ろうげつ

花より男子&有閑倶楽部の二次小説ブログ。CP :あきつく、魅悠メイン。そういった類いが苦手な方はご退室願います。

カテゴリ「黒部屋」について

2020-04-30 19:32:59 | 雑記
まだ作品は置いてませんが、当ブログには黒部屋なるカテゴリがあります。
これは、Yahoo!ブログ「たゆたふ」に設置していたカテゴリで、その名の通り「黒い話」ばかりを詰め込んだ部屋になります。
過去の黒部屋の主な住人(?)は、花沢さん家の類くんでした。
それはもう、黒部屋で大活躍(笑)
他所様での類くんは、爽やかで優しくて・・・といった感じのお話が多いだろうと思いますが、当方では全く逆のブラック類くんが登場してました。

引っ越し先の「ろうげつ」ブログで、ブラック類を登場させるかはまだ考えてません。
仮にブラック類の話を書いたとして、風変わりな作品になるのは必至です。
よって、類に対するイメージを壊したくない方にはオススメ出来ません。

さて。
前置きが長くなりましたが、黒部屋を設置した事をお知らせしました。
更にパスワードもつけましたので、併せてお知らせします。

黒部屋へのパスワードは「9696」です。

念を押しますが、作品は現段階で1つもありません。
追々、書いていけたらいいなと思ってます。

日々の生活で疲れも溜まりがちですが、どうか皆様、くれぐれもお気をつけて。




触れたい月 前篇(あきつく)

2020-04-29 11:11:00 | 短篇(花より男子)
好きな男性に、女性からチョコレートを渡すという日本独特のイベント。
そう。その名もバレンタインデー。
誰にでも平等に与えられる権利だ。
最近では「友チョコ」だの「自分へのご褒美チョコ」だの、色々な名目で色々な種類のチョコレートが販売されてるけど、やっぱりバレンタインデーと言えば「本命チョコ」でしょう。

「で、手作りされたんですか?」

「うん。ほら、甘いものは得意じゃないって前に言ってたじゃない?だから、お弁当を作ったんだ」

「手作りのお弁当・・・」

「あ、心配しなくても、それなりに値の張る食材を買って作ったから大丈夫。ま、アンタ達みたいなセレブからしたら、大した値段じゃないかもしんないけどさ」

それでも私からしたら、清水寺の舞台から飛び降りるくらいの値段だったっつーの。
普段行かないような高級スーパーなんかに行っちゃってさ。
あーでもない、こーでもないと、一人でブツクサ言いながら財布とにらめっこしてさ。
っとに、いつもあんな高い食材買ってんの!?
あんなの毎回買ってたら、2日で破産するっちゅーの。
などと、文句垂れる私に対し、桜子は憐れむような瞳をこちらに向けながら口を開いた。

「先輩。残念ながらそのお弁当、無駄になってしまいますね」

「へっ?」

「だって、常日頃から言ってたじゃないですか。F4の皆さんが」

「何を?」

「人様の手作りの品物は、どんなものでも受け取らないって。先輩、忘れたんですか?」

「あ゙ーっ!しまったぁ~!」

不覚!
そうだったそうだった。
完全に失念してたよ。
F4は絶対に、手作りの品物は受け取らないって事を。
交際相手からの品物なら受け取るけど、赤の他人からの手作りの物は何があろうと受け取らないって。

「・・・無理だよね。受け取ってもらえないよね」

「先輩の想い人は、潔癖症のきらいがありますしね。難しいんじゃありません?」

「うが~!」

じゃあ何かい!?
好きな人の為に作った弁当を、自分で食べろってか。
暗くて狭いアパートで。
一人ぼっちで。

「そんな虚しくて侘しいバレンタインデー、いやぁ~!」

「何でしたら、私が先輩の手作り弁当を食べて差し上げますわよ?」

「もっと虚しくなるからいやぁ~!」

何が悲しゅうて、好きな人の為に一生懸命作った弁当を、後輩の桜子に食べてもらわにゃならんのか。
だったら自分一人で食べるわ。
ボロくて寒いアパートで。
などと、一人やさぐれてた私に、桜子が止めの一発を喰らわしてきた。

