八障連通信318号をアップします。
通信アップが滞っておりすみません。
八障連通信318号【PDF版】はこちらから
これより通信本文です。
【事務局通信 Vol.31】
11月24日に八王子市議会議員の皆さんと懇談会を行う予定でしたが、雪のため急きょ延期としました。11月に都内で雪が降るのは観測史上54年ぶりということです。結果として雪は懇談会予定時間前には止みましたが、夜の冷え込みとともに積もった雪が凍ることも予想した判断でした。懇談会へ出席予定であった皆様、会員団体へ電話などで当日の懇談会は中止とご連絡し、市議の皆様には議会事務局から連絡をしていただきました。また、NPO法人八王子ワークセンターには八障連会員団体の加盟が多いことから、メールにて当日中止の連絡対応してもらい御協力をいただきました。念のため会場にて運営委員が待機して来場者がないか対応をしました。皆様にはご多忙の中を時間調整していただいたところ、ご迷惑をおかけしたことをお詫び致しますとともに、急な対応に御協力を頂いたことをお礼申し上げます。市議懇談会については日を改めて開催を調整したいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。
さて、本年も残すところ数日間となりました。会員団体をはじめ関係各位の皆さま方には大変にお世話になりました。本年は障害者差別解消法が4月より施行され、八王子市でも八障連からも委員を出している障害者地域自立支援協議会において様々な取り組みがなされました。その一方で相模原の障害者施設殺傷事件が起こり、多くの障害当事者や関係者に大きな衝撃と悲しみ、不安を与えました。熊本では二度にわたる大きな地震による災害に見舞われ、世界中でも震災が起きています。最近では高齢者による自動車運転事故を機に高齢者運転について見直しがされています。様々なことを考えさせられる一年でありました。
八障連の活動としては、延期されている市議懇談会や福祉フォーラム、生活保護制度説明会、団体報告会、市民向け企画など今年度の予定が残っています。皆様には引き続きお世話になりますが宜しくお願いします。師走の忙しい折り、インフルエンザが流行り出していますが、体調等にお気をつけて、良い年を迎えられますようお祈り申し上げます。(事務局 有賀)
【今後のお知らせ】
✦ 延期された「市議会議員との懇談会」は来年2月くらいをメドに開催したいと考えております。今後日程を運営委員会で討論し、各関係機関と調整することになります。日程が確定しましたら通信等でお知らせいたしますのでよろしくお願いいたします。(八障連 運営委員会)
✦ 障害当事者の方が大家さんで、「福祉事業」に使ってほしいという物件情報が八障連に寄せられております。案内チラシを同封しておりますのでぜひご覧ください。
八障連運営委員会
12月15日(木)
18:00~20:30
クリエイト
八障連例会(隔月企画あり・予定)
2017年1月26日(木)
18:00~20:30
クリエイト
障害者福祉課の生活保護出前講座(予定)
2017年2月18日(土)
14:00~16:00
クリエイト
八障連福祉フォーラム(予定)
2017年3月18日(土)
13:00~16:00
クリエイト
【 2016年を振り返って 八障連代表 杉浦 貢】
毎年、年の変わり目には『今年こそは、イヤな事件は起きてくれるなよ』と祈ってみたりするのですが…起きてしまいましたね。イヤな事件。芸能人、有名人の薬物犯罪やら不倫やらも、日々のニュースを目で見て、耳で聞く限り…とても不愉快な出来事ではあるものの、骨身に染みて自分を揺さぶるほどの実感は持てませんでした。それが…朝起きて、テレビを付けて、朝食がてらに画面を眺めて血の気が引いた事件。それが津久井やまゆり園で起きた惨事でした。
