小学校6年の時、沖縄から筑豊の僕の小学校へ転校生がやってきた。
中曽根さんという女の子。名前はさっちゃん。沖縄だけに色は少し黒かったけど、目がパッチリのかわいい子。
僕はいっぺんにファンになった。
ところが転校生に対しては意地悪をする男子がどこの小学校にもいる。わが小学校も例外ではなかった。
「やーい、くろんぼ。や~い」ほんとはかわいいからいじめるのだけど、男はどうしてこうなんだろうねえ。と、当時の小学生の僕はそんなことは思いつかない。
転校してきた、かわいい女の子への嫌がらせとしか思わない。
なんでそんなことするんだよ、と思いながら、優柔不断で、気が小さい僕は「そんなことやめろ」と言いたくても言えない。
ただこれが何度も続くと、さすがに僕も我慢できなくなった。そして、爆発する。
ある日、帰りの掃除の時間に、またさっちゃんをはやし立て出したグループのボスAに対して、うおーっという声とともに、僕は自分の机の木の椅子を持ち上げ、放り投げたのだ。興奮すると、何をするのか自分でもわからなくなるのだった。
本人に当たりはしなかったが、びっくりしたのはA 君。ただ、そのあと、すぐ僕がとびかかり、殴りかかったので、なすすべもなかったはずだ。いつも加害者だったA君が初めて被害者になったのはこの時だった。
もちろん、周りにいた同級生たちは先生を呼びに行った。
……
先生は静かに僕に聞いた。なんでこんなことしたの。この先生は僕にとてもやさしい先生だった。1,2年の担任であったし、また、6年生で担任になっていた。
僕は答えた。「ごめんなさい。僕学校やめてもいいです。さっちゃんがいじめられるのが、我慢できませんでした。どうしても」
「お母さんがよばられるのでしょ」
「呼んでいいです。僕は学校やめていいです」
先生は言った。「今回はお母さんにも言いません。A君にもしっかり言い聞かせます」
その後、僕とA君は仲直りして、親友になった。
あれ、さっちゃんとはどうなったんだっけ。
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