ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

何でもかんでもエクセルで作るな!

2017年03月26日 | 情報・通信システム

パソコンソフトの基本といってもいいものに、オフィスソフトがあります。しかしその本来の使い方ができず、何でもかんでもエクセルで作ってしまうという人、組織があります。これは利用者のリテラシもさることながら、オフィスソフトの本来の活用方法を、よく広められなかった開発側、販売側にも原因があるように思うのです。


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あなたの周囲に、パソコンで資料などを作る際、何でもかんでもエクセルで作ってしまう人っていないでしょうか。
本人は結構、エクセルの豊富な機能を使いこなして悦に入っているのですが、共同作業で使用する資料づくりという意味においては、少々迷惑でもあります。

「エクセル」というのは、米国マイクロソフト社が開発した表計算ソフトです。基本的にはパソコン向けのもので、ワープロソフトの「ワード」をはじめ、他の複数のソフトと共にまとめたオフィス・スイート製品「Micorosoft Office」を構成する物のひとつです。
そのため「エクセル」といってしまうと、特定企業の特定製品を指していることになるのですが、事実上マイクロソフト社製のオフィス製品が、多くの家庭や職場で標準となっているため、ここでは同社製品名を使うことにします。

さて、エクセルは大変多機能なソフト(以下「アプリケーション」)です。
あらかじめマス目が切ってあり、そこに高度な計算機能を持たせることができます。そして表を基にしたグラフも簡単にできてしまいます。また、よほど大量のデータを扱ったり高度な利用をしない限り、簡単なデータベースのようなこともやってのけます。さらにワープロのように、好きな場所に文や画像を配置することもできますし、複数のスプレッドシートによって、文書のページ構成のような体裁をとることも可能です。
つまり、「エクセルさえ使えれば、ほかは要らない」と考えてしまう人が出てきてもおかしくないほど多機能なのです。

しかし、ここが落とし穴というか「エクセル絶対主義者」が生まれてしまう原因かもしれません。
そもそもオフィス製品というものは、それぞれの使用目的が想定されたアプリケーションをまとめ、一般的なオフィス業務、事務作業向けに販売されているものです。そして個々のアプリケーションを連携して、チームによる共同作業や組織業務を効率化するものです。
この「個々のアプリケーションの連携」こそがオフィス・スイートのキモなのであって、特定のオフィス製品をとことん使いこなして何にでも応用してしまおうという考え方は、邪道とまでは言えないにしても、本来想定された使い方ではないのです。


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そもそも、いくつもあるオフィス製品それぞれが、どういうふうに「使用されること」を想定して開発されているか、端的に説明できるでしょうか。

Word(ワード):
紙に印刷する文書を作成したり、「大・中・小項目」といった構造的な文章を作成する(アウトライン編集)

Excel(エクセル):
表形式の電子シートで多種多様な計算を行う。電子帳簿と言い換えても過言ではない

PowerPoint(パワーポイント)
プロジェクター等を使用して大勢の人の前で何かを説明するときのスライドを作る

Access(アクセス)
一定の規則でまとめられた大量のデータを保存、加工、抽出する。ただしその規模は1台のパソコンで扱うレベル

Publisher(パブリッシャー)
はがき、張り紙、ちょっとした看板など、多様な印刷物をデザインし作成する

OneNote(ワンノート)
多機能なメモ帳。文字や画像、音声までも、バインダー感覚の画面に放り込んでおいて、整理・再利用する


確かに各アプリケーションは機能が豊富であるため、たとえばワードで(簡単な)表計算を行ったり、エクセルでちょっとした手順書のような文書を作成することも可能です。
しかし、このように主要ではない機能を主要機能として使ってしまうことは、本来のオフィス製品の使い方ではないのです。


 ◆

たとえば、何かの手順書を作るような場面を考えてみます。
ここで考えなければならないのは、「文書」とは一定の構造や流れといった、文を紡(つむ)いでいく上での規則があるのだということです。
すなわち、タイトルがあり、大見出しや中見出しなどがあり、本文があり、注釈があったりするということです。図や写真を適切な位置に挿入するということもあるでしょう。
また話の前後関係や展開、つまり流れというものも大切で、どういった順序で文章を進めていくかということや、中項目であるべき事柄が大項目に上がってしまうようなことの無いよう、文章のかたまりごとの「重み」を揃えて構成しなければ、人に読んでもらうための文章とはなりません。

であれば、文章を編集するという作業こそに焦点を当てた、使いやすいアプリケーションであることが求められます。話の流れを考えてすぐに入れ替えてみたり、大項目や中項目を差し替えてみたり、あるいは文章の配置を変更しても、関連する図がついて回るように場所を変えるといったようなことも必要です。

しかしエクセルで作る場合は、そうはいきません。そもそも上記で述べたような文章編集の考え方自体が存在しません。画面上であれ印刷した紙面上であれ、かなり見づらい「文の羅列」になってしまいます。
セルのサイズなどを細かく調整したり、セル内の文字位置を揃えるのにスペースなどを使って必死に調整してみても、それは単に見た目を揃えているだけであり、文章としての論理的な構造などは一切考慮されていない状態です。そのため修正しようとすれば、おそろしく長い時間がかかり、文章全体の構成を検討することも困難となり、とても現実的ではありません。読む人にとっても、自分の中で整理整頓しながら理解を進めることが難しく、結局は肝心の内容がきちんと伝わらないものになってしまいます。
経験から申し上げて、エクセルを使ってある程度長い文書を作成しようとする人の文書作成力、構成力は、かなり稚拙である場合が少なくありません。そもそも人に読ませる文章はどう作るべきか、といったレベルで理解ができていない場合がほとんどです。


 ◆

特にエクセルの場合は、「エクセルだけで何でもできる」といったような書籍が出版されていることもあり、とにかく最初にセルの幅と高さを調整してしまって、「まずは方眼紙のような状態を作りましょう」、ということを推奨していたりするのでタチが悪いとも言えます。表計算ソフトのスプレッドシートは、決してレイアウト用グリッドなどではありません。
こういった書籍の中には「本来の Excel の使い方ではありませんが・・・」と注記しているものもありますが、職場のような他の人と共同して作業を行うシーンでは、その「文書」の修正や編集といった再利用がほぼ 100% 不可能となり、迷惑なことこの上ありません。仮にこれが組織レベルで常態化しているようであれば、組織としての事務効率は著しく下がっているはずです。つまり見えない人件費です。
もちろん、雇用創出を第一に考えている企業であれば、二度手間三度手間をやったり、意味不明な文章の読解に、有能な社員が時間を費やすといったことも許されるのかもしれません。

エクセルだけで何でも作れちゃう!と信じ込んでいる人は、家庭レベルやサークル活動レベルならまだしも、企業組織内においては本当のところ、「人件費、一般管理費を押し上げている非効率な事務員でしかないかも」、というところに思いをいたしていただきたい今日この頃なのであります。


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