普通なら、殺人などの被害者の実名を公表する中、今回の事件ではなかなか公表されないことについて違和感を覚えました。今後も警察やマスコミは、家族が被害者の氏名を公表しないことを望めば、公表しないことを貫くのでしょうか。それならば一定の理解はできるのですが、今回は被害者が「障害者」であることが大きく影響しているように思えてなりません。氏名を非公表としてほしいと願ったご家族のお気持ちには、家族を失った辛さ、悲しみ、怒りが増していく中、マスコミが押し寄せ取材されることを阻止したい、「そっとしておいてほしい」等の思いを持たれていることが大きくあると思います。事件の検証等を理由に被害者家族を取材する報道被害についてはマスコミ自体が自重していくべきことで、それはマスコミが抱える大きくて重い責任です。いかなる場合もご遺族の気持ちは最大限に尊重されるべきであると思います。
一方、ご遺族の気持ちを無視することや報道の過熱による心的被害が無くならない実態はあっても、犠牲になって亡くなった方たちの「生まれてきてから亡くなられるまで」ずっと呼ばれてきた名前が非公表となり、性別と年齢のみが発表されることに、虚しさとやるせなさを感じずにはいられませんでした。障害の有無に関わらず、誰しも人とのつながりの中で生きていきます。名前が公表されれば、そこにその人が見えてきます。学校では、「みんなと同じことができないと迷惑になるから」「人手がかかって大変だから」との理由から、障害のない子達の中への参加を拒まれたりといったことがまだまだ多くあります。自宅近くに障害者の事業所が建設されるとなると反対運動が起り、「障害者の獣のような叫び声を聴くようになるのは耐えられない」「障害者施設ができたら地価がさがる」というような意見が飛び出します。それだけに、障害者を家族に持つ多くの家庭では、今回の事件を容疑者の個人的な異常性…彼一人の心の闇を考えることで終わらせず、社会にある偏見や差別に目を向けてもらいたいとの願いを持っています。
犠牲者の名前を公表しない背景には、ご家族の中に、ひょっとすると障害者が家族にいることを伏せて暮らしてこられた方や、施設で暮らしていることを知られたくないという家族もいるのかもしれない…とも思います。仮にそうだとしても、積極的にそういう選択をしてきたはずはありません。社会の障害に対する偏見や差別を感じての子育ての結果なのだろうと、私自身の体験も踏まえて考えました。それでも、家族の複雑な思いが「障害」となり犠牲になった人たちの名前が公表されないのだとしたら、それもまたとてつもなく切ないものです。事件後の報道も、「障害者にもこんなよいところがあります」というような報じ方になってしまう場合がありました。それも…分からないではないのですが、「こんなにいい人だった」と、良いところ探しをして報じたりすることで、あたかもそれが殺されてはならない理由のように語られてしまう。それでは逆に「生きる価値、生きる権利」というものを狭く規定してしまう恐れがあります。
優れていようと劣っていようと、だれにも殺されず安心して暮らせるような社会こそが求められています。犠牲者の家族が非公表を望む想いを考えると「障害」は個人にあるのではなく、人を含めた周囲の環境、社会につくられるということを改めて考えます。ちなみに、殺された19人の犠牲者が、障害者施設で暮らす障害のある人たちでなくても、警察は氏名を非公表にしたのでしょうか…どうにもわりきれない思いがぬぐえません。
幼いころから障害の有無で分けられることなく共に過ごせる保育・教育環境を、地域では、障害があっても無くても共に一員であることを想い描ける日常を築いていくことこそが重要です。障害のある人が、その人らしく堂々と生きていく、障害のある人が家族にいることを負い目に感じずにいられる社会。そうしたことを目指すことが、今回のような凶悪な事件の再発防止になると信じています。
【連載コラム vol.10 『病院にも盲導犬と行きたい!』 ハーネス八王子 鈴木由紀子】
今年4月に施行された「障害者差別解消法」では、盲導犬を伴ったことを理由に視覚障害者がサービスを利用することを拒否することを「不当な差別的取り扱い」と位置づけて禁止しています。私たちユーザーにとって、盲導犬は白杖に代わる歩行補助手段なので、制度上でも、単なるペット犬とは区別されているわけです。
