ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

どの世代にも負けないCAになれ!

2021年02月06日 | 沈思黙考

JALやANAをはじめ客室乗務員たちの多くが、コロナ禍によって別の企業・業種で働かざるを得なくなっている。また幼いころから努力してきた若者たちも、就職試験にチャレンジすることさえかなわずに苦しんでいる。しかしこの先しばらくの期間に体験することはすべて、未来の自分を輝かせるための貴重な土壌になる。今回はCAや、CAを目指している人たちにエールを送りたい。

筆者とCA

本題に入っていく前に少し、筆者とCAのかかわりというか自己紹介的なことを述べさせていただきたい。

筆者は過去十数年にわたって、ハワイ旅行に関する個人取材サイトを運営していた。
広告表示なし、スポンサーなし、もちろん取材先からの饗応・接待など一切なしでやっていた。その代わりといっては何だが、実際に現場で見たこと聞いたことを忖度なく書かせてもらったし、写真もたくさん撮らせていただいた。華やかなワイキキのダークサイド事情を書いたこともある。
「インターネットカフェ」という言葉がまだ新鮮味のある時期だったから、オアフ島でも数少ないスポットを回って実際に通信速度などを計測し、技術的なレポートを公開していた。
外務省を通じて現地の在ホノルル日本国総領事館を取材させてもらったこともあったし、ホノルル空港(現在の正式名称は「ダニエル・K・イノウエ国際空港」)の制限区域には、正式な許可を得て何度も入らせてもらった。
また取材先のチェックを受けてから記事を公開したにもかかわらず、慌てて一部訂正や削除の要請をしてくる有名企業もあったりして、いろいろと考えさせられたり勉強させられたりした。

筆者のハワイ旅行は観光ビザが必要のない3~4泊程度のものがほとんどだったし、いちおう給与所得者として(旅行にもハワイにも関係のない)会社勤めをしていたから、ハワイに長期滞在できるような人とは情報発信の動機やアプローチが異なる。
筆者の場合は基本的に海外旅行初心者、ハワイ初心者、高齢者のハワイ旅行といったところに意識を置いていた。そして観光産業とは距離を置いたハワイの過ごし方を提示していた。

ここ10年近くは家族の介護などもあって海外旅行など縁がなくなってしまったが、渡航回数だけを思い出せば、20回前後になるだろうか。その中で飛行機のことなどもレポートとして書くことが少なくないため、いろんな形でCAの方々にお世話になる。そうすると、何人かのCAとは顔見知りになったりする。
特に米系エアラインなどでは機長や副操縦士も含めCA達とともに記念写真を撮らせてもらったり、ちょっとしたメール交換が続いたこともあった(あくまで社交辞令的だったが)。

CA、客室乗務員について

さて、CAとか客室乗務員と呼ばれるものについて、そもそもの部分から解説しておく。

世間一般に言われているCAとは、Cabin Attendant(きゃびん・あてんだんと)の略で、日本語では客室乗務員と呼ばれる職種である。航空会社によってはFA(Flight Attendant)と呼んだり、かつて存在したノースウェスト航空ではIFSR(In-Flight Service Representative)などと呼んであらたな位置づけをしていた例もある。
ある世代以上の方は、「スチュワーデス」とか「スチュワード(男性)」という言葉もなじみがあるかもしれない(ノースウェスト航空は2010年1月31日にデルタ航空に統合された)。

CAは一般に、旅客機内のやさしい接客係のようなイメージが強いけれども、彼女ら(男性CAも存在する)は接客係である以前に、航空保安要員という重要な使命を帯びている。確かにお客に笑顔を見せたり食事を運んだりすることは旅客航空会社として重要なサービスには違いないけれど、それが第一の任務・使命というわけではない。

そもそも飛行機という金属のかたまりが空を飛ぶということが、感覚的に信じられないと言う人は少なくない。いくら「揚力がどうの」などと説明されたって、生身の人間の感覚としては理解を超えている。

ところで機械工学などの世界には「安全率」という言葉がある。例えばエレベータの場合、600kgが制限重量だとすると、実際はその10倍の6,000kg(6トン)に耐えられる設計となっている。すなわち安全率は10である。しかし航空機のそれはだいたい1.5ほどである。仮に安全率だけを比較するならば、飛行機とはなかなかヤバイ乗り物であることがわかる。

しかしそれゆえ、様々な安全への技術、システム、国際的な取り決め、工夫や配慮などが世界中で研究され積み重ねられ、今日世界中で多くの航空機が、あたりまえのように空を飛び回っている。
つまりCAは航空機の技術的なことや気象のことなども学習しつつ、空の安全という、人類の歴史的な挑戦の最先端に立っているともいえるのだ。

接客・接遇センスは研修や訓練だけでは磨かれない

CAは保安要員であるという話をしたけれど、一般人からすればやはり、飛行機という非日常の空間における優しくて頼りがいのある人である。CAを目指すわけでなくとも、そこから何かを学び取ろうとする人も多い。当然そこには接客・接遇のセンスが求められてくる。

