平方録

静夜思

寝室のちょうど頭の上に細長い縦長の窓があり、ブラインドを通して月の光が差し込んでくる。
今はやたらと明るい。
3時ころトイレに起きて、ちょっと覗いてみたらまん丸に見えた。
外の道も隣の家の屋根も白銀に光って見える。

まさに「静夜思」の世界である。

こんなときは昨日に引き続き、漢詩をひとつ。李白の五言絶句。

 静夜思

 牀前看月光
  
 疑是地上霜

 擧頭望山月

 低頭思故郷

 セイヤシ

 ショウゼン ゲッコウヲミル
 ウタガウラクハ コレ チジョウノシモカト
 コウベヲアゲテ サンゲツヲノゾミ
 コウベヲタレテ コキョウヲオモウ

寝台の前の床を照らす月光を見て、その白き輝きに、地上におりた霜ではないかと思った。そして頭をあげて山の端の月を望み、また、うなだれて故郷のことを思いめぐらすのである。(岩波文庫、唐詩選・下、前野直彬注解)

月の光を見ているのは、立身出世を遂げて都にいる人なのか、それとも左遷されて辺鄙な地方に追いやられ、膝を抱えて眠るような日々を送っている人なのか。
どちらにしても、じめじめっとしたところは感じられないので、多分、静かな穏やかな気持ちで来し方行く末を思い、故郷を偲んでいるのだと思う。

中学のころに習ったような気がするが、いつだったか定かではない。国語で漢詩をやるのは道理に合わないしなぁ。
手元の黄ばんだ岩波文庫の奥付きには「昭和三十八年十月十日 第二刷発行」とある。
ちょうど東京オリンピックの開会式のぴったり1年前ではないか。とすれば、15歳の中学3年生である。思春期である。そんな時期もあったなぁ。半世紀も前のことだ。
「定価★★★★」ともある。★四つ。そういえば、岩波文庫の定価は★で表わされていた。一ついくらだったんだろう。

いつしか、来し方を振り返る年頃になってしまった。

そういえば朱子学の創始者である朱熹に「偶成」という詩がある。

 少年易老學難成

 一寸光陰不可輕

 未覺池塘春草夢

 階前梧葉已秋聲

まさしく秋になってしまっている。人生の秋…


2014年11月7日の夜明けである







 
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