たとえば月は
満ち欠けを繰り返すが
本当のかたちはいつも同じ
新月の夜も
雲に隠れていても
削られている訳ではない
消された訳でもない
人のこころも
満ちては欠ける
かたちの無い
気体のようで液体のようだ
それなのに脆い
透明な鉋で簡単に削れて
穴があけば完全には埋まらない
生きながら欠けて 満ちるといびつなかたち
言わないだけ
見せないだけで
本当は誰もが
どこかで欠けてきたし
今も欠けていて
けれどもどこかが満ちて
不思議な痛みを堪えて笑っている
幸せも
辛さも
血液に混じって
からだとこころを巡り
手の届かない傷を癒やす
塞ぎきれない分は人生の宿題として
抱えながら生きてゆく
本当は満たされすぎていたのに
満たされないと嘆いた十代
あんなに眩しい日々は無かったと
穴だらけのこころと共に歩いた二十代
治らない傷を直視できたのは
わたしという器の中に
星があり
想いがあり
色褪せることの無い
言葉があり
かけがえのない友がいたからだ
わたしは欠けている
これからも欠けてゆく
けれども
このからだとこころは
時に満ち
時にあふれて
そうして生きてゆくだろう
不器用に 笑って
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欠けている事は可能性だと思う。
満たされている時はもちろん幸せだったけれど、
何かが足りないとも感じていた。
欠けてみてはじめて気がつくこと。
見えてくるもの。
痛感したこと。
すべてが大切な気づきだった。
「harapeko」と用いているのは、
その頃の自分がまだ内側にいて、
時々飢えていることを忘れたくないからです。
それは自分にとってのエネルギーです。
yu,