成長ホルモンとウシ「危険な米国産ウシ」 3月17日

新谷弘実著「病気にならない生き方」という本では、牛乳などの乳製品が完全否定されている。毎日、愛飲していた私にとっても衝撃は大きかったが、真っ先に危惧されるのが学校給食ではないだろうか。生乳に含まれている脂肪の塊は、そのまま放置するとクリームの層になって浮上し膜をはるため、ホモゲナイザーという攪拌機を使って脂肪の塊を細かく砕く。その際、生乳の中に含まれている乳脂肪が酸素と結合し、錆びた脂である過酸化脂質に変化して、ガンや高血圧・心臓病の原因になるのだ。

搾乳直後の生乳は、抗酸化作用・抗炎症作用・抗ウイルス作用・免疫調節作用などで知られるラクトフェリンなどの体に良い成分を含んでいるが、雑菌の繁殖を防ぐために行われる加熱処理の段階で、それらは完全に失われてしまう。日本の加熱処理の主流は「超高温短時間殺菌法」で、120~130度で2秒間(または150度で1秒間)加熱する。ラクトフェリンなどの成分は、熱に弱く48度から破壊をはじめ115度で完全に破壊されてしまう。62度~65度30分加熱という低温殺菌法を行っても、ラクトフェリンなどの破壊を抑えることはできないのだ。

アトピー性皮膚炎や小児喘息が、牛乳など乳製品の摂取を止めたらピタッと治ることからも、いかに牛乳が人体にとって「毒」であるかがわかる。近年、花粉症などアレルギー症状を訴える患者が急増したのは、1960年代から始められた学校給食の牛乳が原因だと新谷医師は分析する。過酸化脂質を多く含む牛乳は、腸内細菌のバランスを崩し、腸内に活性酸素・硫化水素・アンモニアなどの毒素を発生させる。牛乳が、小児の白血病や糖尿病の原因になっていることをうかがわせる論文は、幾つもあるそうだ。

担当した患者のガンを二度と再発させない新谷医師は、患者に、乳製品と同時に脂肪やコレステロールを大量に含む肉類も出来る限り摂取しないよう指導する。肉類には、ライオンやトラに見られるように瞬発力と、確かに子どもの成長を速める作用とがある。しかしライオンやトラは、発達した筋肉がもたらす草食動物の持久力には叶わないし、成長促進は人間の老化を早めることと表裏一体なのだ。

新谷医師の主張を聞くだけでも、牛乳や肉類を摂取する気分にはならなくなるが、その上、BSE感染の恐怖と比肩するくらい重大なリスクが、実は米国産ウシには隠されている。成長ホルモンの問題だ。米国食肉輸出連合会が公式に発表しているように、米国産ウシには法律で認められた6種類の成長ホルモンを投与することが許されている。飼料効率を上げるために、殆どの米国産ウシに、成長ホルモンは投与されている。これらの成長ホルモンが牛乳や牛肉に残存し人体に蓄積されたら、女性ホルモンであれば女性化が、男性ホルモンであれば男性化が起こり、ガンをはじめ様々な病気を惹起する要因になるのだ。

1996年米国で、遺伝子組み換え微生物によって量産されたrBG(rconbinant Bovine Growth Hormone)という成長ホルモンを投与したウシの牛乳を飲んだ人に、乳ガンや大腸ガンを発症しやすいという研究論文が発表されている。rBGHは米モンサント社が製造し、遺伝子組み換え成長ホルモンとして米国で唯一認められたもので、全米15%の畜産農家が使用し、全米ウシの約30%が月2回のrBGH投与を受けている。

しかし、驚くべきことは、発ガン性が認められながらも、1993年、FDAがrBGHの使用を正式に認可している点だ。FDAは同時に、rBGHを使用したミルクか使用していないミルクかを見分けるための表示を、なんと、禁止する法律もつくっている。消費者の選択の権利を、完全に奪ってしまったのだ。

モンサント社の暴挙は、まだまだ続く。rBGHを使用したミルクのカナダでの流通を企てた同社が、カナダ政府に提出した申請書類の中には、動物実験で雄のラットに甲状腺腫が発生し、血中に発ガン物質であるIGF-1が活性を持って存在したと明記しているのだ。当然、カナダ政府は、このミルクの輸入を禁止する結論を出したが、FDAは、米国内での流通を許可している。とりもなおさず、モンサント社とFDAとの癒着が、その根底には存在する。最大の問題点は、現状では、米国から日本に輸入されている乳製品に、rBGH処方に由来する活性型IGF-1が混入していても、まったくなす術がないという点だ。勿論、罰則規定もない。

