言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

一日の終わり

2020-07-20 22:34:00 | 言葉



外灯が照らす道から
落ちてしまわないように歩く

吊橋よりも頼りない
一日の終わりへ向かう細道


湿り気を帯びた夜風が
しならせた木々が鳴いている

風邪をひいた外灯に出逢うと
道は より細く 暗い


月や星はいつも
曇天の向こうに在る事を
時おり 忘れそうになるが

雨の夜
曇りの夜に
風が吹いた時 思い出すだろう

彼方から届く
いのちの明るさ その匂いを


日々 月も星も
地上でまたたくいのちを見つめ
すべての夜を 静かに照らしている



玄関の灯りが消えて
今日もまた 一日が終わる










三十度の音

2020-07-20 16:22:32 | 言葉


細い糸で編まれた栗色のカーテンが
熱風にブワリとめくられ
ひとすじ ふたすじ と
額の丘から頬の坂をくだり
流れおちてゆく
ほそ長い つかの間の海



三十度の真昼の道路の上でゆらり揺らめく炎は透明

そういえばさっきあの燃えているところを通って来たのだった

人の行き来が見えるのに声も音も聴こえない虫も鳥もひたすら無言

北国のくせに茹だるほど暑い事に苛立って青空を薄い雲を睨みつける

「あつい」「あつい」溶けかけた呟きを垂れ流して歩いた

(カンカンなアスファルトも夜にはキンと冷えるから)



真の夏の声は無音
人気のある町並みや住宅街
自然の豊かな場所でさえ
暑さの後であらゆる音が言葉が燃え
冬とも違う静けさがそこかしこに残されているのを
わたしもあなたも一度は聴いたはずだ