八障連通信326号をアップします。
通信本文はここから。
【事務局通信Vol.39】
7/27、ヒューマンケア協会代表の中西正司氏を講師としてお招きして行われた「介護保険と総合支援法の統合に関する」学習会は、八障連加盟の団体だけではなく、高齢者福祉関係の方々にもご参加いただき、この問題に関する関心の高さをうかがわせました。学習会の内容については、今号の記事(「介護保険と支援法統合問題に関する学習会を終えて」)においてご確認いただくとして、現段階では「介護保険と総合支援法の統合」は、「障がい者福祉サービスの質や量の低下を招く」ことなどの問題点が指摘されています。現状では、将来どのような「制度」になるかの全容がわからず、この問題の議論の推移を見つつではありますが、このような学習会を積み重ねて議論・検討していくということになりました。
八障連通年の主要活動である恒例の「福祉課との懇談会」については、8月開催の方向で検討してきましたが、市とのスケジュール調整の結果、10月後半から11月中旬での開催となります。日程については、確定次第通信にてお知らせいたします。テーマについても運営委員会で検討した結果、①「生活保護問題」について、②並木福祉会から提起のあった「児童の移動支援」問題、③「介護保険制度」についてとなる予定です。なお、次回8/31(木)の運営委員会では、事前学習として「生活保護制度の居宅生活安定化自立支援事業について」の学習会を予定しています。ぜひご参加ください。
【編集だより】
7月26日は、相模原の「津久井やまゆり園」事件が起きてちょうど1年目の日。報道によると当日は、犠牲者を悼(いた)む当地での献花や、事件の背景を考える複数の集いが行われたとのこと。この日、横浜市戸塚区の男女共同参画センターにおいて、「共に生きる社会」を考える7.26神奈川集会が開催されるというので「ほっとスペース八王子」の仲間と参加した。300名を超える当事者の方、支援者の方、事業者の方が参加されていた。講演に立った、自身も重度の知的障害の息子さんをもつ早稲田大学の岡部耕典教授は、息子さんを自立生活させている経験を踏まえて、「一般論で、施設を建て替えないで街で暮らせと主張するのではなく、一人一人が私と一緒に地域で暮らそうと声かけすることが大切」と発言されていた。この事件を風化させることなく、障がい者が排除されることのない社会を作るために必要なことは何かを考えさせる集いだった。(Y) ※岡部教授の講演会が10/8(日)労政会館であります(詳細は後日発表)。
【介護保険と支援法統合問題に関する学習会を終えて 八障連代表 杉浦 貢】
7月27日、新年度になってから最初に開いた学習会では、ヒューマンケア協会代表、中西正司さんに、障害当事者が65歳を越えて「障害福祉サービス」から「介護保険サービス」に移行した場合、介護保険に移行した後、受けられるサービスの量や質が低下するという問題、さらには厚労省が進めようとしている社会福祉全般に渡る制度改革…『我が事』『丸ごと』の地域共生社会の実現に向けた取り組みについてもお話をいただきました。この問題については厚労省から市町村にも通達が降りており、八王子市においても、①一律に介護保険サービスを優先的に利用するものではなく、申請者の個別の状況に応じ、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能かを判断。②市町村が適当と認める支給量が介護保険サービスのみによって確保することができないと認められる場合等には、障害者総合支援法に基づくサービスを受けることが可能。③障害福祉サービス固有のサービスと認められるものを利用する場合については 、障害者総合支援法に基づくサービスを受けることが可能という考え方を示してはいますが、一方で市として独自に支援できる体力は限られているとの声もあり、どこまで従来通りのサービスを継続できるかは依然として不透明であると言えます。
中西さんは、障害者ケアマネジメントの中のセルフケアプラン制度を高齢者にも適応し、サービス利用者のニーズに寄り添ったものにしていくこと。居宅サービス計画の作成についても障害福祉サービスの居宅サービスや重度訪問介護を主に提供している事業所の認定基準を緩和することによって、障害福祉サービス派遣事業所のケアマネジャーの支援によるセルフケアプラン作成を従来の基準通りの認定基準で、なおかつ介護保険対象者にも継続して利用できるようにし、この基準自体が介護保険の認定基準と齟齬(そご)しないようなアセスメント基準を介護保険の中で障害者のみに適用できるようにし、障害手帳所持者が65歳以降も現状のサービスが完璧に使えるようにすることを訴えておられました。「我が事・丸ごと」の地域共生社会は、まず財政ありきで議論が進められています。「財政がない」ことを理由に、公助なくして、自助と共助を強調しています。