「そもそも、イベントがある日にあの人達は大学に来ませんよ?」

「んがっ!」

「特に、チャラい若宗匠とマダムキラーのお二人は」

「あ゙あ゙っ!」

「家で大人しくしてるんじゃありません?それか、4人で集まって何処か海外に避難されてるとか」

「・・・何にせよ、絶望的な展開じゃん」

家にいようと海外にいようと、この弁当が私のお腹に収まる事は決定的じゃないのよ。
どうすんのよ、コレ。
色々な意味で、行き場がないじゃんか。
なんて、ふて腐れても仕方ない。
受け取ってもらえない事に、変わりはないんだから。
ウジウジ悩んでても、事態は好転しないんだからさ。
だからもう、開き直って前を向くしかないじゃんね。

「・・・バイト行ってくる」

「はぁ!?こんな日にバイト入れてたんですか!?」

「弁当の食材費分は、稼がないとね」

「逞(たくま)しいですわね」

「それが私の取り柄たがら」

はぁ。
落ち込んでる場合じゃないけど、落ち込みたくもなるわ。
折角、勇気を出して気持ちを伝えようとしたのにさ。

「ま、受け取ってもらえない上に『ゴメン』ってフラれるよりはマシかぁ」

「随分と後ろ向きな発言ですね」

「最悪の事態を回避した発言って言ってほしいわね」

「物は言いようですね、先輩」

「ふんっ!じゃ、バイト行ってくるね」

「お気をつけて」

こうなりゃヤケだ。
バイト先の和菓子屋さんで、団子や饅頭を売りに売りまくってやる。



〈あとがき〉

季節感を無視して、今頃バレンタインデーの話を書きました。
後篇はどんな展開になるのやら。
ま、予想がつく流れになるかとは思いますが(笑)



慕情残火(あきつく) 4

2020-04-27 22:26:54 | 慕情残火(あきつく)
「私の実家、お寺やねん。静かな田舎にあるんやけど、よかったら泊まりに来ぃへん?」

ノゾヤのこの発言により、私達仲良し四人組の夏休み計画が決まった。
正に、渡りに舟。
金銭的に余裕がない私と難波、そして、比較的余裕のあるノゾヤと山科の間で少し揉めてたんだよね。
旅先をどこにするか、予算をどうするのかって。
だから、ノゾヤのこの申し出は本当にありがたかった。
だって、宿泊費はタダだし、交通費もそれほどかからないし。
おまけに、ノゾヤの実家であるお寺は、京都に隣接してると言うし。
きっと、それなりの名刹に違いない。
京都やその周辺地域には、観光名所となっている寺院が沢山あるのだから。
多分、ノゾヤの実家もそうなんだろう。
そう勝手に思い込み、期待で胸を膨らませながらノゾヤの実家にお邪魔したんだけども───

「・・・えっと、ここ?ノゾヤの実家であるお寺って」

「良く言えば、風光明媚な場所・・・なんだけどね」

「おどろおどろしい雰囲気やな。竹林に囲まれた廃寺みたい。聞こえてくるのはカエルや虫の鳴き声と、幽霊のすすり泣く声くらいじゃない?」

「ここが実家や、牧野。自然の多い所に行きたい言うてたやん、難波。廃寺ちゃう!単なる貧乏寺や、山科」

いや、その、まあ・・・うん。
ちょっと想像してたのと違っただけで、決して「幽霊の一匹か二匹、住み着いてそうだな」なんて、思ってても口にはしないよ。
少なくとも私は・・・だけど。