新たな法律の施行以後、盲導犬ユーザーの私の生活圏でも状況の変化が見て取れます。 我が家から歩いて数分のところに、救急対応機能もある大きな病院があり、白杖を使っていたころには、窮地を救っていただいたことさえあったほどです。しかし私が盲導犬を利用し始めた6年前からは、その病院の担当者に何度アプローチしても、盲導犬同伴でサービスを利用することを、カタクナに拒否されていました。そして、新たな法律が施行されてしばらく経ってからそこに出かけてみたら状況は一変して、受付けから待合室、そして診察室の近くにまでアーサと歩いていくことができて驚いたほどです。
私たちユーザーは盲導犬の体を日々清潔にし、盲導犬が常に健康に過ごせるように管理しています。そして、これまで「盲導犬は駄目」と決めつけていたような所では、正しい知識を持っていないように思われます。犬の毛に対するアレルギーを持つ人も、犬から少し離れれば大丈夫と獣医さんたちは言います。ですから、今回の法律による国の管理は「社会全体の応援団」を得たような感じで、とても心づよいのです。
皆さんは〈補助犬同伴可〉ステッカーを、ご存じでしょうか。それは全国盲導犬施設連合会が作成した啓発用品で、普通は申し込み制で届けられるものですが、一般のペットは入れなくても身障者の補助犬は入店OKであるというサインとして、デパートやスーパーで採用されています。特に補助犬を伴った障害者の入館を断わられることの多い医療機関向けには、自治体の担当部署から直送されているようですが、実際にそのステッカーを活用するかどうかは各機関に任されますから、張らずに仕舞っておかれるケースもあるようです。
我が家で20年近くお世話になっている歯科医院では、医院長をはじめ、スタッフたちがその趣旨を理解し、ビルの入り口の扉にそのステッカーを張って、来院者が私の盲導犬を見て驚いたり不審感を持ったりしないように配慮してくれています。そのため私も安心。アーサも、スタッフや患者さんたちに温かく見守られて、待合室の一郭で静かに待っているので、アーサを近くで見るだけで癒されると言ってくださる方もいるほどです。このような経験を通して、どんなサービスも、法律や条例が整備されるだけでは足りなくて、それらの趣旨や意味を理解し、温かく対応する人たちの〈心〉があってはじめて、実のあるサービスに成長していくのだと教えられました。キャリアウーワンのアーサの活動範囲がさらに広がることを切に願っています。
「身体障害者補助犬法」をご存知ですか
「身体障害者補助犬法」は、人が立ち入るところはどこでも補助犬を受け入れることを義務付けた法律です。視覚障害者、聴覚障害者、身体障害者のために働く、盲導犬、聴導犬、介助犬は、一般施設への同伴が認められています。補助犬は特別な訓練を受けており、障害のある方のパートナーです。ペットではありません。公共の施設、交通機関など、一緒に同伴することができます。他にもスーパー、飲食店、病院、ホテルなどの施設でも補助犬を連れて入店、来院することができます(「障害者ドットコム」より抜粋。なお、身体障害者補助犬法の詳細は厚生労働省のサイトhttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/hojyoken/html/a01.html でご確認ください)。
「障害者差別解消法」が施行され、八王子市においても差別禁止条例の見直しも行われております。補助犬の受け入れを理解し、みんなが共存できる社会の実現に向けて前進していきましょう。(編集部)
【 連載コラム B型肝炎闘病記 パオ 小濵 義久】
闘病史 その10
ステロイド離脱療法の開発話は、そのことを記した記事のコピーを熊田Drから直接もらった。ベッドサイドか廊下の立ち話でも出てきて、その女性が現在丁度入院しているという事で話が盛り上がった。大阪の人で旧制大手前高等女学校を卒業されたらしいと知り、ならば私の大先輩であることを告げると、病室を教えてくれた。その当時は、個人情報保護法というものがまだなく、こういうことが可能だった。病室の入り口には名札が掲げられていた。今では考えられないことである。おおらかな時代であった。
