こんにちは、やや半次郎です。
早速、やや半次郎の世界をお楽しみ下さい。
『数取屋、ツヨシ』
「3、2、5、9、8、7・・・。」
「ツヨシくん、さっきから何数えてるの?」
「悪魔が起こした事故の数さ。」
「ひぇ~?」
「悪魔が起こした事故には、ある特徴があるんだ。」
「特徴って何なの?」
「今は言えない。アイスクリームが解けそうだからな。」
「じゃあ聞かないわ。」
「5、3、6、8・・・。」
「今度は何を数えてるの?」
「ここいらの放射線の線量さ。」
「えっ、数えるものじゃなくて、測るものでしょ?」
「その通り。だけど俺は測定器を持っていない。だから数えてる。」
「へぇ~、ツヨシくんには見えるの? 何かコツがあるのね。」
「今は言えない。数学の問題が解けそうだからな。」
「じゃあ聞かないわ。」
「2、2、1・・・。」
「今度は何の数?」
「北朝鮮がこの間打ち上げた人工衛星と言う名のミサイルの数さ。」
「えっ、1機じゃないの?」
「スターマインのようにたくさん打ち上げているんだ。全部失敗だけど。」
「へぇ~、ツヨシくんには見えるの?」
「今は言えない。社会の・・・。」
「問題が解けそうなのね?」
「いや、社会の問題はみんなで解決するものなんだ。国民新党の亀井代表が離党したところで何も解決しないんだ。」
「頼もしいわ。」
「・・・」
「もう数えないの?」
「ああ。人間には数えない自由もあるんだ。」
「分かるわ。数えてばかりいては疲れるもの。」
「数えたくなったときには数えるし、数えたくないときには数えない。それが人間なんだ。」
「・・・」
「まだ数えないの?」
「数えない時間も自由に決めていいんだ。」
「周りの人たちはあんなに数えてるのに?」
「いいか、隣の奴らが数えていても、僕らは数える必要はない。そして、最も重要なことは、たとえ数えた結果が隣の奴らと一致しなくても、うろたえて数え直す必要はないんだ。それは経理の仕事だ。」
「5、5、7、7・・・。」
「数えてくれたのね、ツヨシくん。嬉しくて涙が出そうよ。今度は一体何の数?」
「空中の酸素分子の数だ。」
「凄いわ~、ツヨシくん! ツヨシくんには酸素分子が見えるのね。」
「あぁ、生まれてくる前から見えていたさ。」
「素敵よ。ツヨシくんが数えているものって、いつも重要なものばかりなんだもの。」
「あぁ。」
「素敵だわ~。ところで、数を数えてどうなるの?」
「・・・ゥ・・・」
「素敵よ、ツヨシくん。数え間違ったらどうなるの? 誰にも分からない訳だし、平気に思えるけど・・・。」
「・・・ウ・・・」
「そんな意味で訊いてるんじゃないのよ。ただ、数なんか数えなくても生きて行けるように思えて・・・。」
「・・・ウッ・・・」
「ツヨシくん! どうしたの! ツヨシく~ん!」
・・・・・・・・・・・・
予期しない言葉に対する免疫が出来ていなかった為、ツヨシくんは死んだ。
彼の数えた数だけが、彼の亡骸の周りを走馬灯のように廻るのだった。
彼が生きていたら、きっと何回転するか数えたことだろう。
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