1999年スイス政府は、使用が禁止されているはずの2種類の成長ホルモンを、米国から輸入した牛肉から検出している。うち一つの、合成女性ホルモン「ジエチルスティルベストロール(DES)」は、投与すると肉質が柔らかくなり牛乳の出が良くなるため、1954年以来米国で使用されてきたものだが、DESを服用した女性患者から生まれた子どもが、思春期になると膣ガンや他のガンを発症しやすいことが判明し、1979年、米国でも家畜への使用を禁止していた。

スイスはもとより、EUは、成長ホルモンを使用した牛肉の輸入を全面的に禁止している。FDAにより禁止されていたにもかかわらず、DESが米国畜産農家によって使用されていた実態を踏まえると、日本政府は早急に、成長ホルモンを使用した牛肉の規制にも、EUなみに乗り出さなければならない。BSE対策のみならず、発ガン作用を有する成長ホルモンについても有害性を正確に認識して、米国産牛肉の輸入再開の是非を検討していかなければならないのだ。

仮に成長ホルモンが残留していたら、ウシ血清やゼラチンなどを原料とする医薬品にも影響がある。事態は深刻だ。これ以上の厚労省や農水省の不作為は許されない。いつまでも成長ホルモンの使用を許す米国産ウシには、世界の公衆衛生の観点からも厳しい評価を下すべきだ。

ホモゲナイズされ過酸化脂質を大量に含んだ牛乳には、発ガン性を有する成長ホルモンが残存している可能性も含まれている。先行するEUの対応策を見習って、被害が出る前に成長ホルモンへの備えも講じる必要がある。日本政府は、牛乳や牛肉に対する認識を抜本的に見直して、国民に正しい指針を示すべきだ。牛乳は、飲めば飲むほど毒ではないのか。このまま学校給食に取り入れ続けても良いのか。牛肉も、食べれば食べるほど人体を蝕んでいくのではないのか。国家の責任として、国は正しい「食の安全」政策を構築し、国民の健康をしっかりと守り抜いていかなければならないのだ。
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米国産牛肉使用の乳幼児用機内食について、JALから国交省への報告書(3/11の続き) 3月14日

JAL乳幼児用機内食に米国産牛肉が使用されていた件について、JALが国土交通省に提出した説明資料を入手することができた。行間からも読み取れるものがあるために、原文をそのまま以下に記す。

平成18年3月9日 ㈱日本航空インターナショナル客室サービス企画部
グアム発JALウェイズ便乳幼児食にご案内と異なる食材が使用された事例について

① 経緯
JO942/24JAN(GUM/NRT)にご搭乗の旅客(○○様~実名が表記されているが、個人情報のため伏せる)より弊社に対して、お子様が召し上がった特別食(BBML)に使用されていた牛肉の産地についてWEBを通じて1月26日に問い合わせがあった。機内食会社(LSG社)に確認したところ同27日、米国産牛肉の使用が判明。弊社では自主的に2003年12月の米国産牛肉の輸入禁止以来、機内食会社各社に対して、米国産牛肉の使用禁止を指示し、また弊社サイトにて米国産牛肉の使用を控えている旨告知していた。

② 機内食関連の対応
(ア) 機内食会社関連
● 米国産牛肉が2005年4月より当該機内食会社にてBBML用に使用されていた事実を確認。(1月27日までの間5,213食のBBMLのRQSTあり)
● 1月27日に、当該機内食会社は勿論、弊社使用のすべての機内食会社に対して、米国産牛肉の使用禁止につき再徹底を実施。
(イ) 精肉関連
● 牛肉の生産工場(SWIFT社コロラド州全米2位)に調査団(弊社スタッフ3名および専門家1名)を派遣し、屠畜・解体プロセスの視察を含め安全性調査を実施。以下のとおりBSEの管理体制が高水準であり、問題がないことを確認。
※ コロラド州ではBSE(狂牛病)は発生していない。
※ 当該工場では穀物飼料で肥育された牛のみを取り扱っている。
※ いわゆる「ヘタリ牛」(歩行に支障にある牛)については、厳格な識別検査が行われている。
※ 当該挽肉には生後30ヶ月未満の牛が使用されている。
※ 脊髄除去には最新の真空吸引方式が用いられており、飛散がない。
※ 危険部位の付着については、枝肉洗浄後の最終検査が厳格に行われている。
※ 挽肉は、危険部位を除いて製造されている。
(ウ) 米国産牛肉BSE関連
● 専門家の意見聴取を産業医ルート、機内食会社ルートにて実施。BSE感染のリスクが極めて低いことを確認。