福祉的な支援が必要な場合は、国が責任をもつのではなく、それぞれの地域で「我が事」として「支え合い」、障害や高齢、子どもの「サービス」もすべて同じ施設内で同じ支援者が「丸ごと」行い、かつ障害者や高齢者、子どもなどの利用者同士で「支え合う」ことを求めます。こうした動向に対して、中西さんも「障害、高齢、子どものすべてを支援するなんてやれるわけがない。専門性を軽く見ている」「専門的な支援が必要な人は福祉から排除されていく」「これまで積み上げてきた障害関係の法律の体系をすべて変えることになるが、本当にそんなことをやるのか」など、懸念を述べておられました。
「我が事・丸ごと」地域共生社会は、これまでの社会福祉のあり方をくつがえす大きな制度改革であることはまちがいあいません。今後は、当事者抜きにして、「地域力強化」「公的サービス改革」「専門人材」といった3つのワーキンググループで議論が進められていきます。どのような議論になっていくのか注視し、その問題点を明らかにすること、福祉を壊す制度改革に抗していくことが必要になっています。障害福祉サービスと介護保険サービスの統合、そして「我が事丸ごと」の制度改革は、このまま行けば障害者にとっても高齢者にとっても生きづらく暮らしにくい社会を作りかねないものであるように思われてなりません。
ご承知のように八障連は障害当事者と支援者によって続いてきた歴史があります。しかし今後は、より良い八王子の福祉を作っていくために、高齢者の事業所とも連携し、声を上げていくことが必要であると感じました。今回、福祉部高齢者福祉課のご協力により、包括支援センター様に学習会の開催を周知したところ、たくさんの高齢者福祉の関係者にご参加をいただきました。貴重なお話をいただいた中西さん。学習会の開催を事前周知してくださった方々。そして当日参加してくださった全てのみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。今回の学習会で共有された内容については、八障連としても一度きりのイベントで終わらせず、引き続き取り組んでいきたいと考えています。再度このような学習会を開く際には通信にてお知らせをいたしますので、ぜひ、多数のご参加をよろしくお願いいたします。
【特別寄稿 京都研修レポート 「日本臨床心理学会」に参加して ほっとスペース八王子 代表 新道 充史】
6月16日より18日まで、日本臨床心理学会が京都で開催されました。この学会に参加したほっとスペース八王子の新道充史代表にレポートを執筆していただきました。日本臨床心理学会とは、『「臨床心理学やそれに基づく現場の活動について、様々な立場や角度からその行為を考えている学会」です。 (中略) 社会的な視点や生活者としての視点を大切にしながら、専門家もそのサービスを受ける側も共に納得し、 自己変革を志向していけるような、真の臨床心理学について考えていこうとしています。(以下略)』との立場から活動している団体です。(http://nichirinshin.info/about.htmlより抜粋)。(編集部)
去る6月16日から18日まで日本臨床心理学会の学術会議に出席するために京都へ出かけた。京都駅から北東へ10キロあまり、関西セミナーハウスというところが会場である。セミナーハウスは、キリスト教系の合宿研修施設だが、緑に囲まれ、日本庭園などもあってかなりオリエンタルな雰囲気。今回の研修のお目当ては、16日の「前進友の会」(就労支援B型の「やすらぎの里共同作業所」をつかさどる患者会)40周年記念行事と、17日の患者-主治医対談である。まず、「前進友の会」の40周年記念行事である。「前進友の会」は、京都・十全会病院(現・京都東山老人サナトリウム)の元患者が、アパートで共同生活を始めたのが始まりである。十全会病院とはいろいろあったらしい。患者会として発足したのは1976年。でも40周年は今年行っている。現在会員は20名以上。この数字は、就労Bとしてではなく、患者会としての人数だ。好きな時に通所し、利用し、好きな時間に帰っていく。長期間利用しない人もいる。ときどきやってくる人もいる。原則月曜日に京都市内の岩倉病院へお見舞い活動をし、火曜日と金曜日に食事会、木曜日に全体ミーティングといった流れはあるが、基本的になんの強制もなく、自由気まま、のんびりやっている。そして時々レクリエーションに出かけていく。 話を40周年記念行事に戻す。
