昨2012年からテレビでオンエアされていると記憶しているのですが、富士フィルムの化粧品「ASTALIFT」のテレビコマーシャルの使用曲が気になっています。なぜ、この曲が気になってしまうのかを考えたとき、私は自分の古い記憶とともに結びついている、古関吉雄作詞のスペイン民謡「追憶」に行き当たったのです。
さらにまた、横溝映画のひとつ「悪魔の手毬唄(1977年4月2日・東宝、市川崑監督、金田一:石坂浩二) 」のワンシーンに流れていた音楽も連想してしまうのです。
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「ASTALIFT」で使われている曲は、イギリスのエレクトロニックミュージックのグループ「(The) Art of Noise」の「Robinson Crusoe」という曲です。
またこの曲は以前、城達也さんの声に代表された人気 FM ラジオ番組「JET STREAM」の金曜日版「Midnight Odyssey」でも使用されていたようです。
ややもの悲しい感じの旋律と、それでいて時空を超越したような安心感、到達感が心にしみてきます。大げさに言えば、なにか人生の真実を表しているかのような気さえしてくるのです。
それで iTunes で探してみたところ、このグループのこの曲だけが突出して購入されているようです。この曲が収録されたアルバムのほかの曲も試聴しましたが、どれもまったく対極に位置するような、いかにもエレクトロニックな感じの曲ばかりでした。
ちなみに、この曲だけが突出して購入されているのは、全世界における iTunes の統計ではなく、アジア地域に限ったものかもしれません。
やはりテレビコマーシャルの影響なのでしょうか。
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さて、この曲を 150 円でダウンロードし、何回か繰り返して聴いていますと、私の中に、ある別の曲が鳴りはじめました。それは古関吉雄作詞のスペイン民謡「追憶」です。
「星影やさしく またたくみ空 仰ぎてさまよい 木陰を行けば / 葉うらのそよぎは 思い出さそいて / すみゆく心に しのばるる昔 / ああなつかし その日」
という歌詞です。
私がこの歌を知っているのは、私が生まれたかどうかの昭和40年ごろ、当時家にあったオープンリール式のテープレコーダーに、兄が歌う「追憶」が吹き込まれていたからです。
決して裕福ではない、というか貧乏な家に、なぜそんな高価な製品があったのかは大変不思議なのですが、幼い私はテープレコーダいじりをしているうちに、何度も兄が歌うこの曲を聴くことになり、その心の深いところに染み込んだのです。
つまり私にとっての「追憶」は、幼いころの記憶を一気に手繰り寄せてしまうようなものなのです。
この歌を知っている方なら、全体的にものさびしい感じでありながら、「葉うらの」の部分で、小さな希望の光を見上げるようにその旋律が変わるのをご存知でしょう。このあたりがたまらなくいい。基本的には全体としてものさびしいのだけれど、それでも小さな幸せや希望を大切に、けなげに進もうとする気持ちが表れているようで、なにかそこに人生というものを見ている気がするのです。
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そして、さらに連想される「悪魔の手毬唄」ですが、録画していた VHS カセットをどこかへしまいこんでしまったため、まだ正確には検証していません。しかし、岸恵子演じる青池リカの「人喰い沼」でのシーンだったと思います。
これら3つの音楽に共通するものは、もの寂しさ、どうしようもない悲しさ、それでもけなげに生きようとする姿勢、そして時空の超越といったところではないか、と考えているところなのです。
今回はものすごく個人的な感覚のお話でありました。
ちょびっとでも共感できる方がいらっしゃいますでしょうか...
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