「さ、早う中に入ろ。夕食(ゆうげ)の用意も出来てる頃やから」

「「「賛成!」」」

お寺の外観に尻込みしてたけど、そこはやっぱり色気より食い気が先行する私達。
待ってましたとばかりにノゾヤの言葉に食いついた私達は、先導する彼女に続いて棟門と呼ばれる門をくぐり、足取り軽く敷地内へとお邪魔した。
そして、美味しい精進料理を食し、お風呂を頂き、布団を敷いて一息ついたところで、ここに来た時から疑問に思っている事をノゾヤに訊ねた。

「失礼な言い方だけどさ、正直言ってノゾヤの実家、それなりに古いじゃん」

「せやな。檀家さんも二軒だけの貧乏寺では、修繕費を賄うのにも苦労するしな」

「けどさ、ノゾヤが大学近くで一人暮らししてるマンションって、家賃高そうじゃん」

「まあ、実際高いと思うで?」

「どうやってお金を捻出してんの!?」

本当に失礼な話だけど、あのマンションに住めるほどの財力がノゾヤにあるとは到底思えないのよね。
それなのに何故、オートロック完備の2LDKの高級マンションに住めるのかしら。
そんな不躾な事を訊ねる私に、ノゾヤは顔色一つ変えずに答えてくれた。

「私が5歳の時、オカンが病死したんよ。ほんで、オカンの実家であるこのお寺に引き取られたんや。で、オカンの弟であり私の叔父にあたるここの住職が、我が子同様に育ててくれたって訳や」

「何かゴメン。悪い事を聞いちゃって」

「気にせんでええよ。で、話の続きやけど、何で私があのマンションで生活出来るかと言うと───」

「まさかの援交?」

「ちゃうわ!山科のアホンダラ」

湿っぽい空気になったのを嫌ったのか、山科がチャチャを入れたんだけど、今は黙っててくれる?
話が先に進まないからさ。
そんな意味合いを含む視線で山科を制した私は、ノゾヤに話の先を促した。

「私の養育費やその他諸々の費用は、オトンが全部、面倒をみてくれてるんや」

「オトンって・・・お父さんの事?」

「せやで」

「何もかもをお父さんが?」

「せやな」

じゃあ、お父さんがお金持ちで色々と支援してくれてるんだねと、明け透けな事を言う私に対し、ノゾヤは苦笑いを浮かべながら一つ頷いた。

「様々な事情があって母方の実家に身を寄せてるけど、それでも何かとオトンとは顔を合わせてるで!?オトンと叔父さんが、親友同士の間柄っていうのもあるけどな」

「へぇ~。じゃあ、それなりにお父さんとは会ってるんだ。ノゾヤ、可愛がられてるね」

「暑苦しいくらいにな」

さも迷惑そうな顔をしてそんな事を言うけど、本当は嬉しいんだろうなというのは、声のトーンで分かる。
だから、そんな優しそうなお父さんに一度会ってみたいなと口にしたんだけど、まさかそのお父さんに早々会う事になろうとは夢にも思わなかった。
しかも、予想外の人物と一緒に。

それは、思いもかけぬ事だった。
ノゾヤからお父さんの話を聞いた翌日の朝、お勤めをし、朝食(あさげ)を頂き、さあ掃除をするぞと気合いを入れて竹箒を手にしたその瞬間、

「あれ?ひょっとして君は、頌子(しょうこ)ちゃんのお友達かな?」

「・・・えっ?もしかして牧野か!?」

聞きなれない男性の声と、確実に何処かで聞いた事のある声が、私の背後から聞こえてきた。
何だか嫌な予感がする。
そこはかとなく、マズイ展開になりそうな気がする。
出来る事なら振り返らず、このまま逃げ去りたい。
振り返ってはダメだと、頭の中で警鐘が鳴り響く。
しかし、ここで無視をするのは人としてどうかと思うし、仏様の前でそんな無礼な真似が出来る訳ない。
だから私は覚悟を決め、恐る恐る後ろを振り返った。
すると、目に飛び込んできたのは、