当日、会場にやってきた利用者は4人。そのうちの3人がそれぞれの持ち味を活かした出し物を披露した。いち会員の病歴、紙芝居、そして外郎売。とりとめがないようで、これこそが「前進友の会」らしさなのではないだろうか。そして2日目の患者-主治医対談。ここで参加した会員が話す。金曜日はいつもどおり食事会だったと。会員は人によって症状が違うし、毎日はしんどい人だっている。40周年だからといって何ら特別なことでもなく、何かしたい人は何かやるし、そうでない人はいつもどおり。患者と主治医の対談の内容について、あまり細かく詳(つまび)らかに書くことはできないが、非常に盛り上がった対談となった。対談の最後に、「前進友の会」の患者会としての在り方を話して終わった。それによると、いちばん大事なのは、「食事会とレク」だという。このことで、会員、利用者間のつながりができ、はてはスタッフをも仲間としてつながっている。外向きには、「前進友の会」との接点を呼びかけること、「食事会に参加してみませんか?」と。そして地域社会との関係性。社会的、政治的運動は優先度が最後だという。それこそがまさに「前進友の会」の真骨頂だった。筆者は、そんな「前進友の会」がいつまでも続くよう願わずにはいられない。筆者が思うに、このスペースで、「前進友の会」を語りつくすことはできない。もしできることなら、「前進友の会・やすらぎの里共同作業所」まで行って、そこで過ごすことが、「前進友の会」を知ることだ。好きなようにのんびり過ごし、あるいは「なにもしない」、このこと自体がいかに貴重でかけがえのないことであるか知ることができる。筆者もいつかまた、京都へプライベートででも、遊びに行きたいと思っている。(了)
【連載コラム vol.13 『混んだ エレベータ エレベータ ーの中で …』 ハーネス 八王子 鈴木 由紀子】
毎日のように街を歩いていると、同じ障害者として考えさせられる衝撃的な光景に出会うことがある。
食事や買い物をする人たちで混雑した少し前の日曜のお昼すぎ、私は同郷の友達と久しぶりに会っていた。JR.八王子駅近くのビルに入っている日本そば屋で、季節のおそばをおいしくいただいて、エレベーターで1階に下り立った途端に、「あんたね、こんなとき、視覚障害者に対しては〈すみません〉では済まないんだよ!」という男性の怒ったような声がすぐ背後から聞こえてきて、思わずドキッとした。それで、同様に目の見えない私たちが彼に何かいけないことをしたのかと思って、「すみません。私たちも目が見えないんです」と、とにかく謝った。ところがその男性は、「いや、そうじゃない、あなたたちに言っているんじゃありません」と言いつつ、その後も誰かに向かって、ぶつぶつと何かを訴えていた。
そのときどんなことが起こっていたのか、全盲の私たちに、はっきりした経緯はつかめない。しかし、そこは狭いエレベーターの中。もしかしたら、途中の階で降りようとした人が背後からその男性を押しのけるような格好になり、体のどこかに触れて彼を不愉快にさせたのかもしれない。数十年間、都心で混んだ通勤電車を利用していた私には、そんな光景が容易に想像できた。数秒間のエレベーターの停止時間内に何人もの人が乗り降りするのだから、周囲の人が状況を察そして、どちらかに寄って、降りる人が通れる隙間をつくるという配慮をするのだろう。しかし悲しいことに、目が見えないその男性には、そんな状況がつかみにくい。そして、彼が周囲の人たちに不快感を示したことだけが目立ってしまうのだろうと想像している。
そのときの私も「こんな小さなことで腹を立てて、不快感を露わにしなくてもいいのに」という思い込みをして、彼の心の動きを誤解していたように思う。もし、そばにいた誰かが彼に対して、その場で実際に目にした光景を説明してあげたら、彼も実情を理解したのではないだろうかと思い直している。知らない人同士が忙しく行き交う街の中で、そんな心豊かなふれ合いの場面もあるといい。
夏休みのお出かけで混雑する八王子駅の構内を、盲導犬のアーサにしっかりお仕事をしてもらって歩きながら、「誰か」にそんな我がままな期待をしてしまう私がいる。
【編集後記】
今号では、7/27に行われた「介護保険と総合支援法の統合問題」に関する学習会の報告を八障連杉浦代表にまとめていただき、また「ほっとスペース八王子」の代表である新道氏に「日本臨床心理学会」に参加したレポートを寄稿していただきました。ともに読みごたえのある記事となっておりますので、ぜひ目を通してみてください。/北海道旭川で緊急入院した、「闘病記」を好評連載中の小濱さんが八王子にもどりリハビリ中です。次号より「闘病記」を再開するとのこと、ご期待ください。/引き続き、会員団体からの問題提起・ご意見を募集しております。投稿をお待ちしております。(編集部)
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【事務局通信Vol.39】