③ 旅客関連の対応
● 米国産牛肉の使用事実を、電話にて説明。
● お詫び・報告を兼ねて2月18日(土)にご自宅近くにて面談を実施。

④ 今後の対応
● WEB(弊社サイトトップページ)にて添付のお詫びを掲載する。なお、機を同じく広報メモにて対外発表をおこなう。(以上) 
添付資料:WEB告知文(お詫び)~リンクは上記参照

このように、BSE問題に対するJALの認識の甘さは非常に心もとないものだ。JALから国交省に対する説明は、なんとこの説明文のみ。これでは搭乗者への説明責任を果たしたとは到底言いがたい。食したのが乳幼児だという点が、最大のポイントだ。この子どもたちが成長し成人してもなお、JALは、子どもたちの健康に責任を負う覚悟ができているのか、今ここではっきりさせなければならない。

この事件は、グアム発の便だったため、日本が米国産牛肉を輸入禁止にしていることに違反する行為にはならない。グアムの機内食会社から仕入れをする行為は、「輸入」ではないからだ。従って、JALが法的に罰せられることにはならず、責任の所在を政府が追及できないところが悩ましい。SWIFT社(コロラド州)は、香港にも輸出してはならない背骨付き牛肉を輸出していた、曰くつきのパッカーだ。ここには昨年12月、日本の厚労省・農水省調査団が査察に出向いており、現地調査の意義をあらためて再確認しなければならない結果となった。

最も不安視されるのは、乳幼児が食したものが挽肉であった点だ。②の(イ)に、「挽肉は危険部位を除いて製造されている」とのくだりがあるが、そもそも挽肉は、肉とはいえないような肉を骨から削りとってつくる、言わば捨て肉の部分の塊だ。もっと詳細に、挽肉の製造方法を開示してもらわなければ、安全性の判断はできない。

1月27日の機内食会社からの回答を受けて、JALは現地調査に出かけている。そこには専門家1名が同行したことになっているが、それは食品安全委員会の委員だという報道がある。JALのために、食品安全員会の肩書きを利用したのなら問題だ。成長ホルモンや鶏糞・チキンリッターを、飼料として本当に使用していないのか。穀物飼料のみを使用した牛だと発表しているが、誰もが納得するその根拠を、JALは提示する責任がある。

そしてもう一つ気になるのが、当該機内食を食したすべての乗客(乳幼児の家族)に、JALは今回の事実を報告しているのか否かという点だ。JALの発表によれが、○○氏以外に、5,212名の乳幼児(9ヶ月~2歳未満)が、米国産牛挽肉を食していることになる。JALはそれらすべての人々に、BSEリスクについて明確に説明責任を果たしていかなければならないことを認識しているだろうか。他にも数々の問題を抱えるJALだからこそ、この機内食についても完全にトレーサビリティを追求し、徹底した情報公開を行う必要がある。

5,213名の乳幼児の一生に、JALは責任を持たなければならないのだ。
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JALのミートソースは、本当に安全か!? 3月11日

これほど社会がBSE感染に対して敏感になっている状況の中で、機内食に米国産牛ひき肉を使用したJALの社会的責任は重大だ。恥も外聞も捨て去り内紛に明け暮れ安全管理もままならないJALグループは、米国産牛肉の使用発覚により、その信頼を完全に失墜させたと見るべきだ。よりによって、9ヶ月~2歳未満の乳幼児対象の、特別注文の機内食5,200人分というから驚きもひとしおだ。乗客の安全・安心が全てに優先されるべきところを、最優先どころか考慮に入れてもいないJALの企業体質は、内部の権力闘争が続く限り永遠に未解決だ。

まさに米国産牛肉の日本への輸入を禁止していた最中の2005年4月~2006年1月、米パッカー「SWIFT BEEF COMPANY」社(コロラド州)が精肉したひき肉を、グアムの機内食加工会社「LSG」社がミートソーススパゲッティとして納入していた。ひき肉というところが、更にリスクを増大させる。肉骨粉を飼料とせず検査体制・精肉方法ともに問題はなかったとして、JALは安全性を強調するが、認識の甘さを露呈したなんともまぬけな釈明だ。

