ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

高齢者よ、まずつかまれ!

2020年03月10日 | 自動車交通

高齢者には高齢者の責任がある。転ばない「努力をする」責任だ。
ここでいう高齢者とは、公共の場所を自力で歩こうとしている高齢者だ。

先日、自宅近くを走る路線バスに乗っていた時のことだ。
座席はだいたいのところ埋まっており、立っている人が10人弱といった、比較的すいている状態だった(コミュニティバスではなく通常のフルサイズのバス)。
そこへ途中のバス停から高齢の女性が二人乗ってきた。二人はバスの後部へと進んだ。しかし最近のバスは低床設計であり、それゆえ後部へ進むには2段ほど段差を上がらねばならない。もちろん若者のようにサッと進めるわけではない。

運転手は、

  1. バスを発車させるということ
  2. どこかにつかまるよう促すこと

この2点を車内アナウンスで言い、これを2回繰り返した。そのうえで十分静かに発進した。
そのとき、まさにガサっという音とともに一人の女性が、段差のところで倒れた。 発進しかけたバスは停車し、ハザードランプを付けて停車。運転手がバスの後部へ様子を見に行った。

これを通常の交通事故とは区別して車内事故という。 バスの運行によってほかの車とぶつかったなどというのではなく、なんらかの原因でバス車内で人が転んだりケガをしたといった場合のことである。
ただ、「これは車内事故である」と手続き的に認定されると、まず第一に乗務員(運転手)の運転に問題がなかったかが問われることになる。事故報告書なる書類が作成され、状況によっては乗務員へのペナルティ、バス事業者へのペナルティが課されることになる。けがの程度がひどければ民事上の問題も起きてくる。もちろんその時のバスの運行にも支障が出るだろう。

さてこの場合、「車内事故」として報告・処理すべきだろうか。
以上の文章だけではなかなか判断できないだろうが、同乗していた私の目からすれば、その高齢者の自己責任である。それどころか路線バスの定時運行に支障を与えていると考える。

転んだ高齢女性は靴が脱げ、膝を床につくような形で転んでしまった。ちなみに女性は認知的な面でハンディがあるようでは全くなかった。
やがて自力で立ち上がり、「(段差を上がるのに)足が上がらなかった」とつぶやいた。すぐそばの乗客も女性が立ち上がれるよう手を差し伸べたり、気遣うように見守っている。 幸いケガらしいケガもないし、そばに寄ってきた運転手を責める様子など(ほかの乗客も含め)まったくなかった。
厳密には、発車の揺れで転んだのか、たまたまそのタイミングに自分自身で転んだのかはわからない。
しかし問題の本質は、「発車間際につかまっていなかった」ということなのだ。

複数のバス事業者で組織するある団体では、スマホに夢中で吊革につかまっていない女子高校生が、急ブレーキで転んでしまうビデオを車内で流している。
公共の場所での若者の行動はよく取り沙汰されるが、高齢者のそれはあまり聞かない。それはおそらく、「弱い者いじめ」の構図で叩かれることを恐れるからだろう。 しかしそれは、高齢者本人にとっても社会にとってもよいことだろうか。

普通に健康な現役世代が転ぶということと、高齢者が転ぶということは大きな違いがある。すなわち、「転倒→骨折→歩行困難→寝たきり」の流れに容易に変わっていくということだ。
「なにをバカな」と思われるかもしれない。 しかし、高齢者の転倒がいかに大変な事態につながっていくかということを、高齢者と付き合うシーンが多い人は知っている。結果として家族や周囲の負担、ひいては社会負担の増加につながっていくのである。
骨折した高齢者はみな一様に、「あんなことで自分が骨折するなんて...」とつぶやくのである。

若者には若者の、高齢者には高齢者の、公共の場所における気づかいや責任といったものがあるのではないか。
自分を高齢者と認め、そのように行動することに抵抗があるのは十分理解できる。しかし、現役だった頃からは厳然として時間は過ぎている。願望や気合いで人間の骨の老化は止められないのだ。
路線バスの運転席にはよく、「まず、止まれ」と書いてある。 交通事故や、それにつながりそうな状況を避けるため、何をするよりも先にバスを完全停止させろ、という安全標語である。
転ばない努力は、高齢者ができる社会貢献のひとつといってもいい。 無理なこと、できないことを言っているのではない。

高齢者よ、まずつかまれ!


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