何がバチ当たりなのかというと、67歳の自分の年の半分しかない歳の女性と暮らし始めたのである。
あまつさえ、年金もなく、貯えもないのに築60年だか70年だかのボロ家を新築までしてしまった“魔法使い”なのである。
そういう年周りの女性と一緒に暮らしているのだから、当然その親に仁義を切る必要がある。
聞けば自分より年下であるという。
「どうしよう、どうしよう」とすっかり途方に暮れる風情だったのである。
酒を飲むと、去年の暮れあたりから半分は嬉しそうに愚痴るので、「知るか、馬鹿、勝手に悩め!」と高みの見物をきめこんでいたのだが、それも何とかクリアしたらしい。
件のご両親も自分の娘の行状にあきれ果ててしまったのだろう。ご対面では何も言わず、ただニコニコしているだけで帰っていったのだという。
ご両親の立場になって考えて見れば、何か分からないでもないような気がするではないか。
それくらいに浮世離れした、バチ当たりな話なのである。
2、3年前の早春、ようやく梅の便りが聞こえ始めた時期に横浜の野毛山公園を妻と歩いていたら、反対側からやってくるアベックがいて、近づいてみるとその2人なのである。
当時は、恋人が出来たくらいのことは示唆していたが、すべてはベールに包んでいた頃である。
普段は友人の方が目が早く、町ですれ違うような時には決まって友人のほうが先に気付き、遠くからでも声をかけてくるような奴だったのだが、その時ばかりは話に夢中だったと見えて、こちらから「オイ○○!」と声をかけるまで、まったく気付かなかったのである。
一瞬、友人は何事が起ったのか分からなかったようである。
我に返った後の目は宙をさまよい、しどろもどろになったので、呆れて、ろくに話もしないまま行きすぎたが、それほど周囲が見えなくなるほど舞い上がった時期だったのだ。
昨晩、いつもの3人組で旧交を温めていたら、電話がかかってきて、仕事が終わったから合流するという。
その女性と初めて親しく話をしたが、思いのほかしっかりした女性だった。根っからの善人で正直者で人の話をじっくり聞く温厚な性格の友人の良いところを実によく理解していて、感心した。
「両親は私が同年代の男性と結婚するとは思っていませんでした。結婚するなら外国人かずいぶん歳のかけ離れた人を選ぶだろうと。それが想定外の年格好と貯えもないような人だからさすがに驚いたみたい」と言っていた。
両親も初対面ながら話を交わしているうちに、娘が報告していたとおりの友人の性格に安心したのだろう。何も触れずに帰って行ったというのは、そういうことに違いない。
友人は顔の血色も良く、若返ったようにも見える。聞き上手がこの日ばかりは明るい声でしゃべり続け、上機嫌で飲んでいた。果報者にして、つくづく”バチ当たり”な男なのである。
鶴岡八幡宮のぼんぼり祭りに出品されていた横田南嶺円覚寺派管長の揮毫
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