「やっぱり牧野じゃねーか。作務衣なんか着て何してんだよ!?ここで」

「げぇー!にににに西門さん!?」

仏の道とは対極的な、相変わらずチャラい雰囲気を身にまとう西門さんの姿だった。

「なっ、どっ、うえっ!?」

「おいおい、日本語になってねーぞ」

「どどどどーして西門さんがここに!?」

「そりゃ、こっちのセリフだっての」

「なななな何でいるのー!!」

頭の中は真っ白。
軽いパニック。
だってそうでしょ!?
あり得ない人物があり得ない場所にいるんだから。
何がどうして、どうなったらこうなったのか、皆目分からず茫然とするしかない私に、救いの手を差し伸べてくれる人が現れた。
何て事はない、私達をこのお寺に招待した張本人であるノゾヤだ。

「大きい声出して、何を騒いどんねん」

「あ、ノゾヤ!」

「何かあったん───」

「頌子ちゃん!パパだよ~会いたかったよ~」

「えっ!オトン!?」

「よっ!しょこチャン、久しぶり」

「ええっ!?総くんまで!?」

「オトン!?総くん!?」

な、ど、どういう事なの。
何がおこってるの。
えっ?この渋い男性が、ノゾヤのお父さんなの!?
で、総くんって・・・何?
ノゾヤと西門さん、顔見知りなの!?
という声なき声を上げた私に気付いたのか、ノゾヤが気まずそうな顔で答えてくれた。

「このオッチャンが私のオトンで、隣にいる総くんは私のいとこやねん」

「・・・いとこ?」

「うん。オトンの弟の息子が、総くんなんや。せやから、私とはいとこの関係になるんや」

つまり、ノゾヤのお父さんは西門姓で、あの西門流の血縁者という事になり、となると当然、ノゾヤにも西門の血が流れていて───

「お嬢さん、大丈夫かい!?」

「おい、牧野!?」

「あ。白目むいて意識飛ばしよった」

私の頭は、完全にパンクした。



〈あとがき〉

あきつく話のはずなのに、あきらは登場せず。
変わりに総ちゃんが登場しちゃいました。

美作家と難波家が親戚。
西門家と乃疏屋家が親戚。

さあ、どうする!?つくし(笑)


ドンジリ 司篇(総+つく)

2020-04-26 09:36:40 | 短篇(花より男子)
「どうせまた、究極の選択でしょ?」

「うっ!」

「バイトの時間が迫ってるから、早くお題を出してよ」

「お題って・・・お前なぁ」

「するの?しないの?どっち!」

「しますします」

「じゃあ、とっとと始めてよ」

「へーへー」

「で?今回は何なの?」

「嫁姑の仲がすこぶる良好、旦那様も優しくいつも一緒で笑顔が絶えない西門家か、嫁姑の仲は険悪、旦那様も粗野で気遣い一つ出来ない多忙な道明寺家。お前ならどちらの家に嫁ぐ!?」

「う~ん」

「さあさあ、どっちだ!」

「道明寺家かなぁ」

「何でだよ!」

「仕事で行き詰まって旦那に相談したくても、多忙のあまりすれ違いばかり。何の相談も出来ない。そんな中、努力して頑張って自力で解決して、業績上げて結果を出したら、認めてくれそうじゃない?鉄の女って」

「・・・」

「例え最初は嫁姑の仲が険悪でも、仕事で成果上げたら多少は、こちらを見る目が変わりそうな気がするんだよね。鉄の女ってさ、実力主義的なところがありそうじゃん!?頑張って結果出したら出しただけ、心を軟化させてくれると思うんだよね」

「・・・」

「何よ!?その顔は。例によって、また不満でもあるの?」

「あるに決まってんじゃねーか!」

「何でよ」

「あのカーチャンだぞ!?旦那は珍獣だぞ!?家庭は寒々しいんだぞ!?それに対し西門家は、嫁姑関係もバッチリで旦那も優しく、何かあればフォローする。道明寺家とは雲泥の差じゃねーか」

