八障連通信393号です。
ここからは通信本文です。
ほっとスペース八王子主催シンポジウム企画
「なぜ精神病院での虐待事件は繰り返されるのか?」
「なぜ精神病院での虐待事件は繰り返されるのか?」
~精神医療の歴史と実態~ を振り返る
ほっとスペース八王子 施設長 藤井雅順
ほっとスペース八王子 施設長 藤井雅順
5月20日、ほっとスペース八王子はクリエイトホールの一室をお借りして、医療法人財団東京勤労者医療会代々木病院精神科科長の竹内真弓医師をお招きして、講演とシンポジウム二本立て、オンオフ併催の学習会を開催いたし
ました。準備の不手際でご迷惑をおかけいたしましたが、ご参加の皆様に改めまして心より御礼申し上げます
今回の企画の発端は、会員さんからの要望になります。足立区にある精神科病院における引きこもり当事者を入院させたことの事件に関心ある会員さんから、ほっとスペース八王子でも裁判での傍聴をしたいとの要望から始まりました。あとで触れますが、精神保健指定医でない医師が診断し、カルテは研修医のログインだったということ、そもそも入院の必要性の見られなかった所見だったことなどが明らかになっている事件です。ほっとスペース八王子は、赤堀闘争の時代より精神障碍をとりまく人権問題にも関心を寄せる事業所でもあります。
この事件を受けて傍聴日程を調整していると、竹内医師より会員対象に学習会の提案がありました。PowerPointの資料をもとに企画部(会員自ら行いたいプログラムや事業所の運用など提案事項について立案を持ち寄り、会員と職員と一緒に企画検討し形作ってゆくプログラム。全体ミーティングと並んで自主運営ならではのプログラムとなっています。)で議論を重ね、「このテーマは私たちだけで聴くのはもったいない。講演会を開催しよう。いろんな人に聴いてもらいたい」と企画が始まりました。そうしてさらに企画部で議論する中「講演会ではもったいない。シンポジウムも併せてやろう」と、大きな話となりました。急いで会場確保できたものの開いていたのは第 5 学習室のみ。余裕あればもっと大きな会場で開催できればよかったのですが、ハイブリッド開催とさせていただきました。
今回の切り口は、確かに講演会のきっかけは滝山病院や成仁病院であり、確かにいずれの事件許されない事件ではありますが、その背景にある根底の問題に様々な視座を結集しフォーカスする会となったように自負いたしております。シンポジウムでのキャスティング、当事者、精神科医、ソーシャルワーカー、そして労働組合。このキャスティングも会員さんによるものです。
シンポジウムでは精神保健福祉士としてご活躍、滝山病院退院支援連絡会を代表し、また就労継続支援 B 型施設職員の細江昌憲さん。ほっとスペース八王子会員の小峰盛光さん。三多摩合同労働組合ゆにおん同愛会・社会福祉法人同愛会日の出福祉園にご在勤、林武文さん。そして精神科医師の竹内真弓さんにご登壇いただきました。福祉職員から同僚の虐待が疑われる言動を受けての対応などの質問にシンポジストのみなさんから虐待通報することと当該職員の分析・評価もあわせておこなうことなど助言が提供されました。
前後いたしますが講演では、引きこもりを切り口に我が国日本の社会構造その推移、8050問題、戦後日本の社会構造の変化、日本と諸外国との福祉を対比。一例に、「昭和の男」は大日本帝国下の第二次世界大戦の社会、その世代間伝達が社会病理として起きているなど指摘がありました。アフターケアについて海外事例と比較して日本はケアできていないことなどが示されました。
そうした世代間伝達(前の世代での関係性が潜在的に次の世代の家族機能のモデルになっており、世代を超えて同じ問題が反復される(ボーエン))の影響に注目して、システムズアプローチの説明と、出来事は多数の要素間の相互作用の中でおこることなど講演いただきました。
そして核心、成仁病院事件・滝山病院事件を切り口に講演いただきました。東京都の予定監査とは何か、日本の精神科医療への予算の現状、職員処遇含めた虐待予防理論からの考え方について、そして公益通報保護制度について講演いただきました。
虐待は「虐待者が追い詰められた末のSOS」ととらえる、背景を考えることが大事であること。(様々な事件で対応の不備を指摘されるがそもそも「なぜこの施設で虐待が起きたのか」を考えることが必要と講演いただきました。
システムズアプローチの視座から捉えることで、構造に介入する視座を学ばせていただきました。監査の一般的なイメージと現実の乖離について、東京都の予定監査の実際の運用についてご説明いただきました。
