新型インフルエンザワクチン:優先接種「医療従事者」から調剤薬局を除外の不可解

厚労省は、新型インフルエンザワクチン接種にあたり、当面確保できる総量が限られており、その中から一定量が順次供給されることを理由とし、優先接種対象者を決めました。

その第一位が、既に接種が始まっている、接種そのものが治験のようなものだと言われている、「インフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者」です。厚労省は約100万人と推計していますが、現実には事務系スタッフなどもカウントされていたりと、うちわけは個々の医療機関によってまちまちです。

ところで、ここで言う「医療従事者」の中に、調剤薬局は含まれていません。当事者の薬剤師はもとより、院外処方箋を処方する医師までもが、このような厚労省の決定に当惑しています。

 医薬分業が6割を超える日本の医療体制において、院外処方箋を調剤し、薬を患者さんに手渡す場である保険調剤薬局は、病医院と同様に患者さんと直接対面・接触する施設です。

例えば、インフルエンザの患者さんにタミフルやリレンザが処方されると、院外処方箋の場合、保険調剤薬局の薬剤師がタミフルやリレンザを患者さんに手渡します。しかも異常行動など重大な副作用が懸念されるこれらの薬の使用に際しては、飲み合わせも含めて十分な説明が必要であり、調剤薬局の薬剤師がその任務を果たします。

特にリレンザは、吸入薬であるため、吸入器具の使い方の説明が不可欠であり、実際の器具を使ったデモンストレーションでは、患者さんにより密着して説明しなければなりません。

業務の実態を踏まえると、医療従事者を優先順位第一位にするのならば、当然調剤薬局の薬剤師もその対象にならなければ理にかないません。今回決定した医療従事者から調剤薬局を除外するという、あまりにも現実離れした厚労省の判断の根拠は何なのか、役所に問合せをしてもらったところ、次のような回答を得ました。

「薬剤師会から要望はあった。しかし、患者の診療に直接従事していないという判断で、調剤薬局は除外した。」

調剤薬局に関して、まったく間違った見解であることは明白です。これでは、厚労省は医薬分業を強力に推進しておきながら、その業務内容をまるで把握していないということになってしまいます。

平成21年6月現在、全国に保険薬局は52,358あります(日本薬剤師会資料)。平成18年12月31日時点、薬局に従事する薬剤師の数は125,254人です(厚労省資料)。そのすべてをカウントしたとしても、ワクチン供給の大勢に影響があるとは思えません。

厚労省は、今回のリスクマネジメント上、調剤薬局の立場を大きく誤解しています。医師と薬剤師とでは、厚労省の担当部局が異なっており、そういう縦割り行政の弊害も影響しているとは思いますが、リスクマネジメントにおいて、今回のような間違いがあってはなりません。

今後もし仮に、強毒性ウイルスのパンデミックに直面するようなことになれば、今回のようなリスクマネジメントでは不適切です。調剤薬局も処方医療機関と同様、診療の最前線の一翼を担っているという認識を、厚労省は持たなければなりません。

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