SWIFT社は米国4大パッカーの一つである。2005年8月に発表されたデータによると、HACCP(衛生管理基準)・SRM除去・月齢制限などBSE感染予防のために定められた規則に違反した1,036例のうち日本向けパッカーの事例は41件。そのうちSWIFT社は14件(34%)。CargillTysonを抑え、群を抜いてコンプライアンスの低いパッカーであることがわかっている。

安部司著「食品の裏側」を紹介した際にも書いたように、ひき肉は言わば捨て肉の部分。骨にこびりついた残骸を削り取り加工したものだ。JALは、現地調査を行ったことを公表が遅れた理由の一つに挙げているが、何をどう現地調査したのか、その詳細を公表すべきだ。そして、直接肉骨粉を飼料としていなくても、肉骨粉を飼料とした鶏糞やチキンリッターを飼料としていないか。しかるべき点を、きちんと押さえているのか。JALに対して資料請求する必要がある。

米国産牛肉を吟味する上で、現在はBSE問題ばかりが強調されるが、実は米国産牛肉にはBSEリスク以外にもチェックすべき重大な問題がある。成長ホルモンだ。適度な脂肪・赤身の多い肉質・体重増加が早く飼料効率が良いという点で、米国産ウシには成長ホルモン剤が大量投与されている。1988年ソウルオリンピックで永久追放されたベン・ジョンソン(カナダ)のドーピング事件で話題になった「タンパク同化ステロイド」などがそれだ。米国食肉輸出連合会は、ホルモン剤残留による人体への影響は殆どないとしているが、成長ホルモンが発ガン作用(エストラジオール-17β)をはじめ様々な疾患を惹起することは周知の事実だ。

EUでは禁止され、国産和牛にも殆ど使用されていない成長ホルモンが、米国では6種類承認され、当然のように飼育効率を向上させるために積極的に使用されている。日本人が好む「霜降り肉」は、成長ホルモンを投与すると形成されにくいため、日本では成長ホルモンが殆ど投与されずその安全性も議論にならなかったが、BSE問題を機に、成長ホルモンの使用も含め米国産牛肉の安全性を真剣に再検討すべきだ。米国産牛肉を輸入しなければ済むというものではない。事態は世界の公衆衛生に関る重大な問題なのだ。

米国産ウシは、医薬品やサプリメント・化粧品などの原料として今尚使用され続けている。世界的に備蓄されているタミフルカプセルにも、米国産ウシゼラチンが使用されている。米国のvCJD患者の血液が血液製剤として日本に入ってくるリスクは、喫緊の最重要課題だ。目先の利益にとらわれて大局を見失うと、人類は将来、大変なしっぺ返しをくらうことになりかねない。科学的分野に性善説はあり得ない。最悪の事態を予測して事前にそれに備えることが、賢者の選択というものだ。

JALは、乳幼児用の機内食に、BSEリスクと成長ホルモンを含んだ米国産牛ひき肉を使用した過失を深刻にとらえ、人命を預かるナショナルフラッグとしての社会的責任を、徹底的に再認識しなければならない。どうしても権力闘争から脱却できないのなら、リスクマネジメントの観点から私はJALの解体を強く望みたい。

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企業利益が優先されるBSE 2月17日

 昨年の12月12日、米国産牛肉の輸入再開が決定されたのを受けて、直ちに輸入再開の手続きに踏み切った業者は、幾つもある。輸入再開を待ちに待っていた企業名と仕入れ先のパッカー(食肉処理施設)名を、私たちは知りたいと思う。しかし、輸入及び輸出業者の名称は、殆ど公開されていないのだ。吉野家が、真っ先に輸入再開した企業であることに相違はないが、情報は完全に非公開だ。

ここに、2月8日の衆議院予算委員会で、川内博史議員が提出した資料がある。輸入再開決定後から、脊柱混入事件までの間に米国産牛肉を輸入した業者と輸出した米国パッカーの一覧表だ。厚労省が川内議員の要請に基いて作成した資料だが、公表を拒否した企業が大半でリストとは名ばかり。しかし、一定の価値はある。

(資料①)

 「平成17年12月16日から12月31日 および 平成18年1月1日から1月20日までに食品衛生法に基づく食品の輸入届出が提出された米国・カナダ産牛肉について」(厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課検疫所業務管理室資料)

(資料②)

「解禁後第1便で輸入された米国産輸入牛肉の部位について」(動物検疫所成田支所資料)