旧制大手前高女は、戦後大阪府立大手前高校と名称を変えて存続し、130年ほどの歴史を持つ。「金蘭会」という同窓会組織を持っており、東京支部の毎年の総会には旧制高女を卒業した90歳前後の先輩が来られることもある。見ず知らずの人ではあるが、旧制高女を出た大先輩と、大阪とは遠く離れた川崎、しかも虎の門病院分院に同じ時期に入院しているという出会いは、まさに天文学的な偶然であり、奇跡とも言える。そして彼女がきっかけで開発されたステロイド離脱療法の恩恵に私が預かろうとしているこの不思議さ。
お礼がてら、ご挨拶も兼ねて病室を訪問させて戴いたが、芳しい反応はなかった。しかし、その女性4人部屋に話好きの社交的なおばさまがいて、上記経緯を知って不思議ですねと話し掛けてきて下さった。関西なまりなので、出身を訊くと香川とおっしゃった。実は私のルーツは両親とも徳島であり、母方は瀬戸内海で暴れまわっていた河野水軍の末裔である事を告げた。そんな会話をしていてすっかり仲良くなり、その後20年近く家族ぐるみでお付き合いさせて戴いた。
その女性は当時の消化器科(肝臓科とは呼んでいなかった)の部長である吉場Drの奥さんの知り合いで、熊田Drに診てもらうように言われたそうである。彼女はルポイド肝炎という自己免疫性疾患に罹っており、ステロイドを使いながら、炎症を抑えて悪化を防ぐしか方法がないのだった。ステロイドの真っ当な使い方をされていた。彼女から吉場Drのお人柄を知るところとなり、熊田Drの幸運を感じた。ひいては私の幸運にもつながっていた。
それ迄の肝臓治療の常識を覆すような治療仮説(ステロイドの真逆の使用法)だったから、普通なら潰されていても何の不思議もなかったというのが当時の医学の世界である。山崎豊子の「白い巨塔」という本が大ヒットし、テレビドラマや映画にもなったので、ご覧になった方もおいでだろう。医学界というのがどれほど封建的な社会であったかがよく分かる。何より吉場Drの懐の深さが今回の発見の大きな礎となっていたのだ。私は未だに吉場Drへの感謝の気持ちを忘れないでいる。(次号へ続く)
通信本文はここまで。
通信アップが滞っておりすみません。
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【事務局通信 Vol.31】
11月24日に八王子市議会議員の皆さんと懇談会を行う予定でしたが、雪のため急きょ延期としました。11月に都内で雪が降るのは観測史上54年ぶりということです。結果として雪は懇談会予定時間前には止みましたが、夜の冷え込みとともに積もった雪が凍ることも予想した判断でした。懇談会へ出席予定であった皆様、会員団体へ電話などで当日の懇談会は中止とご連絡し、市議の皆様には議会事務局から連絡をしていただきました。また、NPO法人八王子ワークセンターには八障連会員団体の加盟が多いことから、メールにて当日中止の連絡対応してもらい御協力をいただきました。念のため会場にて運営委員が待機して来場者がないか対応をしました。皆様にはご多忙の中を時間調整していただいたところ、ご迷惑をおかけしたことをお詫び致しますとともに、急な対応に御協力を頂いたことをお礼申し上げます。市議懇談会については日を改めて開催を調整したいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。
さて、本年も残すところ数日間となりました。会員団体をはじめ関係各位の皆さま方には大変にお世話になりました。本年は障害者差別解消法が4月より施行され、八王子市でも八障連からも委員を出している障害者地域自立支援協議会において様々な取り組みがなされました。その一方で相模原の障害者施設殺傷事件が起こり、多くの障害当事者や関係者に大きな衝撃と悲しみ、不安を与えました。熊本では二度にわたる大きな地震による災害に見舞われ、世界中でも震災が起きています。最近では高齢者による自動車運転事故を機に高齢者運転について見直しがされています。様々なことを考えさせられる一年でありました。
