以前にも書いたことのある熟柿について。
渋柿の渋を抜いてどっさり送ってくれた山形の友人から、柿にウイスキーを垂らすと美味しいと言っていたが、どうやるの?と聞かれた。
枝に残されていた柿がすっかり熟してきたので、ウイスキーを垂らして食べてみたいという。
簡単である。トロトロに熟した柿のヘタをとり、ウイスキーを垂らすスペースを確保するため、スプーンで少しほじくる。ほじくってへこんだところにウイスキーを数滴たらせばよいだけ。これをスプーンですくって食べるのである。
トロトロになった甘~い果肉にウイスキーの味と香りが絡み合って、ただ甘いだけの柿ではなく、これまで味わったことのない大人の味と香りに出会うことになる。
わが愛飲のウイスキーはスコットランド産のラフロイグである。
ヨードの匂いとも表現される独特の香りを持ったシングルモルトで、仕込みの際にビートと呼ばれる泥炭で麦芽を燻蒸するため、ピートが持っている独特の匂いが麦芽についたまま蒸留されて行く。このため出来上がったウイスキーには独特の香気(スモーキーフレーバー)が住みついているのである。
製造地の泥炭の種類によって、ウイスキーそのものの味が変わってくるそうだ。
もとはと言えば海の香りだが、ヨードの匂いとは些かデリカシーに欠けた表現のようにも思える。それだけ強烈な香りを持っている。したがって、他のスコッチのシングルモルトに比べてラフロイグは好き嫌いのはっきり分かれる酒である。
いつもこのスコッチを垂らしているのだが、柿に垂らすと独特の香りはすっかり消えてしまい、甘いけれども甘くない、得も言われぬ食べ物に変身するのである。相乗効果のなせる技なんでしょうナ。
BEYOND DESCRIPTIONてやつですヨ。中学英語で覚えさせられた「筆舌に尽くしがたい」。
友人の奥方の感想は「酔っ払っちゃうわね」だった。それは垂らし過ぎじゃありませんか?
もしやウイスキーをたっぷり注いだグラスに柿を入れて飲んだんじゃないでしょうね…
柿「に」数滴、でいいんですからね !
ウイスキーを垂らして柿を食べるのは、ほかにどんな方法があるのか。インターネットで「熟柿」「ウイスキー」と打ちこんでみたら、小生のブログが上から3,4番目に出てきてビックリした。
みな同じような趣向だったが、イタリアでは熟柿を凍らせてからウイスキーを垂らして食べるんだそうだ。シャーベット状になり美味しいんだとか。今度やってみよう。それと、ラフロイグ以外のウイスキーではどんな味になるのか試してみなければいけない。ウイスキー以外の酒ではどうか…
ともあれ、熟柿の透き通るような朱色のグラデーションに琥珀色のウイスキーが溶け込んで、見た目の美しさに、BEYOND DESCRIPTIONな味が混じり合って、それはそれは至福のひと時なんである。
開高健の悩みは文筆家だったがゆえに、どんな食べ物を食しても、BEYOND…などとは言えず、いつもいつもその味をペンで表現しなければならなかったことだそうだ。
ま、小生の場合は微妙な味の違いを感じ取れる舌も持ち合わせていないし、美食の経験もない。テレビの食番組に出てきてしたり顔で話すタレントみたいな厚顔さも持ち合わせていない。とりあえず許していただきましょう。
熟柿にウイスキーを垂らして食べる ! きれいな色合い、舌触り、柿とウイスキーそれぞれが発するほのかな匂い…が食欲をそそる
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