それも一升瓶に入った赤ワインで、2本も。
口に合うかどうかわからないけど一度飲んでみてよ、と送られてきたのが最初である。もう何年か前のことになる。
わが家の晩酌は大概赤ワインだということを知って送ってくれたのである。
正直言って1.8ℓも入ったドデーンとしたズンドウの瓶はスマートではない。
通常の720mℓの瓶の横に並べると繊細さのかけらも感じさせない。おしゃれとか小粋なとかいう形容詞の対極にあるような無粋な姿に見えるのである。
ただし、これは容姿のことであって中身のことではない。
しかし、見た目というのは大切な要素である。中でも食欲とからんだ場合の見た目は重要である。
例えばウナギ。あのにょろにょろとした姿を好まない。触るのなんてまっぴらご免である。
ウナギが一匹丸ごと、とぐろでも巻いて皿に乗せられて出てきたら、絶対に口にしないだろう。
蛇とかミミズとか、細くてくねくねと長いものには怖気を催すのである。
アナゴもしかり。
それでも口にするのは、短冊に切ってあって、原型とはまったく違っているからなのである。
話を一升瓶に戻す。
肝心の中身の味はどうなのか。
はっきり言って、これはしょせん国産の、しかも一升瓶に詰め込んで売るような代物である。押して知るべし!
と、一刀両断に切って捨てたいところだが、どっこい、夕食の時に水代わりにしている身には「うんっ?」と振り返りたくなるようなワインに仕上がっている。
コストパフォーマンスとやらの問題である。
瓶のラベルにぶどうの種類が書かれていないので不明だが、このワイナリーの赤ワインはシャルドネ、メルロー、マスカットベリーA、ブラッククイーン、カベルネソービニョン種でできているから、そのいずれかである。
辛口の割と軽めの飲みやすいワインである。若くて熟成がいまいちなのは致し方ない。
一升瓶がもつのは良くて3日、早ければ2日で空になってしまう。
アルコール度数は11度とやや低めとはいうものの、それはそれ、ちゃんと立派に酔いは回るのである。
このワインは開けて2日目が美味しい。半分ほどに減ったワインが、一升瓶の大きな空間に残された空気に触れて一定程度酸化が進むからである。
ワインが2本も届いた夜、送り主の友人から電話がかかってきて「たまたまワイナリーに寄ったのだが、生産を打ち切ったそうだ。しかも残り5本だというので、それは一大事とばかり送った。心して飲むように!」との御託宣である。
これには驚いた。
山形の片田舎の良心的なワイナリーの、その中でも良心的な料金であの味を提供してくれてきたワインが姿を消してしまうのか!
ワイナリーのホームページによれば「地元朝日町産と他の山形県産ぶどうを使用してきたが、原料確保が大変厳しい状況になり7月末日を持って終売とさせていただきます」と書かれている。
1984年から31年間醸造され続けてきたのだが、残念である。
仕方ない、1本は空にしても、もう1本は大切に貯蔵しておくことに決めた。
せめて3年後の古希まで、台所の床下にしまって取っておくつもりである。
楽しみが一つ増えた。何が幸いするかわからない。
「どうだ!」と言わんばかりに堂々とした一升瓶の赤ワイン
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