 当然の疑問として、何故、全ての業者名が公開されないのかと川内議員が質問したところ、農水省はとんでもない回答を寄せている。「行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条二-イ」、すなわち、「公にすることにより、当該法人等または当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当すると言ってきたのだ!!信じがたい。法律をよく読めば、この文章の直前には、「ただし、人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く」との文言がある。農水省(厚労省も)は、肝心な部分を完全に無視している。国民の生命や健康よりも、企業利益を優先する農水省(厚労省も)なのだ。

米国産牛肉を輸入している業者と輸入元の米国パッカーの名称を公表しない理由がどこにあるというのだろう。安全に自信を持って輸入再開したのなら、企業は堂々とその名を明らかにすべきだ。厚労省も農水省も寝ぼけたことを言わないで、国民の生命・健康・生活を保護するためにこそ、情報公開法に基づいて、輸入・輸出業者名をきちんと公表すべきだ。トレーサビリティが明確に示されない以上、消費者は選択できるはずがない。

一方、既に疑問を投げかけているように、中外製薬は、抗インフルエンザ薬「タミフル」のカプセルについては、原料のウシゼラチンを米国産のものからBSE未発生国に変更した(とされる)にもかかわらず、抗HIV薬「フォートベイスカプセル」については、いまだに原産国を変更していない。

フォートベイスは米国ロッシュ社が開発したが、日本国内で使用されているものについては、現在では中外製薬が製造・販売している。中外製薬は、昨日付けで、フォートベイスカプセルの添付文書(説明書)を改訂し、次のような文章を記載した。

重要な基本的注意(2006.2.16改訂)

本剤で使用しているゼラチンは、アメリカ産のウシの骨(せき柱骨を含む)を原料として使用し、一般的に異常プリオンを不活化し得ると考えられる酸処理工程を経て製造されたものである。ゼラチンのこの製造方法は、EU委員会科学運営委員会により推奨されている。また、本剤の投与による伝達性海綿状脳症(TSE)感染の報告はない。本剤によるTSE伝播リスクは極めて低いと考えられるが、理論的危険性を完全には否定し得ないため、その旨を患者に説明することを考慮すること。

(改訂前の文章) 本剤で使用しているゼラチンは、脊椎を含むウシ骨を原料として使用し、酸処理工程を経て製造されたものである。ゼラチンは製造工程において不活化処理を行ったものであることから、一定の安全性が確保されていることを確認している。

 (改訂理由) 本剤に使用されているゼラチンの原料(ウシのせき柱骨を含む骨)の原産国であるアメリカ合衆国において牛海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)が発現したため、伝達性海綿状脳症(TSE:Transmissible Spongiform Encephalopathy)に関連する注意を自主改訂しました。

本剤のカプセル剤皮に含まれるゼラチンは、アメリカ合衆国を原産とするウシのせき柱骨を含む骨を原料としていますが、ゼラチンの製造工程を変更することによって本剤の品質に問題が生じる可能性があるため、現時点で原料を変更することができません。

本剤のゼラチンの製造工程は、一般に異常プリオンを不活化し得ると考えられる酸処理工程を含み、EU委員会科学運営委員会(Scientific Steering Committee)が推奨した方法*)で製造されています。また、厚生労働省の通知1)に従って理論的なリスク評価を行った結果から、治療上の有益性が危険性を上回ると判断しました。 しかし、本剤によるTSE伝播リスクの理論的危険性を完全に否定はできません。従って、本剤の使用に際しては、この点に関して患者様に説明していただき、ご理解を得た上での使用をお願い申し上げます。 なお、現在までに本剤の投与によるTSEの報告はありません。

アンダーラインを引いた部分に注目すると、ゼラチンの原産国を変更することは、ゼラチンの製造工程を変更することに等しいと理解されるが、原料の変更が直接製造工程にまで影響するとは到底思えない。理解に苦しむ主張だ。製造工程の変更というよりも、「カプセルメーカーの変更」の誤りではないか。カプセルの原料であるゼラチンの原産国が変更されたとしても、薬効までが変化するとは思えず、BSEの脅威を正しく理解しているものの主張とは、とても思えない論理がそこにある。フォートベイスカプセルの原産国を変更しないことは、企業利益を最優先した結果とみるべきだ。

同様に、リウマチの患者さんに直接注射されているエンブレルやレミケードの添付文書には、次のような文章が記載されている。

(重要な基本的注意)