八障連の活動としては、延期されている市議懇談会や福祉フォーラム、生活保護制度説明会、団体報告会、市民向け企画など今年度の予定が残っています。皆様には引き続きお世話になりますが宜しくお願いします。師走の忙しい折り、インフルエンザが流行り出していますが、体調等にお気をつけて、良い年を迎えられますようお祈り申し上げます。(事務局 有賀)
【今後のお知らせ】
✦ 延期された「市議会議員との懇談会」は来年2月くらいをメドに開催したいと考えております。今後日程を運営委員会で討論し、各関係機関と調整することになります。日程が確定しましたら通信等でお知らせいたしますのでよろしくお願いいたします。(八障連 運営委員会)
✦ 障害当事者の方が大家さんで、「福祉事業」に使ってほしいという物件情報が八障連に寄せられております。案内チラシを同封しておりますのでぜひご覧ください。
八障連運営委員会
12月15日(木)
18:00~20:30
クリエイト
八障連例会(隔月企画あり・予定)
2017年1月26日(木)
18:00~20:30
クリエイト
障害者福祉課の生活保護出前講座(予定)
2017年2月18日(土)
14:00~16:00
クリエイト
八障連福祉フォーラム(予定)
2017年3月18日(土)
13:00~16:00
クリエイト
【 2016年を振り返って 八障連代表 杉浦 貢】
毎年、年の変わり目には『今年こそは、イヤな事件は起きてくれるなよ』と祈ってみたりするのですが…起きてしまいましたね。イヤな事件。芸能人、有名人の薬物犯罪やら不倫やらも、日々のニュースを目で見て、耳で聞く限り…とても不愉快な出来事ではあるものの、骨身に染みて自分を揺さぶるほどの実感は持てませんでした。それが…朝起きて、テレビを付けて、朝食がてらに画面を眺めて血の気が引いた事件。それが津久井やまゆり園で起きた惨事でした。
普通なら、殺人などの被害者の実名を公表する中、今回の事件ではなかなか公表されないことについて違和感を覚えました。今後も警察やマスコミは、家族が被害者の氏名を公表しないことを望めば、公表しないことを貫くのでしょうか。それならば一定の理解はできるのですが、今回は被害者が「障害者」であることが大きく影響しているように思えてなりません。氏名を非公表としてほしいと願ったご家族のお気持ちには、家族を失った辛さ、悲しみ、怒りが増していく中、マスコミが押し寄せ取材されることを阻止したい、「そっとしておいてほしい」等の思いを持たれていることが大きくあると思います。事件の検証等を理由に被害者家族を取材する報道被害についてはマスコミ自体が自重していくべきことで、それはマスコミが抱える大きくて重い責任です。いかなる場合もご遺族の気持ちは最大限に尊重されるべきであると思います。
一方、ご遺族の気持ちを無視することや報道の過熱による心的被害が無くならない実態はあっても、犠牲になって亡くなった方たちの「生まれてきてから亡くなられるまで」ずっと呼ばれてきた名前が非公表となり、性別と年齢のみが発表されることに、虚しさとやるせなさを感じずにはいられませんでした。障害の有無に関わらず、誰しも人とのつながりの中で生きていきます。名前が公表されれば、そこにその人が見えてきます。学校では、「みんなと同じことができないと迷惑になるから」「人手がかかって大変だから」との理由から、障害のない子達の中への参加を拒まれたりといったことがまだまだ多くあります。自宅近くに障害者の事業所が建設されるとなると反対運動が起り、「障害者の獣のような叫び声を聴くようになるのは耐えられない」「障害者施設ができたら地価がさがる」というような意見が飛び出します。それだけに、障害者を家族に持つ多くの家庭では、今回の事件を容疑者の個人的な異常性…彼一人の心の闇を考えることで終わらせず、社会にある偏見や差別に目を向けてもらいたいとの願いを持っています。
