言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

ひと夏の絵画

2020-07-15 20:19:23 | 言葉




人工の額縁の向こう
絶えずうつろい続けている
一幅の夏の絵画


まばたきふたつ前のこと

雲はまだ千切れずに
塊のまま 歩いていた
どこへ どこまで ゆくのだろう
(彼らは自由か、それとも不自由か?)


まばたきひとつ前のこと

誰かが色を足しているのだろうか
青い空は更に青を重ね、重ね、重ね、重ねて
いよいよ黒味を帯びている
(夏色よ はじめまして)


同じ空をどれだけの人が見ている
同じ色で空は頭上にあるのか
同じ時の中に共存している
違う姿をしたいのちの声を聴く


見下ろした地上に描かれた
数多のいのちのきらめきを
額縁の外から 太陽が見ている

まばたきも忘れて―




わたしというもの

2020-07-15 00:01:07 | 言葉



道に転がる
錆びついたコーヒーの空き缶
あれは わたし

誰のものでもなくなった
宛もなく宙を舞う白いビニール袋
たぶん あれも わたし

茶色く日焼けして
誰にも読まれる事のない孤独な本
きっと それも わたし

底がひび割れて
コーヒーを留めておけないマグカップ
おそらく これも わたし


 予定を記入されない
 余白だらけのまっさらなカレンダー

 メモリ不足で
 次のページを開けないスマートフォン

 電池が減って
 五時四十分と五時四十一分をさまよう時計の針

 車や人に
 どこかへと運ばれていく小石

 枯れてしまった
 名前も知らない鉢植えの花

 足もとから伸びる
 今にも折れそうな影


それら すべてが わたしだ