(エンブレル) 本剤は、培養工程の初期段階で仔ウシ血清を用いて製造されている。この血清は、厳重な食餌管理下で成牛と隔離して飼育され、米国農務省により健康であると確認された米国産仔ウシ由来であり、伝達性海綿状脳症(TSE)回避のための欧州連合(EU)基準に適合している。ただし、本剤には血清は含まれていない。他の医薬品と同様に、本剤の投与によりTSEがヒトに伝播したとの報告はない。 このことから、本剤によるTSE伝播のリスクは極めて低いものと考えられるが、理論的リスクは完全には否定し得ないため、その旨を患者へ説明することを考慮すること。

(レミケード) 本剤の生産培地には、ウシの脾臓及び血液を加水分解した分子量1,000以下のアミノ酸及びペプチド等が添加されている。このウシの脾臓及び血液は、米国農務省の検疫により食用可能とされた健康な米国産ウシから得られている。米国では、伝達性海綿状脳症(TSE)の危険性を防ぐために臨床的・組織学的検査による動物の検査、動物性飼料のウシへの使用禁止及び輸入禁止措置等の防疫対策が取り続けられている。さらに製造工程での安全対策として、TSE伝播の原因である分子量約30,000のプリオン蛋白を除去できる工程として、限外ろ過処理を培地添加前に実施している。なお、この方法で実際にプリオンが除去できることを証明するために、意図的にウシ由来成分にプリオン蛋白を大量添加し、処理後にプリオン蛋白が除去されていることを、ヨーロッパや日本において食品の安全性を判断するために用いられているウエスタンブロット法で測定し、陰性であることを確認している。しかし、プリオン蛋白が存在する可能性は理論的には否定し得ないため、その旨を上記の安全性に関する対策とともに患者へ説明することを考慮すること。なお、本剤投与によりTSEをヒトに伝播したとの報告はない。

言うまでもなく、米国の飼料規制は極めて杜撰で危険だ。ウシが直接「肉骨粉」を食さなくても、ウシの飼料となる鶏は、脳や脊髄などの特定危険部位(SRM)からも作られた肉骨粉を飼料としている。その鶏糞やチキンリッター(鶏舎のゴミ・食べ残しの肉骨粉)が、ウシの飼料となっているのだ(年間100万トン、そのうち30万トンが肉骨粉という資料がある)。米国農務省の基準に適合したからといって、日本が求める安全基準に叶っているとはとても言い難い。牛肉は水際で食い止めることができても、医薬品は製薬メーカーの一方的な「安全基準」によって、強引に使用され続けていると見るべきだ。

私たちは、食肉ばかりでなく血液製剤を含む医薬品や化粧品さえもがBSEの恐怖にさらされていることを知り、適切な選択をしていかなければならない。そのためには、日本で使用される全ての米国産ウシのトレーサビリティが、明確に公開されることが必要だ。選択権は消費者にあることを、忘れてはならない。

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BSEと医薬品 2月15日

[米国産ウシ由来の原材料が使用されている医薬品](2006.2.14現在)

成分名(販売名)
・インターフェロン ガンマ-n1(オーガンマ100)
・インターフェロン アルファ(オーアイエフ250万IU、同500万IU、同1000万IU)
・乾燥ガスえそ抗毒素(乾燥ガスえそ抗毒素“化血研”)
・乾燥ボツリヌス抗毒素(乾燥ボツリヌス抗毒素“化血研”)
・乾燥濃縮人活性化プロテインC(注射用アナクトC2500単位)
●乾燥弱毒性おたふくかぜワクチン(乾燥弱毒性おたふくかぜワクチン「化血研」)
・乾燥濃縮人血液凝固第Ⅷ因子(クロスエイトM250、同500、同1000)
●インフリキシマブ(レミケード点滴静注用100 抗リウマチ薬) 
●ムロモナブ-CD3(オルソクローンOKT3注)
●肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(ニューモバクス 肺炎予防ワクチン)
・オクトコグアルファ(コージネイトF250IU注射用、同500IU注射用、同1000IU注射用)
・ルリオクトコグアルファ(リコネイト250、同500、同1000)
●イミグルセラーゼ(セレザイム中200U)
・A型ボツリヌス毒素(ボトックス中100)
●サキナビル(フォートベイスカプセル HIVプロテアーゼ阻害剤)
・トラスツズマブ(ハーセプチン注射用60、同150 乳癌の治療薬)
●リツキシマブ(リツキサン注10mg/ml(100mg/10ml)、リツキサン注10mg/ml(500mg/50ml)抗ガン剤)

【平成15年7月以降に新たに承認された医薬品】
●エタネルセプト(エンブレル皮下注用25mg 抗リウマチ薬)
●ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ注射用5mg 急性骨髄性白血病の治療薬)


