い」

「オーケー。じゃ、話を進めよう。実行犯がいるという事は、計画犯もいるという事だ。それは分かるな?」

「はい」

「その計画犯を取っ捕まえて、ココに連れてきた。ソイツらの口から直接聞くか?マキさんを殺った理由とやらを」

「・・・ソイツ『ら』って事は、計画犯は二人以上なんですか?」

「ほぅ・・・よく気付いたな。お嬢ちゃんのお察し通り、計画犯は二人だ」

どうするよ!?
会わないなら、こちらで適当に処分した後、マキさん殺害の経緯をお嬢ちゃんに伝える。
だが、直接会うって言うのなら、俺とご主人様はココで静観する。
さあ、決めな。

そう『シノブ』に促された私は、迷う事なく計画犯と対峙すると返答した。
すると、それを合図に『シノブ』は部屋の扉を開け、何処からともなく猿ぐつわされた計画犯二人を乱暴にしょっぴいてきた。

一人は見た事のないオジサンで、もう一人は美作邸に仕える執事。
確か、父親の部下にあたる人だ。
そんな人達が何で、私の家族を抹殺したの!?
何が目的なの!?理由は何!?
そう私が問うた後、『シノブ』が二人の猿ぐつわを外してくれた。
すると、

「あきら君には将来、ワシの孫娘を娶らせる予定だった。それなのにあきら君は、お前でないとダメだと言いよった。正気の沙汰とは思えん。どうせ、お前があきら君をたぶらかしたんだろう!薄汚い女め」

「執事の娘を娶ると言うのなら、私の娘でもいいはずだ。だから、私は牧野家を排除し、牧野さんのポジションを奪おうと考えた。そちらの御仁と協力してね。まさか、一番消えて欲しかった君が、生き残るとは思いもしなかったけども」

「お前は疫病神だ。お前のせいで家族は死んだんだ。ワシのせいではない!成るべくして成ったんだ」

「君の存在が、皆を狂わせた」


二人の男のあまりにも身勝手な物言いに、奥深く眠っていた夜叉が暴れだす。

壊シテシマエ

と。
そして気が付いた時には、護身用として持ち歩いていたメリケンサックで二人の顎を砕き、護身用ナイフで手足の腱を切り裂いていた。
致命傷を与えず、苦痛のみを与えて。


この瞬間、私の手は紫土に染まった。