7/27、ヒューマンケア協会代表の中西正司氏を講師としてお招きして行われた「介護保険と総合支援法の統合に関する」学習会は、八障連加盟の団体だけではなく、高齢者福祉関係の方々にもご参加いただき、この問題に関する関心の高さをうかがわせました。学習会の内容については、今号の記事(「介護保険と支援法統合問題に関する学習会を終えて」)においてご確認いただくとして、現段階では「介護保険と総合支援法の統合」は、「障がい者福祉サービスの質や量の低下を招く」ことなどの問題点が指摘されています。現状では、将来どのような「制度」になるかの全容がわからず、この問題の議論の推移を見つつではありますが、このような学習会を積み重ねて議論・検討していくということになりました。
八障連通年の主要活動である恒例の「福祉課との懇談会」については、8月開催の方向で検討してきましたが、市とのスケジュール調整の結果、10月後半から11月中旬での開催となります。日程については、確定次第通信にてお知らせいたします。テーマについても運営委員会で検討した結果、①「生活保護問題」について、②並木福祉会から提起のあった「児童の移動支援」問題、③「介護保険制度」についてとなる予定です。なお、次回8/31(木)の運営委員会では、事前学習として「生活保護制度の居宅生活安定化自立支援事業について」の学習会を予定しています。ぜひご参加ください。
【編集だより】
7月26日は、相模原の「津久井やまゆり園」事件が起きてちょうど1年目の日。報道によると当日は、犠牲者を悼(いた)む当地での献花や、事件の背景を考える複数の集いが行われたとのこと。この日、横浜市戸塚区の男女共同参画センターにおいて、「共に生きる社会」を考える7.26神奈川集会が開催されるというので「ほっとスペース八王子」の仲間と参加した。300名を超える当事者の方、支援者の方、事業者の方が参加されていた。講演に立った、自身も重度の知的障害の息子さんをもつ早稲田大学の岡部耕典教授は、息子さんを自立生活させている経験を踏まえて、「一般論で、施設を建て替えないで街で暮らせと主張するのではなく、一人一人が私と一緒に地域で暮らそうと声かけすることが大切」と発言されていた。この事件を風化させることなく、障がい者が排除されることのない社会を作るために必要なことは何かを考えさせる集いだった。(Y) ※岡部教授の講演会が10/8(日)労政会館であります(詳細は後日発表)。
【介護保険と支援法統合問題に関する学習会を終えて 八障連代表 杉浦 貢】
7月27日、新年度になってから最初に開いた学習会では、ヒューマンケア協会代表、中西正司さんに、障害当事者が65歳を越えて「障害福祉サービス」から「介護保険サービス」に移行した場合、介護保険に移行した後、受けられるサービスの量や質が低下するという問題、さらには厚労省が進めようとしている社会福祉全般に渡る制度改革…『我が事』『丸ごと』の地域共生社会の実現に向けた取り組みについてもお話をいただきました。この問題については厚労省から市町村にも通達が降りており、八王子市においても、①一律に介護保険サービスを優先的に利用するものではなく、申請者の個別の状況に応じ、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能かを判断。②市町村が適当と認める支給量が介護保険サービスのみによって確保することができないと認められる場合等には、障害者総合支援法に基づくサービスを受けることが可能。③障害福祉サービス固有のサービスと認められるものを利用する場合については 、障害者総合支援法に基づくサービスを受けることが可能という考え方を示してはいますが、一方で市として独自に支援できる体力は限られているとの声もあり、どこまで従来通りのサービスを継続できるかは依然として不透明であると言えます。
中西さんは、障害者ケアマネジメントの中のセルフケアプラン制度を高齢者にも適応し、サービス利用者のニーズに寄り添ったものにしていくこと。居宅サービス計画の作成についても障害福祉サービスの居宅サービスや重度訪問介護を主に提供している事業所の認定基準を緩和することによって、障害福祉サービス派遣事業所のケアマネジャーの支援によるセルフケアプラン作成を従来の基準通りの認定基準で、なおかつ介護保険対象者にも継続して利用できるようにし、この基準自体が介護保険の認定基準と齟齬(そご)しないようなアセスメント基準を介護保険の中で障害者のみに適用できるようにし、障害手帳所持者が65歳以降も現状のサービスが完璧に使えるようにすることを訴えておられました。「我が事・丸ごと」の地域共生社会は、まず財政ありきで議論が進められています。「財政がない」ことを理由に、公助なくして、自助と共助を強調しています。