米国産ウシ由来の原料を使用している医薬品について、厚生労働省は、速やかに原産国をBSEが発生していない国に変更するよう指導している。しかし、1月末厚労省が発表した資料によると、それにもかかわらず依然として米国産ウシ由来の原料を使用し続けている医薬品が上記19品目存在する。

●は、「ウシ血清」あるいは「ウシの骨髄」が原料に使用されている医薬品だ。薬害エイズの轍を踏まないように、速やかに原産国を切り替えるよう指導してもなお、何故、メーカーはいまだに変更しないのか。

例えば、抗HIV薬「フォートベイス」は、カプセルの原料となるゼラチンがウシ由来だ。販売元である中外製薬は、抗インフルエンザ薬「タミフル」のカプセルにつては、平成16年11月以降の出荷については原産国を変更したと発表しているのに、何故、フォートベイスカプセルは変更できないのか。フォートベイスカプセルの添付文書(説明書)には、「重要な基本的注意」の項目に、「ゼラチンは製造工程において不活化処理を行ったものであることから、一定の安全性が確保されていることを確認している。」と記されている。だったら何故、タミフルカプセルの原産国を変更する必要があったのか。中外製薬の対応には、一貫性がない。

「ウシ血清」を原料とする医薬品の添付文書(説明書)には、「伝達性海綿状脳症(TSE)=BSE伝播の理論的リスクを完全には否定し得ないので、疾病の治療上の必要性を十分に検討のうえ投与すること」と明記されている。勿論、この記載は、企業の逃げ道でしかない。仮にBSEに感染し、ヤコブ病を発症したとしても、添付文書に注意喚起の文章があることをたてに、企業は責任追及を免れるのだ。

おたふくかぜワクチンは、2歳~4歳の乳幼児が主な対象者だ。なんだか、ぞっとする。近年、高齢者に積極的に接種が勧められている肺炎予防ワクチンは、ウシの骨髄が原料に使用されている。BSEの潜伏期間は比較的長いので、高齢者への接種には抵抗がないとでもいうのか。抗HIV薬や抗リウマチ薬についても、ベネフィットが優先されると言わんばかりだが、実際これらの薬は、いったいどれほどの効果があるのか。原産国を切り替えることは、最低限の企業モラルであるはずだ。

血清や骨髄は、SRM(特定危険部位)そのものともいえる。注射薬やカプセル剤の原料にそれらを使用させたまま放置する厚労省の感覚が、私にはまったく理解できない。1日以上英国滞在歴のある人の献血を禁止することと、大きく矛盾する。今日の衆議院予算委員会でも、川内博史議員の質問に対して川崎厚労大臣は、なんと「(血液製剤など)は、化学的処理がされているので、BSEのリスクはない。」とはっきりと答弁していた!!これが、日本の公衆衛生の責任者たる厚労大臣の発言だ。日本国民を、あえて危険にさらす厚労大臣がいるだろうか!

BSEで最も重要なことは、SRMを含んでレンダリングされた肉骨粉を、牛の飼料としている点だ。「米国が肉骨粉の使用を全面的に禁止しない限り、牛肉は勿論のことウシ由来原料を使用する医薬品の輸入はできない」と、明確に日本政府は米政府に伝えるべきだ。クロをシロと簡単に書き換える米国のリスク管理は、日本とは比較にならないくらい甘い。小泉総理は、米国人は米国産牛肉を食べているのだから、日本が目くじらをたてるほど危険ではないと発言したが、とんでもなく大きな誤解だ。米国の消費者や外食・食品会社でさえ、米国の安全管理のあまさに警鐘を鳴らし始めている。米国でヤコブ病が集団発生していることや、アルツハイマーが激増していることも、小泉総理は承知していないのだ。

タミフルは、新型インフルエンザの流行に備え、全世界で備蓄が進められている。備蓄されたタミフルの中には、当然、米国産ウシ由来のものが存在する。世界の公衆衛生のためにも、米国は一刻も早く肉骨粉の使用を止めて、リスクを最大限取り除く体制を整えるべきだ。そして厚労省は、企業モラルに委ねるのではなく、上記19品目の原料原産国を、直ちに米国からBSE未発生国に切り替えるよう、期限を定めて警告すべきだ。厚労省の、これ以上の不作為は許されない。
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米国BSE検査体制の甘さ 2月11日

