公衆トイレ、お店のトイレ、そして勤務先のトイレ。
あなたは座る前に、便座を拭きますか?
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一般的に言って日常使用するトイレは、自宅のトイレ、職場のトイレ、レストランなどのお店や商業ビルなどのトイレ、そして駅や公園などの公衆トイレ、というところでしょうか。
洋式トイレの場合、女性は必ず、男性も場合によって、便座に自分のお尻を乗せるという事態に立ち向かわなければなりません。自宅のトイレならまだしも、職場のトイレをはじめとして、身内でない人と共用することになる便座。他人が口をつけた湯呑やコップをそのまま利用するのとは、またひと味違った感触があるものです。
さて、たとえば職場のトイレ、お店や商業ビルなどのトイレで座るとき、あなたは便座を拭きますか?
また、拭くときと拭かない時があるとすれば、その意思決定には何が作用しているのでしょうか?
ただしここでは、目に見えて汚れているような場合は除きます。目に見えて汚れているわけではないのだけれど、拭かずにはいられないその心理を考えてみます。
また拭かないとしても、トイレットペーパーなどを敷いて「間接接触」を試みたり、それ専用の携帯スプレーなどを「持参し」使用することも「拭く」に含めることと考えます。
つまり、誰かが座った後の便座には、そのまま座りたくない、という心理であります。
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一番興味深いのが、職場のトイレ。
職場はほとんどの場合、身内ではない多くの人とトイレを共有しています。しかし身内ではないとはいえ、多くの時間をそばで過ごしている仕事場の同僚であり、全くの他人というわけでもありません。それどころか上司と部下、先輩と後輩、など特殊な距離感があり、「好き嫌い」さえありながらも、そう簡単にその集団から飛び出すわけにもいかないという心理状態の人間集団でもあります。
たとえば自分が個室を使用した直後に別の誰かが入り、ただちに「カラカラカラ」とトイレットペーパーを手繰り寄せる音がして、キコキコ便座を拭く音が聞こえてきたら、どうでしょう。まして個室のタッチ交代の瞬間にチラッと目が合った直後など。
「そんなもんイチイチ気にしてない」という人もいれば、「なんだ、オレのあとは汚ねぇって言いたいのか!」といった気分になる人もいるかもしれません。
逆に、誰かが個室を出てきた直後に自分がそこに入らねばならない場合、直ちに「拭きの儀式」を実施すると、当てつけのようで申し訳ない気分になったりはしないでしょうか。音が出ないようソーッとペーパーを手繰り寄せたり、カバーを上げてペーパーを手繰ったりとか...。
こういった様々な心理的葛藤が交錯する個室の入れ替え現場。きっといろいろなご意見があるのではと思います。
そのトイレの「環境ノイズ」も関係してくるかもしれません。賑やかな子供の声がしたりハンドドライヤーがブンブン音を立てていたりと、一定の騒音があるトイレ。逆に個室が満室であるにもかかわらず、ミョーに静まり返っている状況もあるかも知れません。
さらに男性と女性では少し異なった観点があるかも知れません。
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以前この話を勤務先の女性数人と話していた時、女性たちからは「たいてい急いでいるから、そんなことは気にしていない」つまり、見た目で汚れていない限り、いちいち拭いたりしていない、というのです。
これは正直、私としてはちょっとした驚きでもありました。
いや、もしかしたら男性の方が、こういうことに神経質なのかもしれません。
そういう私は以前、職場のトイレでは「拭かない派」でした。
これは、近代的なオフィスビルの清潔なトイレであったことと、最初に気にせず座って使用し始めていたため、それ以来とくに気にならなかった、ということなのです。
しかし、ハワイ旅行を何度かするうち、そういった状況であっても、拭かずに座ることには抵抗が生まれるようになってきました。
ハワイ、というか欧米のトイレではたいてい、便座の上に敷くための紙シートが、壁に専用のケースに入って設置されています。日本でもたまにそういうところを見かけますが、日本の場合は押すと洗浄剤が出てくるボックスが設置されていて、使用者がトイレットペーパーにそれをとって便座を拭く、というパターンが多いようです。
というわけで、拭くのではなく敷くというのが、職場トイレでの私の行動様式となっています。
まぁこれも、資源のムダではないかという意見が出てきそうですが、スプレー式クリーナーなどを設置・維持するコストに比べれば、まったく経済的です。
それによく考えてみると、一定以上のトイレットペーパーを消費する規模の中で、微々たる節約を論じてみても、その影響はゼロといってもよく、それどころか節約と思っていたミクロの視点が、じつは別の問題を引き起こしていたなんて言うこともあります。
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さて、あなたに質問。
あなたは便座を拭きますか?