言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

微熱

2020-07-28 22:17:28 | 言葉


薄い膜に覆われて
遮断されてゆく現実感

今こそ現実世界にしかと立ち
あなたの不在を受け入れねばならないこの時に
三十七度の膜がわたしを覆う

すぐ目の前に現実があり
こちらを真っすぐ見つめているというのに
わたしだけが
ひとり 横たわっていて

大きな穴があいたうつわから
あふれ出す液体の
蛇口をうまく捻れないまま

ふわふわフラフラと
揺蕩っては浮かんでいる

時計が歩く音も
夜の静寂も
そばにあるはずなのに
今はほんの少しだけ 遠い

夜が明けたら
探して拾い集めよう

受けとめきれずに落としてしまった
現実のかけらたちを