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ゲーム音楽好きhideのブログです! 旧ブログから引っ越してきました。

三日月の散歩 #8 (ゲスト:ハービー山口さん)

2006-11-26 16:46:24 | 三日月の散歩
「植松さん、普段携帯電話で写真撮ったりしますか?」
今週の三日月の散歩は、古賀さんのこんな質問から。
しかし、ノビヨ師匠の携帯のカメラはなんと1年以上壊れたままだそうな。
師匠は写真集(特にモノクロ)を見るのがお好きだそう。
どんな種類の写真集かは特に仰ってませんでしたが。

さて、今週のゲストは写真家のハービー山口さん。
大学卒業後にロンドンに渡り、およそ10年を過ごし、そこでパンクムーブメントを実体験。
70年代のロンドンを写真に記録するようになり、帰国後もヨーロッパと日本を往復。
各国のアーティストから巷の人々まで多くの人々をファインダーに収め、多くのファンからの支持を獲得。
写真家としてだけではなく、エッセイストやラジオDJとしても活躍されています。

師匠が憧れていたという、70年代のロンドンのミュージックシーンを渡り歩いていたハービーさん。
師匠曰く、一番ロンドンの音楽シーンががらっと変わる頃。
でもハービーさんはミュージシャンの人を撮りに行ったというわけではなく、偶然にミュージシャンの人がそばにいたんだそうです。

なんでも、ハービーさんの住んでいた家の隣にリハーサルスタジオがあり、色々な新しい曲が壁伝いに伝わってきていたそう。
1年くらいしたら、それがパンクロックとして世に出たんだそうです。
クラッシュや、ピストルズといったバンドがデビューしたのだそうですが、クラッシュというバンド名を聞き、師匠は「クラッシュ!?」と大きく反応されてました。
ある日ハービーさんが地下鉄に乗っていると、クラッシュのヴォーカリストである、ジョー・ストラマー氏に遭遇したそうです。
ハービーさんは嬉しくて2・3枚写真を撮らせてもらったそうですが、次の駅で彼が地下鉄を降りる際、「撮りたいものはみんな撮れよ。それがパンクだぞ」と言われ、その一言で"やりたいことを妥協なくやる。それがパンクのスピリットだ"、と実感されたそうです。
パンクは決して退廃的なものではなく、師匠曰く「正しい前向きな考え方なんですよね」とのこと。

さて、ハービーさんは日本に戻ってきた後も、福山雅治氏や山崎まさよし氏など、多数の芸能人を撮影されています。
写真を拝見したという古賀さん曰く、表情がとても柔らかいとのこと。

師匠もゲーム雑誌でたまに写真を撮ってもらうことがあるそうですが、その際カメラマンに「笑ってください」と言われることが多いそうです。
でも師匠曰く、モデルでもない素人だから笑えない、とのこと。
だから、初めてのカメラマンとモデルとの間には何かしらの信頼関係を築く必要があるのかな、と思うそうです。

それに対しハービーさんは、写真家の立場から言えば、一瞬にしてモデルの一番いい表情を見破るだけの眼力が必要、とのこと。
ソフトな表情を撮った方が人柄が出る人もいれば、仕事中の真剣な横顔を撮った方が人となりが出る人もいる。
そういうものを、初対面の数分ですぐ見破る能力がカメラマンには必要だと思うそうです。

次に、ハービーさんが1982年、U2というバンドのボーカルであるボノ氏を撮った時のエピソード。
ハービーさんがカメラバッグからカメラを取り出し、いきなり写真を撮ろうとすると、「まぁ待て。君の事をちょっと知りたいんだよ」という感じでいろいろ話をした後、納得ずくめでフォトセッションが始まったそうです。
ボノ氏は「君のリクエスト通りに撮るよ」と、すっかり打ち解けた雰囲気だったそうな。

でも日本の芸能人を撮る時は、そういった会話がなく、場合によってはハービーさんのことを芸能人に対してマネージャーが紹介してくれないこともあるそうです。
ただ、5分間撮れ、みたいな。どの写真を使って良いか、使って良くないかも事務所チェックで全て決めるそうで。
そこに文化の香りが何もしない、と嘆いていました。

ボノ氏の仕事に対する姿勢に対し、「これが世界に通じる人のやり方なのか」というものをまざまざと見た気がする、とのこと。
師匠曰く、このボノ氏のエピソードについて、コミュニケーションが取れてると一言。
来た!この番組で幾度となく出てくるキーワード、"コミュニケーション"。
やっぱり生きるうえではとても重要ですね。