2004年11月、アメリカで2頭目のBSE感染牛が発見された。そもそも2頭目なんて少なすぎる。アメリカがBSEをひた隠しにしていることは容易に想像されるが、案の定、この2頭目でさえ、アメリカ農務省は「シロ」の判定を下そうとしていたことが判明した。共和党に限らずアメリカの政治家にとって、畜産業界は最大の支持勢力といえる。BSEが発覚すると死活問題になりかねない畜産業界は、政治家に圧力をかけ、検査をしないか、陽性の検査結果をねじ曲げるよう強要するのだ。

日本農業新聞によると、このダウナー牛から採取した脳を国立獣医研究所に送ったところ、3度にわたって「クロ」の判定結果が出たにもかかわらず、免疫組織化学検査と顕微鏡による検査では陰性だったとして、農務省は「シロ」の判定を下したそうだ。これに疑問を持った専門家たちが、日本でも採用しているウエスタン・ブロット法などによる検査を提案したが、農務省は「必要なし」と退け、無理やり「シロ」と断定したのだ。

この杜撰な検査結果に対し、農務省監査局が警告を発し、国立獣医研究所はついに、ウエスタン・ブロット法による検査を行った。その結果、3つのサンプルのうち1つが陽性と反応。念のため、英国の研究所で再確認をしたところ陽性であったため、半年以上の曲折を経てこの「2頭目」の感染が明らかになったのだ。

民主党に続き自民党の調査団も米国パッカーの視察に出かけたが、従って、加工処理の段階でどんなに精密にチェックしたところで、感染を隠蔽された牛がラインに乗っている可能性が高い以上、安全が科学的に証明されることはあり得ないのだ。全頭検査をしない米国では、BSE感染検査が実施されている牛は、食肉処理される牛の1%。へたり牛であっても、ノーチェックで処理されているのが現実だ。たとえ「日本向けの牛は、万全のチェックをしている」と当局が主張しても、「クロ」のものを「シロ」に書き換えてしまうような米国農務省を、誰が信用できようか。

米国が、牛の肉骨粉を鶏やブタに食べさせることを放任し、その肉骨粉入りの鶏糞が牛の飼料になっている以上、BSEの感染リスクは拭い去れない。ノーベル賞を受賞した米国の神経学者スタンリー・プルシナー氏は、少なくとも全てのダウナー牛を検査することから始めるべきだと警告している。昨年12月には、米国マクドナルドが、更には乳製品大手のランド・オ・レイクス社が、FDAに対して安全強化を求める意見書を提出している。米国の消費者そして食品業界でさえも、畜産業界の杜撰な安全管理に疑問を抱き始めているのだ。

明らかにされているだけでも米国では年間数百例に及ぶヤコブ病などプリオンが原因の疾患が報告されている。この中には、アルツハイマーと診断された患者は含まれておらず、ヤコブ病による死亡例の報告を義務付けていない州が半数以上あることを考慮すると、米国におけるヤコブ病患者は数千人にのぼることが予想される。米国が正式に発表している変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者は昨年までの5年間でたったの1名だが、ヤコブ病と診断されても、死亡したのち脳を解剖して調べない限り、孤発型か変異型かの区別はつかない。BSEをできるだけ隠蔽したい米国では、殆どの場合、脳が解剖されることはない。

恐ろしいことに、既に孤発型ヤコブ病は、米国各地で集団発生している。そして米国では、近年アルツハイマーが激増している。1975年には50万人だったものが2005年には450万人に、2050年には1千数百万人にのぼると推測されており、この中には、ヤコブ病患者が含まれていることはもはや否定できない。米国のアルツハイマー発症率が、宗教上、牛を食さないインド人の約1,000倍であることも、牛と疾病との関連を示唆している。

このような状況にあっても、畜産業界が政治家を抑え込む米国では、来年度のBSE検査に関る予算が、現行の1/10に削減されようとしている。米国政府は、畜産業界の言いなりになるあまり、米国消費者の食の安全をも、危険にさらしてしまっている。そんな驚愕の実態を踏まえると、米国国内での徹底した飼料規制と検査体制が確立されない限り、米国産牛肉が日本に輸入されることなど、絶対にあり得ないのである。

割安で効果的な肉骨粉を、米国農家が使用しなくなる唯一の手段は、法律で規制する以外にない。日本と米国とが、政治的な駆け引きの道具にするほど、BSE問題の底は浅くない。レンダリングによる肉骨粉と油脂がBSEの原因である以上、全世界の公衆衛生のために、WHOによる「肉骨粉の全面使用禁止」の勧告を、強く望みたい。
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