ふたたび、山下惣一さん。
今読んでるのは山下さんが書いたのではなく、佐藤弘さんが聞き書きしたもので、「振り返れば未来」。とても面白い。勉強になったというか。うなることばかり。とっても共感するがすごい考え方とおもう。
その中の一節を抜き書きします。
組織に役職があるように、百姓にも段階がある。
最下位の第1段階が「生活のための百姓」
虚栄と浪費の生活に追われ、「食えん、くえん」とぼやきながら生涯を終える百姓。
第2段階が「芸術化の百姓」。作り育てる喜びに芸術を見いだし、仕事に没頭する百姓。百姓が楽しくなり、作業の苦痛を忘れて百姓に没頭するから、日々幸福になり、失費の機会なく、家が栄える。また、仕事を労働とするな。道楽とせよ、とも。
第3段階は「詩的情操化の百姓」田園生活にポエムを感じ、こころ安らかに生きる百姓。山の端に沈む夕日を見て、美しいと思える心。
第4段階が「哲学化の百姓」
人の世の真理を追究する学問を哲学といい、天の声、地の声を聞く「旧同心」を持たねばならぬ。あえて私自身が学んだことは3つ。
「成長が早いものほど寿命が短い」「自然界には全くウソが通用しない」「農業は論より証拠」
そして、最高位の5段階が神仏に近づく「宗教化の百姓」。
日本人の信仰の対象の神は自然だから、自然の懐に抱かれて自然に寄り添い、自然とともに生きる百姓こそが、神仏に最も近い位置にいると言いうわけだ。
生活だけなら、二十姓でしかない。早く」四十姓に進め、六十姓に届け、八十姓に上れ、そして、百姓に坐せば成らぬ。
就農して70年、小農として生きてこれたのは人と競争せず、ウソをつく必要がなく、だれにも命令されず。定年もノルマもなかったから。なぜ好きになったかは農作物も家畜も手を加えた分だけ、応えてくれるから。人は裏切ることがあるけど、作物や家畜は努力を裏切らない。
「娯楽の楽しみは、生産の喜びにかなわない」
70年農業をしたからといっても、田植えも稲刈りも70回しかしたことない。
農業は日々発見。自然環境は常に変化するから絶対というものがない。謙虚にならざるを得ない。
だから私は「市民皆農」を提唱する。「半農半x」「定年帰農」「年金プラス農業」「週末農業」…。
儲けようと考えなければ楽しいもんだ。
前回の文章で山下さんは今年亡くなったと書いてしまいましたが、正確には昨年でした。
改めて恐れ入りました。
With the nature-自然とともに生きる百姓
前回のポスターにつながっているところがうれしい。