脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)の国の研究班が5日、診療指針の概要を発表した。現行の診断基準に当てはまらない程度の小さな髄液の漏れを診断対象に含める上、指針を使うことで症例に詳しくない医師も診断できるようになる。研究班代表の嘉山孝正・山形大医学部参与は「この指針により診断される患者はさらに増える」と説明した。

 研究班が東京都内で記者会見した。診療指針は12年間に及ぶ研究成果の集大成。少量の髄液漏れを示すと考えられるMRI(磁気共鳴画像化装置)の画像を新たに紹介し、対象を拡大する。発症原因や症状、治療法も掲載して今秋に公表する。

 髄液漏れは、一部の医師が2000年ごろから治療に取り組むようになったが、「髄液が漏れることはあり得ない」との反対意見が強く、医学界で論争が起きた。さらに、こうした見解の相違が原因で交通事故などの治療費をめぐる裁判も相次いできた。

 研究班は8学会の代表らが参加し07年に発足。MRIなどを使って髄液漏れを判定する診断基準で合意し、16年度に公的な医療保険の適用対象となった。

 ただ、この診断基準は典型的な髄液漏れの判定を目的にしており、研究班は基準に合致しないが関連性が疑われる症例について検討を続けていた。

 会見で研究班メンバーは「髄液漏れのことを解明しきれたわけではない」と繰り返した。同席した患者団体「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」の中井宏代表は「研究班に感謝したい。研究班以外にも多くの医師が研究を続けており、さらなる進展に期待している」と話した。【渡辺暖】     (毎日新聞) – 2019年07月05日(金) 18時48分