先日の記事でご紹介した秋芳洞を見学した日の翌日、「金子みすゞ記念館」へ立ち寄りました。
金子みすゞという名前は知らなくとも、次の詩をテレビで聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。
▽▼▽(ここから引用)▼▽▼
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
『金子みすゞ全集』(JULA 出版局 http://www.jula.co.jp/ )より
△▲△(ここまで引用)▲△▲
3.11の震災の後、各社がテレビコマーシャルを自粛するなか、その時間枠を埋めたのが、公益社団法人 AC ジャパン(旧・公共広告機構)の数種類のコマーシャルでした。そのなかのひとつに、この詩が使われていたのです。
私自身はこの詩を知る前に、「星とたんぽぽ」という詩を、やはりテレビコマーシャルで知りました。やさしい言葉を使いながらも、この世の真理を言い表しているような、なんとも心惹かれるその詩は、私の中の「無意識の意識」とでもいうところに、ゆっくりと沈んでいました。
今回、行き当たりばったりで泊まった旅館(山口県/長門・湯本温泉)の近くで、建物の壁一面を使った、金子みすゞの肖像のモザイク画を見つけ、旅館の仲居さんに聞いてみたことが、記念館を訪れるきっかけでした。
金子みすゞは明治 36 年(1903年)、山口県の仙崎というところに生まれ、大正末期から昭和の初期にかけて活躍した童謡詩人ですが、残念なことに 26 歳の若さで自死しています。当時もある程度の評価は受けていたようですが、昭和 60 年ころから再評価され、テレビ番組などでも取り上げられるようになってきました。
「経済至上主義」、「物質文明」、「バブル」、「破たん」、「経済格差」、「高齢化社会」。
我々日本人が戦後追いかけてきたものは、けっきょくなんだったのだろうか、という疑問が誰の心にも生まれ始めているこの頃、みすゞの詩は、知らずしらずのうちに、私たちの心をとらえ始めていたのかもしれません。
開館間もない時間に見学に入ったのですが、次々とグループや団体のお客さんが入ってきて、みすゞ記念館は大勢の人びとであふれかえるようです。
近所の土産物屋の女性に話を聞くと、
「定年後にのんびりボランティアでやろうと思って店番を始めたんですけどねぇ、あの震災の後のテレビ(コマーシャル)で、急にお客さんが増えちゃって、もう毎日てんてこ舞いですよォ」
と、うれしい悲鳴の笑顔。
最初は団体で訪れた人も、気に入ると必ず一人旅で再度やってくるとのこと。その気持ち、よくわかる気がします。しみじみと、ひとり訪れたくなるところです。
私もひとり、さむい冬に訪れ、漁港の様子などもあわせて、味わってみたいと思っています。
写真にあるような旧家屋の部分のほかに、近代的な展示棟もあり、関係する書籍や記念品なども販売されています。