したがって、体当たりの着水時非難誘導など派手な訓練だけでなく(TVや映画の見過ぎか?)、飲食物の適切な提供など地道な努力も欠かせない。フライトごとにメンバーが変わるCA同士や操縦室とのコミュニケーションもあるし、果ては見た目や言葉遣い、立ち居振る舞いに至るまで期待されるのが、(特に日本の航空会社の)CAという職業なのかもしれない。

搭乗客はあたりまえだが、じつにさまざまである。
多くのお客はまぁ「ふつう」の範疇に入るだろうけれど、やはり中にはそうではない人がいる。何らかの事情を抱えている人もいるだろうし、特別な精神状態に置かれている人もいる。なかには不思議な使命感で力いっぱいなお客様や、何かを勘違いされたまま生きているようなお客様もいらっしゃる。
もちろん接客・接遇については、きちんと体系化された教育訓練のプログラムがある。中には劇団員を呼んで、「特殊な状況でお困りのお客様」や「ロクでもない客」を演じさせるなんて話も聞いたことがある。

ただこういった対応のセンスは、ロール・プレイングなどをはじめとした教育訓練だけではとうてい磨くことはできない。それは決して現実の出来事ではないということと、たくさんの異なる状況を「場数」として経験できるわけではないからである。

現実ではないということは当然ながら、緊張感が圧倒的に違う。
訓練で失敗すれば同期生に笑われたりするだけだが、現実の対応を誤れば問題がこじれてしまう恐れもある。なにしろ直面するのはホンモノのお客様であり、どういう態度で出てくるかわからない外部の人間である。中には不可抗力すらカネで何とかなると考えている厄介な人間も(意外に多く)いる。目的地への到着遅れや行先変更などのときは、多くの搭乗客を前に厳しい状況にさらされることになる。

しかしどうしてもCAという職業は、一般社会からは羨望の眼差しで見られがちで、あたかもスーパー・マン(ウーマン)であるかのように過大な期待をも寄せられがちである。
予想できない質問や要望にも対応しなければならない。一人で何人の搭乗客を担当するかは状況によるだろうけれど、客というのは古今東西、身勝手なものである。
ハワイのようなリゾート路線の場合は、ふだん飛行機に乗りなれていない人、乳幼児や子ども連れ、高齢者なども多くなる。特にエコノミークラスではなにかと「わやくちゃ」になりがちで、自分はCAなのか牛丼屋の店員なのかわからなくなることもあるとか。

しかし、こういった接客・接遇のセンスといったものは、「こうすればこうなる」といったメソッド的なものでもないし、「ここを確認すれば任務完了」といった種類のものでもない。ひたすら経験を積み重ね自分の中で思考を繰り返すことが必要な、言語化しにくい領域である。

いま現在CAであったりそれを目指している人で、それこそ牛丼の提供や弁当配達、医療機関の窓口事務などで働くことを余儀なくされている人は多い。そうしてそこで接するお客様は、あなたを有名航空会社のCAだとか、それを目指している人間だなどとは思っていない。あくまで店員、配達員、窓口のお姉さんとしか見ていない。
そこでは屈辱的な思いをすることもあるかもしれない。なかには「あまり頭がよくないからそんな仕事しか出来ないんだろ?」という態度の人間に接することだってあるだろう(筆者は直接そんな言葉を浴びせられた経験がある)。

だが、決してクサってしまってはいけない。
まったく異なる業種、職種で人に接するからこそ見えてくるものが必ずある。そしてそれらは、業種や職種を超えて通用する確かな人間力となっていくはずだ。
もしあなたを見下すような客や同僚がいても、「あぁ、この人は私の肥やしになってくれる人だ。だから悪臭がヒドイ(態度が悪い)のだ」とでも整理して、フン張ろう。

コロナ禍で、ごく普通のCA(へ)の道を歩むことが出来ず、忸怩たる思いがあるのは多くの人たちが知っている。その人たちもいつか、まわり道を辿って立派に成長したあなたに会いたいと思っているはずだ。
確かに、この先いつ新規採用や現場復帰があるのかは見通せない。しかし、専門分野をまっすぐに歩んで来ている「人財」であるあなたを、この先の世界が放っておくはずがない。「その時」のためにも、今を大切に歩んでいただきたい。
そしてもしCAとして復帰、あるいは新規採用されたなら、大きな回り道を経験した世代の客室乗務員として、きっと他の先輩方とは一味違うホスピタリティを提供できるに違いない。そしてその使命があるはずだ。

いま、もしかしたら「挫折」という言葉がのしかかっているかもしれない。
しかし、挫折を挫折として終わらせるか、「成長」に転換させるかはやはり自分次第なのだ。
「釈迦に説法」だけれども、飛行機は向かい風が無ければ上昇できない。逆風の中でこそあなたは上昇できるのだ。

【ふろく】ミニ・クイズ

(問題) 「飛行中、緊急着陸の必要が発生しました。Step 1 では何を確認しますか?」

(答え) 1. シートベルトの着用 2. 座席の背の正位置 3. テーブルの正位置とロック


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 政府・行政でもなく、営利企... | トップ | 五輪組織委はドラッカーが見... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。