犠牲者の名前を公表しない背景には、ご家族の中に、ひょっとすると障害者が家族にいることを伏せて暮らしてこられた方や、施設で暮らしていることを知られたくないという家族もいるのかもしれない…とも思います。仮にそうだとしても、積極的にそういう選択をしてきたはずはありません。社会の障害に対する偏見や差別を感じての子育ての結果なのだろうと、私自身の体験も踏まえて考えました。それでも、家族の複雑な思いが「障害」となり犠牲になった人たちの名前が公表されないのだとしたら、それもまたとてつもなく切ないものです。事件後の報道も、「障害者にもこんなよいところがあります」というような報じ方になってしまう場合がありました。それも…分からないではないのですが、「こんなにいい人だった」と、良いところ探しをして報じたりすることで、あたかもそれが殺されてはならない理由のように語られてしまう。それでは逆に「生きる価値、生きる権利」というものを狭く規定してしまう恐れがあります。
優れていようと劣っていようと、だれにも殺されず安心して暮らせるような社会こそが求められています。犠牲者の家族が非公表を望む想いを考えると「障害」は個人にあるのではなく、人を含めた周囲の環境、社会につくられるということを改めて考えます。ちなみに、殺された19人の犠牲者が、障害者施設で暮らす障害のある人たちでなくても、警察は氏名を非公表にしたのでしょうか…どうにもわりきれない思いがぬぐえません。
幼いころから障害の有無で分けられることなく共に過ごせる保育・教育環境を、地域では、障害があっても無くても共に一員であることを想い描ける日常を築いていくことこそが重要です。障害のある人が、その人らしく堂々と生きていく、障害のある人が家族にいることを負い目に感じずにいられる社会。そうしたことを目指すことが、今回のような凶悪な事件の再発防止になると信じています。
【連載コラム vol.10 『病院にも盲導犬と行きたい!』 ハーネス八王子 鈴木由紀子】
今年4月に施行された「障害者差別解消法」では、盲導犬を伴ったことを理由に視覚障害者がサービスを利用することを拒否することを「不当な差別的取り扱い」と位置づけて禁止しています。私たちユーザーにとって、盲導犬は白杖に代わる歩行補助手段なので、制度上でも、単なるペット犬とは区別されているわけです。
新たな法律の施行以後、盲導犬ユーザーの私の生活圏でも状況の変化が見て取れます。 我が家から歩いて数分のところに、救急対応機能もある大きな病院があり、白杖を使っていたころには、窮地を救っていただいたことさえあったほどです。しかし私が盲導犬を利用し始めた6年前からは、その病院の担当者に何度アプローチしても、盲導犬同伴でサービスを利用することを、カタクナに拒否されていました。そして、新たな法律が施行されてしばらく経ってからそこに出かけてみたら状況は一変して、受付けから待合室、そして診察室の近くにまでアーサと歩いていくことができて驚いたほどです。
私たちユーザーは盲導犬の体を日々清潔にし、盲導犬が常に健康に過ごせるように管理しています。そして、これまで「盲導犬は駄目」と決めつけていたような所では、正しい知識を持っていないように思われます。犬の毛に対するアレルギーを持つ人も、犬から少し離れれば大丈夫と獣医さんたちは言います。ですから、今回の法律による国の管理は「社会全体の応援団」を得たような感じで、とても心づよいのです。
皆さんは〈補助犬同伴可〉ステッカーを、ご存じでしょうか。それは全国盲導犬施設連合会が作成した啓発用品で、普通は申し込み制で届けられるものですが、一般のペットは入れなくても身障者の補助犬は入店OKであるというサインとして、デパートやスーパーで採用されています。特に補助犬を伴った障害者の入館を断わられることの多い医療機関向けには、自治体の担当部署から直送されているようですが、実際にそのステッカーを活用するかどうかは各機関に任されますから、張らずに仕舞っておかれるケースもあるようです。
我が家で20年近くお世話になっている歯科医院では、医院長をはじめ、スタッフたちがその趣旨を理解し、ビルの入り口の扉にそのステッカーを張って、来院者が私の盲導犬を見て驚いたり不審感を持ったりしないように配慮してくれています。そのため私も安心。アーサも、スタッフや患者さんたちに温かく見守られて、待合室の一郭で静かに待っているので、アーサを近くで見るだけで癒されると言ってくださる方もいるほどです。このような経験を通して、どんなサービスも、法律や条例が整備されるだけでは足りなくて、それらの趣旨や意味を理解し、温かく対応する人たちの〈心〉があってはじめて、実のあるサービスに成長していくのだと教えられました。キャリアウーワンのアーサの活動範囲がさらに広がることを切に願っています。
