高齢の母と暮らしている私にとって、本は通販でなく書店取り寄せが有り難いと考えています。電子書籍ではなく印刷・製本された本に限っての話ですが、私は最近、書店で取り寄せてもらうことにメリットを感じ始めているのです。
一般的に本を書店で購入することのメリットは、「自分で選択肢を狭めてしまわないこと」、すなわち自分が知らなかった本や関連の書籍に出会えたり、その周辺の広がりといったものを知ることができる、ということがあげられます。さらにその分野に詳しい書店員と気軽に話せるようになれば、有用な助言ももらえるということがあります。
もちろん通販サイトにも様々な仕組みが取り入れられてはいますが、本好きの方ならその違いや限界はすでにお感じのはずです。
私の場合、これらの理由に加えて「宅配でない」ということがメリットになっています。
これは、私が在宅していない時に老母が訪問者に対応することがない、という理由からです。
私はふだんから母に、「頼んでもいないのに向こうからやってくる人間には対応するな」と言い聞かせています。拙宅はインターホン越しに訪問者の顔が映るのですが、老母にとってそのつど訪問者を正しく判断・峻別したり、臨機応変に対応したりということは無理があります。
これまでは、配達されると思われる日の前からインターホンのところに
「きょう荷物くる。金不要」
といった張り紙をしていましたが、これも少々面倒ですし、なにより判断力が縮退してきた母には無理があります。
幸い拙宅からバスで出かけられるところに、関東では有名な大手書店があります。ここは在庫量および陳列の方法と入れ替え(すなわち客へのプレゼン力)、書店員の質、検索システム、取り寄せスピード、幼児連れ客への配慮、個人情報の取り扱い等々がバランスよく、特段ほしい本がなくとも普段から立ち寄っています。
確かに、書店にない本を取り寄せるなら最初から通販サイトを利用すればいいわけで、時間と交通費をかけるのはもったいないという考え方も成り立ちます。
しかし、先に述べたような事情があると、せっかく宅配に来てくれていたのに受け取れないという事態も起きます。もちろん宅配ボックスのような環境はありません。
それに、取り寄せてまで読みたい本が届くまでの過程で数日待ってみたり、書店員とのやり取りがあるというのも面白いものです。
さらに「あ、この人こういう分野に関心があるんだ」と書店員に顔や名前を覚えられるようになると、(気のせいかも知れませんが)その分野の書籍の棚に変化が感じられることだってあります。
そんな「反応」をひそかに愉しむというのもあります。
そういえば私が幼いころ(昭和50年前後の日本海側の地方ですが)、近所で薬・化粧品・書籍・文房具・日用品・たばこ・菓子飲料類を扱う小さな個人商店がありました。
小中学生向け月刊誌の年間購読を頼んでおくと、毎月その店のおばさんが家まで配達してくれていました。
このおばさん、店舗では薬や化粧品のアドバイスをしたりとなかなかのゼネラリストで、言うなれば現在のコンビニに「顔の見える」、「地域密着性のある」、「コンシェルジュがいる」ようなものでした。
この話もまた広がりがあるのですが、今日はこの辺で終わりにします。
このおばさんも、常識的に考えてこの世にはいないのだろうなぁとしみじみ考えてしまいます。