今回、会場参加者をはじめ皆さんの英知を結集する会となったように振り返ります。
ました。準備の不手際でご迷惑をおかけいたしましたが、ご参加の皆様に改めまして心より御礼申し上げます
今回の企画の発端は、会員さんからの要望になります。足立区にある精神科病院における引きこもり当事者を入院させたことの事件に関心ある会員さんから、ほっとスペース八王子でも裁判での傍聴をしたいとの要望から始まりました。あとで触れますが、精神保健指定医でない医師が診断し、カルテは研修医のログインだったということ、そもそも入院の必要性の見られなかった所見だったことなどが明らかになっている事件です。ほっとスペース八王子は、赤堀闘争の時代より精神障碍をとりまく人権問題にも関心を寄せる事業所でもあります。
この事件を受けて傍聴日程を調整していると、竹内医師より会員対象に学習会の提案がありました。PowerPointの資料をもとに企画部(会員自ら行いたいプログラムや事業所の運用など提案事項について立案を持ち寄り、会員と職員と一緒に企画検討し形作ってゆくプログラム。全体ミーティングと並んで自主運営ならではのプログラムとなっています。)で議論を重ね、「このテーマは私たちだけで聴くのはもったいない。講演会を開催しよう。いろんな人に聴いてもらいたい」と企画が始まりました。そうしてさらに企画部で議論する中「講演会ではもったいない。シンポジウムも併せてやろう」と、大きな話となりました。急いで会場確保できたものの開いていたのは第 5 学習室のみ。余裕あればもっと大きな会場で開催できればよかったのですが、ハイブリッド開催とさせていただきました。
今回の切り口は、確かに講演会のきっかけは滝山病院や成仁病院であり、確かにいずれの事件許されない事件ではありますが、その背景にある根底の問題に様々な視座を結集しフォーカスする会となったように自負いたしております。シンポジウムでのキャスティング、当事者、精神科医、ソーシャルワーカー、そして労働組合。このキャスティングも会員さんによるものです。
シンポジウムでは精神保健福祉士としてご活躍、滝山病院退院支援連絡会を代表し、また就労継続支援 B 型施設職員の細江昌憲さん。ほっとスペース八王子会員の小峰盛光さん。三多摩合同労働組合ゆにおん同愛会・社会福祉法人同愛会日の出福祉園にご在勤、林武文さん。そして精神科医師の竹内真弓さんにご登壇いただきました。福祉職員から同僚の虐待が疑われる言動を受けての対応などの質問にシンポジストのみなさんから虐待通報することと当該職員の分析・評価もあわせておこなうことなど助言が提供されました。
前後いたしますが講演では、引きこもりを切り口に我が国日本の社会構造その推移、8050問題、戦後日本の社会構造の変化、日本と諸外国との福祉を対比。一例に、「昭和の男」は大日本帝国下の第二次世界大戦の社会、その世代間伝達が社会病理として起きているなど指摘がありました。アフターケアについて海外事例と比較して日本はケアできていないことなどが示されました。
そうした世代間伝達(前の世代での関係性が潜在的に次の世代の家族機能のモデルになっており、世代を超えて同じ問題が反復される(ボーエン))の影響に注目して、システムズアプローチの説明と、出来事は多数の要素間の相互作用の中でおこることなど講演いただきました。
そして核心、成仁病院事件・滝山病院事件を切り口に講演いただきました。東京都の予定監査とは何か、日本の精神科医療への予算の現状、職員処遇含めた虐待予防理論からの考え方について、そして公益通報保護制度について講演いただきました。
虐待は「虐待者が追い詰められた末のSOS」ととらえる、背景を考えることが大事であること。(様々な事件で対応の不備を指摘されるがそもそも「なぜこの施設で虐待が起きたのか」を考えることが必要と講演いただきました。
システムズアプローチの視座から捉えることで、構造に介入する視座を学ばせていただきました。監査の一般的なイメージと現実の乖離について、東京都の予定監査の実際の運用についてご説明いただきました。
今回、会場参加者をはじめ皆さんの英知を結集する会となったように振り返ります。
話は変わりますが、実は申しますと、ほっとスペース八王子の企画部では、また新たな映画鑑賞会とシンポジウムの企画が進んでいます。代替わりしたほっとスペース八王子、今後ともご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。