福祉的な支援が必要な場合は、国が責任をもつのではなく、それぞれの地域で「我が事」として「支え合い」、障害や高齢、子どもの「サービス」もすべて同じ施設内で同じ支援者が「丸ごと」行い、かつ障害者や高齢者、子どもなどの利用者同士で「支え合う」ことを求めます。こうした動向に対して、中西さんも「障害、高齢、子どものすべてを支援するなんてやれるわけがない。専門性を軽く見ている」「専門的な支援が必要な人は福祉から排除されていく」「これまで積み上げてきた障害関係の法律の体系をすべて変えることになるが、本当にそんなことをやるのか」など、懸念を述べておられました。
「我が事・丸ごと」地域共生社会は、これまでの社会福祉のあり方をくつがえす大きな制度改革であることはまちがいあいません。今後は、当事者抜きにして、「地域力強化」「公的サービス改革」「専門人材」といった3つのワーキンググループで議論が進められていきます。どのような議論になっていくのか注視し、その問題点を明らかにすること、福祉を壊す制度改革に抗していくことが必要になっています。障害福祉サービスと介護保険サービスの統合、そして「我が事丸ごと」の制度改革は、このまま行けば障害者にとっても高齢者にとっても生きづらく暮らしにくい社会を作りかねないものであるように思われてなりません。
ご承知のように八障連は障害当事者と支援者によって続いてきた歴史があります。しかし今後は、より良い八王子の福祉を作っていくために、高齢者の事業所とも連携し、声を上げていくことが必要であると感じました。今回、福祉部高齢者福祉課のご協力により、包括支援センター様に学習会の開催を周知したところ、たくさんの高齢者福祉の関係者にご参加をいただきました。貴重なお話をいただいた中西さん。学習会の開催を事前周知してくださった方々。そして当日参加してくださった全てのみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。今回の学習会で共有された内容については、八障連としても一度きりのイベントで終わらせず、引き続き取り組んでいきたいと考えています。再度このような学習会を開く際には通信にてお知らせをいたしますので、ぜひ、多数のご参加をよろしくお願いいたします。
【特別寄稿 京都研修レポート 「日本臨床心理学会」に参加して ほっとスペース八王子 代表 新道 充史】
6月16日より18日まで、日本臨床心理学会が京都で開催されました。この学会に参加したほっとスペース八王子の新道充史代表にレポートを執筆していただきました。日本臨床心理学会とは、『「臨床心理学やそれに基づく現場の活動について、様々な立場や角度からその行為を考えている学会」です。 (中略) 社会的な視点や生活者としての視点を大切にしながら、専門家もそのサービスを受ける側も共に納得し、 自己変革を志向していけるような、真の臨床心理学について考えていこうとしています。(以下略)』との立場から活動している団体です。(http://nichirinshin.info/about.htmlより抜粋)。(編集部)
去る6月16日から18日まで日本臨床心理学会の学術会議に出席するために京都へ出かけた。京都駅から北東へ10キロあまり、関西セミナーハウスというところが会場である。セミナーハウスは、キリスト教系の合宿研修施設だが、緑に囲まれ、日本庭園などもあってかなりオリエンタルな雰囲気。今回の研修のお目当ては、16日の「前進友の会」(就労支援B型の「やすらぎの里共同作業所」をつかさどる患者会)40周年記念行事と、17日の患者-主治医対談である。まず、「前進友の会」の40周年記念行事である。「前進友の会」は、京都・十全会病院(現・京都東山老人サナトリウム)の元患者が、アパートで共同生活を始めたのが始まりである。十全会病院とはいろいろあったらしい。患者会として発足したのは1976年。でも40周年は今年行っている。現在会員は20名以上。この数字は、就労Bとしてではなく、患者会としての人数だ。好きな時に通所し、利用し、好きな時間に帰っていく。長期間利用しない人もいる。ときどきやってくる人もいる。原則月曜日に京都市内の岩倉病院へお見舞い活動をし、火曜日と金曜日に食事会、木曜日に全体ミーティングといった流れはあるが、基本的になんの強制もなく、自由気まま、のんびりやっている。そして時々レクリエーションに出かけていく。 話を40周年記念行事に戻す。