「身体障害者補助犬法」をご存知ですか
「身体障害者補助犬法」は、人が立ち入るところはどこでも補助犬を受け入れることを義務付けた法律です。視覚障害者、聴覚障害者、身体障害者のために働く、盲導犬、聴導犬、介助犬は、一般施設への同伴が認められています。補助犬は特別な訓練を受けており、障害のある方のパートナーです。ペットではありません。公共の施設、交通機関など、一緒に同伴することができます。他にもスーパー、飲食店、病院、ホテルなどの施設でも補助犬を連れて入店、来院することができます(「障害者ドットコム」より抜粋。なお、身体障害者補助犬法の詳細は厚生労働省のサイトhttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/hojyoken/html/a01.html でご確認ください)。
「障害者差別解消法」が施行され、八王子市においても差別禁止条例の見直しも行われております。補助犬の受け入れを理解し、みんなが共存できる社会の実現に向けて前進していきましょう。(編集部)
【 連載コラム B型肝炎闘病記 パオ 小濵 義久】
闘病史 その10
ステロイド離脱療法の開発話は、そのことを記した記事のコピーを熊田Drから直接もらった。ベッドサイドか廊下の立ち話でも出てきて、その女性が現在丁度入院しているという事で話が盛り上がった。大阪の人で旧制大手前高等女学校を卒業されたらしいと知り、ならば私の大先輩であることを告げると、病室を教えてくれた。その当時は、個人情報保護法というものがまだなく、こういうことが可能だった。病室の入り口には名札が掲げられていた。今では考えられないことである。おおらかな時代であった。
旧制大手前高女は、戦後大阪府立大手前高校と名称を変えて存続し、130年ほどの歴史を持つ。「金蘭会」という同窓会組織を持っており、東京支部の毎年の総会には旧制高女を卒業した90歳前後の先輩が来られることもある。見ず知らずの人ではあるが、旧制高女を出た大先輩と、大阪とは遠く離れた川崎、しかも虎の門病院分院に同じ時期に入院しているという出会いは、まさに天文学的な偶然であり、奇跡とも言える。そして彼女がきっかけで開発されたステロイド離脱療法の恩恵に私が預かろうとしているこの不思議さ。
お礼がてら、ご挨拶も兼ねて病室を訪問させて戴いたが、芳しい反応はなかった。しかし、その女性4人部屋に話好きの社交的なおばさまがいて、上記経緯を知って不思議ですねと話し掛けてきて下さった。関西なまりなので、出身を訊くと香川とおっしゃった。実は私のルーツは両親とも徳島であり、母方は瀬戸内海で暴れまわっていた河野水軍の末裔である事を告げた。そんな会話をしていてすっかり仲良くなり、その後20年近く家族ぐるみでお付き合いさせて戴いた。
その女性は当時の消化器科(肝臓科とは呼んでいなかった)の部長である吉場Drの奥さんの知り合いで、熊田Drに診てもらうように言われたそうである。彼女はルポイド肝炎という自己免疫性疾患に罹っており、ステロイドを使いながら、炎症を抑えて悪化を防ぐしか方法がないのだった。ステロイドの真っ当な使い方をされていた。彼女から吉場Drのお人柄を知るところとなり、熊田Drの幸運を感じた。ひいては私の幸運にもつながっていた。
それ迄の肝臓治療の常識を覆すような治療仮説(ステロイドの真逆の使用法)だったから、普通なら潰されていても何の不思議もなかったというのが当時の医学の世界である。山崎豊子の「白い巨塔」という本が大ヒットし、テレビドラマや映画にもなったので、ご覧になった方もおいでだろう。医学界というのがどれほど封建的な社会であったかがよく分かる。何より吉場Drの懐の深さが今回の発見の大きな礎となっていたのだ。私は未だに吉場Drへの感謝の気持ちを忘れないでいる。(次号へ続く)
通信本文はここまで。