シンポジストとして登壇を振り返る
ほっとスペース八王子会員 小峰盛光
2023年5月20日(土)八王子市生涯学習センター(クリエイトホール)第5学習室で「なぜ精神病院で虐待事件は繰り返されるのか?」シンポジウムのシンポジストとして登壇者として話しすることになりました。
人生で初めてシンポジストとして話しすることになり緊張しました。打ち合わせでは地域での当事者の暮らし、都営住宅の当選の話しをしようとしましたが、やはりこんな機会はめったにもらえないので精神医療を受けての体験談の話を今回はしました。
私なんかはまだ良い方で何も言えず亡くなっていった当事者がたくさんいます。精神医療の現実、差別、福祉の遅れなど国にちゃんとしてもらいと言う気持ちで話しました。精神医療受けてきて29年全然良くならない精神医療みんなで声を上げて闘っていきましょう。
ほっとスペース八王子会員 小峰盛光
2023年5月20日(土)八王子市生涯学習センター(クリエイトホール)第5学習室で「なぜ精神病院で虐待事件は繰り返されるのか?」シンポジウムのシンポジストとして登壇者として話しすることになりました。
人生で初めてシンポジストとして話しすることになり緊張しました。打ち合わせでは地域での当事者の暮らし、都営住宅の当選の話しをしようとしましたが、やはりこんな機会はめったにもらえないので精神医療を受けての体験談の話を今回はしました。
私なんかはまだ良い方で何も言えず亡くなっていった当事者がたくさんいます。精神医療の現実、差別、福祉の遅れなど国にちゃんとしてもらいと言う気持ちで話しました。精神医療受けてきて29年全然良くならない精神医療みんなで声を上げて闘っていきましょう。
「レジーナと私の二人修行」 ハーネス八王子 鈴木由紀子
いまから 2 年半前、2頭目の盲導犬・レジーナと暮らし始めたとき、私が特別に取り組 みたい課題が一つありました。それはレジーナの通常のトイレ場所を屋外から屋内に移すこと、言い換えれば、そのノウハウを私がレジーナに教え込むことでした。1 頭目の盲導 犬・アーサと過ごしていたとき、彼女のトイレ場所のことで、私は非常に窮屈な思いを何度もしたので、そのことは是非改善したかったわけです。
いま日本のほとんどの盲導犬育成施設では、ワンツーベルトを使ってワン(おしっこ) やツー(うんち)ができるように犬をしつけてユーザーに渡します。具体的に言うと、盲 導犬の腰に付けたベルトで袋を釣ってワンやツーを回収してトイレに流す、もしくは凝固剤でゼリー状に固めてゴミとして捨てるという仕組みです。盲導犬ユーザーに課せられる 4 週間の共同訓練でも、そのノウハウを、しっかり身につけさせられるのです。
ところが、私とレジーナが訓練を受けた施設ではその方式を採用しません。庭や駐車場 の隅っこ、あるいは道路の端っこで盲導犬にワン(おしっこ)やツー(うんち)をさせ、水できれいに流せばよいと教えられました。しかし、我が家には庭もなく、まして、この辺りは市街地なので、大型犬のトイレ場所は、なかなか見つかりません。あるとき知人に格好の草地を見つけてもらい、頻繁にそこに出かけていたら、「ここで犬におしっこをさせないでくださいね」と近所の人に、とがめられました。それに、都心などでは植え込み が網で覆われて、むやみに近づけないところもあります。盲導犬も生き物ですから、トイ レ場所は不可欠なので、大目にみてほしかったのですが、みんなにそのことを理解していただくのは難しいと知りました。
また、レジーナが家の中でワンツーをしてくれるようになれば、お出かけの準備がとてもスムーズになります。台風や雨降りといった悪天候が何日も続いて外に出られなくても、ワンツーのことで気をもむこともありません。土地勘のない外出先で戸惑うことからも免れます。さらに、もしレジーナがおなかをこわすなど、具合が悪いときも、家の中の決められた場所に歩いていけばよいので、レジーナ自身の負担も少なく、飼い主の私も安心です。このように考えると、いまやワンツーベルトは盲導犬ユーザーのお助けグッズ、必須アイテムです。
また、ユーザーがそれを使いながら行動することも、環境の保護とか、まちの美化が取りざたされる今の都市社会のマナーのように思われます。ワンツーベルトを 使えるようにすることが私の生活環境では必要不可欠なことので、すでにワンツーベルトを使っている仲間にノウハウを教わって「レジーナと私との二人修行」をすることにしたのでした。
編集部より