当日、会場にやってきた利用者は4人。そのうちの3人がそれぞれの持ち味を活かした出し物を披露した。いち会員の病歴、紙芝居、そして外郎売。とりとめがないようで、これこそが「前進友の会」らしさなのではないだろうか。そして2日目の患者-主治医対談。ここで参加した会員が話す。金曜日はいつもどおり食事会だったと。会員は人によって症状が違うし、毎日はしんどい人だっている。40周年だからといって何ら特別なことでもなく、何かしたい人は何かやるし、そうでない人はいつもどおり。患者と主治医の対談の内容について、あまり細かく詳(つまび)らかに書くことはできないが、非常に盛り上がった対談となった。対談の最後に、「前進友の会」の患者会としての在り方を話して終わった。それによると、いちばん大事なのは、「食事会とレク」だという。このことで、会員、利用者間のつながりができ、はてはスタッフをも仲間としてつながっている。外向きには、「前進友の会」との接点を呼びかけること、「食事会に参加してみませんか?」と。そして地域社会との関係性。社会的、政治的運動は優先度が最後だという。それこそがまさに「前進友の会」の真骨頂だった。筆者は、そんな「前進友の会」がいつまでも続くよう願わずにはいられない。筆者が思うに、このスペースで、「前進友の会」を語りつくすことはできない。もしできることなら、「前進友の会・やすらぎの里共同作業所」まで行って、そこで過ごすことが、「前進友の会」を知ることだ。好きなようにのんびり過ごし、あるいは「なにもしない」、このこと自体がいかに貴重でかけがえのないことであるか知ることができる。筆者もいつかまた、京都へプライベートででも、遊びに行きたいと思っている。(了)
【連載コラム vol.13 『混んだ エレベータ エレベータ ーの中で …』 ハーネス 八王子 鈴木 由紀子】
毎日のように街を歩いていると、同じ障害者として考えさせられる衝撃的な光景に出会うことがある。
食事や買い物をする人たちで混雑した少し前の日曜のお昼すぎ、私は同郷の友達と久しぶりに会っていた。JR.八王子駅近くのビルに入っている日本そば屋で、季節のおそばをおいしくいただいて、エレベーターで1階に下り立った途端に、「あんたね、こんなとき、視覚障害者に対しては〈すみません〉では済まないんだよ!」という男性の怒ったような声がすぐ背後から聞こえてきて、思わずドキッとした。それで、同様に目の見えない私たちが彼に何かいけないことをしたのかと思って、「すみません。私たちも目が見えないんです」と、とにかく謝った。ところがその男性は、「いや、そうじゃない、あなたたちに言っているんじゃありません」と言いつつ、その後も誰かに向かって、ぶつぶつと何かを訴えていた。
そのときどんなことが起こっていたのか、全盲の私たちに、はっきりした経緯はつかめない。しかし、そこは狭いエレベーターの中。もしかしたら、途中の階で降りようとした人が背後からその男性を押しのけるような格好になり、体のどこかに触れて彼を不愉快にさせたのかもしれない。数十年間、都心で混んだ通勤電車を利用していた私には、そんな光景が容易に想像できた。数秒間のエレベーターの停止時間内に何人もの人が乗り降りするのだから、周囲の人が状況を察そして、どちらかに寄って、降りる人が通れる隙間をつくるという配慮をするのだろう。しかし悲しいことに、目が見えないその男性には、そんな状況がつかみにくい。そして、彼が周囲の人たちに不快感を示したことだけが目立ってしまうのだろうと想像している。
そのときの私も「こんな小さなことで腹を立てて、不快感を露わにしなくてもいいのに」という思い込みをして、彼の心の動きを誤解していたように思う。もし、そばにいた誰かが彼に対して、その場で実際に目にした光景を説明してあげたら、彼も実情を理解したのではないだろうかと思い直している。知らない人同士が忙しく行き交う街の中で、そんな心豊かなふれ合いの場面もあるといい。
夏休みのお出かけで混雑する八王子駅の構内を、盲導犬のアーサにしっかりお仕事をしてもらって歩きながら、「誰か」にそんな我がままな期待をしてしまう私がいる。
【編集後記】
今号では、7/27に行われた「介護保険と総合支援法の統合問題」に関する学習会の報告を八障連杉浦代表にまとめていただき、また「ほっとスペース八王子」の代表である新道氏に「日本臨床心理学会」に参加したレポートを寄稿していただきました。ともに読みごたえのある記事となっておりますので、ぜひ目を通してみてください。/北海道旭川で緊急入院した、「闘病記」を好評連載中の小濱さんが八王子にもどりリハビリ中です。次号より「闘病記」を再開するとのこと、ご期待ください。/引き続き、会員団体からの問題提起・ご意見を募集しております。投稿をお待ちしております。(編集部)
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