「・・・あのさ、一つ忘れてない?」

「はっ?」

「本人の努力だけでは、どうにもならない問題が西門家にある事を」

「どうにもならない問題?」

「うん。それは、家柄、血筋、伝統。この三点セット」

「三点セット?」

「そう。結婚は本人達だけじゃなく、家と家との結びつきでもあるの。分かるでしょ?」

「まあな」

「何百年と続く名家なら尚更、家格を保つ事や血を繋ぐ事に必死でしょ。そんな所にポッと出の人間が嫁げる訳ないじゃない。そもそも、一門衆や後援会の人達が許さないわよ。私が西門サイドの人間でも許さないわ」

「・・・」

「それにさ、伝統を継承するって大変じゃない。すごい重責を担うじゃない。そんな旦那様を支える気骨は私にはないわ。無理無理」

「ぐっ!」

「日本の伝統文化は勿論好きよ!?次の世に繋げてもらいたいと思ってる。でもそれは第三者的な見解であって、実際に自分が中に入ってその一旦を担うとなると話は別。私には荷が重い」

「・・・」

「てな訳で、道明寺家を選びます」

「・・・結婚するならあきら、付き合うなら類、嫁ぐなら道明寺家。じゃあ、俺は何の対象になるんだよ!?」

「う~ん。単なる先輩後輩?」

「はっ?」

「だってさ、西門さんと仲良くしてるだけで刺されそうだもん。西門さんが付き合ってる数多の女性達からさ。刃傷沙汰は絶対イヤ!トラブルに巻き込まれるのも絶対イヤ!だから───」

「だから?」

「必要以上に話しかけてこないでね。じゃ、行くね」

「・・・」



〈あとがき〉

拙宅での総ちゃんの扱いは、こんなもんです(笑)
短篇を書くと、どうしても総ちゃんがこんな扱いになってしまうんですよね。
書きやすいと言うか、何と言うか(笑)
このシリーズは、これにて完結です。
ありがとうございました。



 

六花の軌跡【魅悠】 4

2020-04-25 19:07:00 | 六花の軌跡【魅悠】
あれだけ真っ直ぐに、ただひたすら魅録を恋ふ悠理に、何の不満があると言うのか。
何故、悠理を裏切る様な真似をしましたの!?
何故、面やつれさせるほど悠理を苦しめ、悲しませ、追い詰める様な真似をしましたの!?
悠理の想いが重かった?
負担だった?
だから、他の女性と浮気したとでも言うのか。
しかも、昔お付き合いされていた女性がお相手だなんて、悠理にとってこれ以上の屈辱はありませんわ。
何という酷(むご)い事をなさいますのと気色ばむ私に対し、魅録は涼しげな表情でさらりと聞き流している。
そんな姿が余計に私の怒りを煽るとも知らずに。
いいえ、魅録の事ですもの。
きっと、分かった上で敢えて、そんな態度を示しているのだろう。
そう思うと更に、怒りがこみ上げてくる。

許せない。
あんなひたむきな悠理を傷つけ、平然としている魅録が許せない。
誰が何と言おうと、私は容赦しない。
だから私は、もっと罵ってやろうと思い言葉を発しようとしたのだけど、それを既(すんで)の差で魅録に止められてしまった。

「勘違いするな。女とホテルに行ったのは事実だが、浮気したとは言っていない」

「何を仰いますの!ホテルのフロントでルームキーを受け取った後、お二人がエレベーターに乗った場面を悠理は見てますのよ!?」

「だから、それがどうして浮気に繋がる?」

「・・・まさかとは思いますけど、ルームキーを受け取りはしたが部屋には入らず、最上階にあるレストランに向かっただなんて見苦しい言い訳、なさいませんわよね?」

「なるほど。そういう解釈も出来るな」

「魅録!ふざけないで下さいな」

どこまで私をおちょくれば、気が済みますの。
往生際が悪くてよ!?魅録。
これ以上、白々しい嘘は吐かないで下さいな。
そう口にする私をチラリと見やった魅録は、軽く溜息を吐いてから言葉を放った。