八障連通信 393号をお届けいたします。町田市での拳銃発砲殺傷事件や長野県中野市での猟銃を使用した立てこもり事件など、銃器を使用した物騒な事件が世間をざわつかせています。事件の背後にあるさまざまな要因、構造にも目を向けてまいりたいものです。
(編集部)
連載コラム B型肝炎闘病記 パオ 小濵 義久
闘病史 その75
今回の入院では、内視鏡脈瘤検査もICG検査も楽しみだった。内視鏡検査は食道静脈瘤の有無を確かめる検査だが、この4~5年やっていなかったので、実は心配していたのだ。検査したところ、小さな瘤はあったようだが、まだ治療する大きさにはなっていなかった。でも、今後の経過が心配である。
ICG検査の正常値は10以下なのだが、今回は14と出た。9年前の入院の時は7というすこぶる良い数値だったが、中村Drは小濱さんの病歴で14なら、極めて良いですよ、前回が良すぎましたねと言って下さった。これもひと安心。
今回は初めて骨密度検査というのもやった。肝臓病とどう関係があるのか分からないが、これも一度は調べておきたい検査だった。有り難いと思ったのだが、結果を聞いてくるのを忘れてしまった。悪ければ、何か言ってくれるだろうから、きっと良かったのだと思う。
1983年に偶然に出会った新聞記事から付き合いの始まった熊田Drとは相性が良く、肝臓のことは全てこの人にげたを預けようと決心するまでにそれほどの時間は要しなかった。それ以降肝臓病のことについてはほとんど勉強していない。何かあれば、彼の意見を聞き、それを私が確かめ、決断するという形で過ごしてきた。今回ほど熊田Drに感謝したことはない。普通の病院にかかっていたら、11月のちょっとした兆候を見逃し、癌細胞が大きくなってから発見され、手遅れになっていた可能性が大である。
そう言えば、20数年前に、彼は「肝臓では死なせないよ」と言ってくれていた。死ぬこと自体を恐れてはいないのだが、1986年に叔父が毎日「痛いよ!痛いよ!」と悲痛な叫びをあげながら死んでいったのを見ているので、肝臓癌では死にたくないと考えているだけである。
12月14日の朝9時過ぎに入院したのだが、すぐに週1回の院長回診があった。14日は私の誕生日であり、院長というのは熊田Drなのだ。肝臓病の研究と臨床と両方にわたる活躍で世界的にも名を知られた彼は東大系である虎の門病院では珍しく、東大系ではなく40歳台で部長になり、ついには分院長まで上り詰めるという虎の門病院の歴史に名を刻んだ現役のレジェンドなのである。夢を持ち、努力を続ければ夢はかなう。最近よく耳にする言葉だ。68歳になっても現役を続けていられるのは、役職定年規定があるからである。
はじめての入院の時だけは入院中も熊田Drが担当医だったが、2回目以降は若手の医師が担当者となって、入院中の治療全般を担ってくれている。熊田Drは外来の診察だけはずっとしているが、入院患者を担当する時間的ゆとりがなく、肝臓病の臨床と研究を兼ねて入局してきた若手に経験を積ませることも重要だからである。今回は中村Dr、40歳台後半だろうか、感じの良い医師で、実によくベッドサイドに来て下さった。
院長回診の後、しばらくしてナースステーションの隣にあるカンファレンスルームに呼ばれた。中村DrがMRI画像を見せながら、詳しく説明してくれた。肝臓は8つの部分に分かれており、今回影が見えるのはS₂というところで、心臓に近い。どれくらいの大きさになっているのか尋ねると、画像下部にあるスケールで測ってくれ、1,32㎝だと分かった。「小さいのでラジオ波(ラジオ波焼灼法)で大丈夫だと思います。熊田先生もそう仰っていました。」ということで、治療計画が示された。「100℃の熱で焼くので、心臓に幾分影響がある心配もあるが、最大限努力します。」と言って下さった。
最悪は手術と覚悟し、手術に備えて浴衣を持参して来ていたが、杞憂に終わった。思わず、「良かった。」と声が高ぶった。手術というのは本当に大変なのだ。過去2回も手術している身としては、宝くじに当たったような喜びだった。ラジオ波も一度経験しているが、手術とは比べ物にならない。ということは一番きつい検査もなし。
その検査は血管造影検査(アンギョウ)のことである。鼠蹊部の動脈からカテーテルを肝臓内部まで挿入し、造影剤を注入して撮影する検査だ。動脈を切開するので、検査後血液が漏れないようにきつく圧迫され、右足をベッドに固定したまま明くる日の朝まで過ごさなければならず、身体が途中からパンパンに張ってくる。全く身動きが許されず、拷問のようだ。その検査もない。「これでいいのだ~!」「ラッキー!」
通信本文ここまで