「守秘義務があるから、話せる範囲も限られてくる。それでもいいなら話すが!?」

「勿論、うかがいますわ」

こういう物言いをするという事は、お仕事絡みの話とみて間違いなさそうですわね。
そう胸の内で呟いた私は、早く話を聞かせて下さいなと言わんばかりに先を促した。

「俺がどの部署に所属し、どんな事件を扱い、何の任務を遂行しているのかは、色々と支障を来すから言えない。悠理ですら、俺が何をしているのか知らないんだ。ただ、警察庁から警視庁へ出向している事だけは伝えてある」

警察キャリアとして警察庁に入庁した事までは私も存じておりましたけど、まさか警視庁に出向しているとは夢にも思いませんでしたわ。
と、思ったままを述べた私に、魅録はふっと表情を和らげながら話を続けた。

「国際指名手配犯が、東京のホテルに潜伏してたんだよ。で、潜入捜査の為にホテルに行った。アメリカのとある機関に所属する、昔付き合ってた女と一緒にな」

「・・・アメリカのとある機関?」

「ワリィがこれ以上、詳しい事は言えねーよ」

ええ、それは分かっております。
特殊なお仕事ですもの。
おいそれと話せる訳がありませんものね。
ですが、私がひっかかった所は仕事内容ではなく、何故、日本国籍を持つその女性が、アメリカのとある機関で働けるのかという事です。
日本の警察と連携捜査するくらいですもの。
その女性が所属する組織も、それなりに大きいとみて間違いないはず。
そんな組織で、外国籍である日本人女性が働けるものなのかしら。
という私の疑問に対し、魅録はあっさりと答えてくれた。

「昔付き合ってた女、父親がアメリカ人で母親が日本人のハーフなんだ。アメリカ移住した際、国籍をむこうにしたんだってよ。だからアイツは、今じゃ立派なアメリカ人だ」

「そういう事でしたの」

「ちなみに、アメリカ人男性と結婚して子供もいるぜ?今、一緒に来日してるって言うから挨拶程度はしておいたんだけどよ、目のやり場に困るくらい仲が良いんだぜ?」

「まぁ!」

結婚して子供もいるですって!?
まさか、そんな展開の話になるだなんて、予想だにしませんでしたわ。
昔お付き合いされていた方が、結婚して子供も授かっていただなんて。
おまけに、夫婦仲も良さそうだと言うし。
となると、今度は余計な事が頭をよぎってしまう。
その事実を知った際、魅録はどう思われたのか・・・と。
後悔の念が生じたのか、それとも───

「・・・魅録。不躾ながら、一つうかがってもよろしくて?」

「何だ?」

「その女性と別れた理由は何ですの?」

「何故、そんな事を聞きたがる?」

「それは・・・その・・・」

「悠理が気にしてるって言うのなら、本人の前でその質問に答えるさ」

やはり、見抜いてましたのね。
悠理が魅録の過去に囚(とら)われ、身動き出来ない事に。
さすが魅録ですわ。

「では、もう一つ。これだけは確認させて下さいな」

「何をだ?」

「その女性に対し、未練はありませんの?」

「未練があったら俺の性格上、アメリカまで追いかけてるよ。中途半端なマネはしねぇ」

「だと思いましたわ」

「ちなみになんだが、潜入捜査の為に昔付き合ってた女とホテルに行ったが、部屋には俺達を含め捜査員が6人いた。信じられないって言うなら、部下に証言させるが!?」

「いえ、結構ですわ」

「そうか。なら、さっさと悠理のところに案内してくれ。早く顔が見たい」

「まっ!」

こうも堂々と言われたら、恥ずかしさを通り越してむしろ、清々しいくらいですわ。
一点の曇りもなく、愚直なまでの眼差しでこちらを見やる魅録に一つ頷いた私は、悠理が休んでいる部屋へ、静静と足を向けた。