さて、この辺でノビヨ師匠セレクションの音楽を。
1曲目はカルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ』。
ハービーさんはロンドンに居た頃、元カルチャー・クラブのヴォーカリストであるボーイ・ジョージと同じ部屋に住んでいたそうです。
余談として、彼はゲイだったそうですが、ハービーさんはストレートだったのでとてもドライな関係だったそうな。

話は続いて。
ハービーさんはロンドンに居た頃、ある日友人に電話でこう言われたそうです。
「(俺の住んでるマンションの)2階の角部屋に住んでるキレイな女の子がいる。ここ2・3日、カメラマンが出入り口にいて、その子の出入りを撮ってるんだ。誰だか知らないけど、お前も1枚撮っておいたら?」

それを聞いたハービーさんは現場に行き、他のカメラマンと共に彼女を写真に収めたそうですが、実はその女の子は後のダイアナ妃だったそうです。
これには師匠も古賀さんも驚いてました。

次は、「この瞬間を撮りたい!と心の中から湧き上がり、カメラを向けたくなるような瞬間は、今の時代でも変わらない?」という古賀さんからの質問。
ハービーさんは昔も今もあまり変わらない、との答え。
中学2年から写真を撮り始めたそうですが、その頃すでに「人間の優しい所を撮って、人が人を好きになるような、人の心がキレイになるような写真が撮りたい」と思っていたそうです。

それまで身体的な点を揶揄され、ずっといじめに遭っていたというハービーさん。
そんな経験もあり、僕の写真を見た人が優しい気持ちになってくれれば、という思いを持っていたそうです。
その思いは今もずっと変わらず、それが写真のトーン(作風)になって未だに生きているのではないか、とのことでした。

師匠は、何か武器を持てばいい、と仰っていました。
それがハービーさんの場合はカメラである、と。

僕は写真に出会ってラッキーだった。いろんな人が僕のカメラの前を止まっては通り過ぎていったけれど、その人たちすべてが僕を強くしてくれた、と言うハービーさん。
大きく言えば、僕の写真のテーマは世界平和。
今は僕が(人に写真を見てもらって)恩返しするタイミングだ、とのことです。

さて、ここらでノビヨ師匠セレクション音楽の2曲目。
ジャコ・パストリアスで『トレイシーの肖像』です。

ジャズの音楽家の方はモノクロ写真の印象が強い、と言う師匠。
ハービーさんの作品はほとんどがモノクロ写真なんだそうですが、ハービーさん曰く、モノクロはカメラマンの思いを純粋にさせてくれるそうです。

色がなく、ごまかせない。頼れるのは光と影と表情だけ。
師匠も、モノクロの方が想像力を掻き立てられる、とのこと。
ハービーさんは、「この人の着ているTシャツはどんな色なんだろう。この人の後ろの空はどんな色なんだろう」というように、想像の余地を残しておくのも素敵な事だと思うそうです。

お次は、ハービーさんへの30秒アンケートコーナー。

①デジタル技術の導入は写真を変えたと思う → YES
②携帯電話のようにカメラがくっつくといいなぁと思うものが他にある → YES
③ハービーさんもプリクラをすることがある → NO
④何年後かの目標がある → YES
⑤もう1度生まれてきても写真家になりたい → NO

①は、仕事でデジカメは使われるそうですが、逆に誰でも撮れてしまうのでモチベーションが上がらない、とのこと。
作品を撮る時はもっぱらフィルムだそうです。

②は、自分の脳の中にちっちゃなカメラがあればなぁ、とのこと。
「あ、いいな」と思ったらすぐ撮れちゃう、みたいな。
何十年後かに実現しそうで怖いなぁ、と師匠。

③は、撮ったことが無いので答えはNOだったそうですが、憧れるそうです。
「今この瞬間を撮っておこうよ!」というようなデートをしてみたい、とのこと。

ここでもう1曲。
3曲目は、ポール・サイモンで『僕のコダクローム』でした。

それでは最後に、この番組恒例・予言コーナー。
ハービーさんの予言は「10年後には、写真はカメラ等の道具によって撮るものではなく、心を使って撮ることが常識になる」でした。

写真は見えるものしか写らない宿命があるが、それだけではカメラマンは満足していない。
その表面の奥にあるものを撮ってそれを表現する、という時代にますますなっている。
それには、心というもので撮らないと写せない、とのこと。
自分の心で、相手の心を撮る。
それが写真作法になるのではないか、とのことでした。

そういえば、5回目のゲスト・宇津木えりさんも「10年後、ファッションはスタイルではなく心で着るようになる」というような予言をされてましたね。
心か…目には見えないものだけど、大切なものだよなぁ。
心ない人が少なからずはびこるこの世の中、いったい心ある人って今この世にどれだけ居るんだろう。

てなわけで、今週のゲストは写真家のハービー山口さんでした。
師匠は「話聞き足りないっすー!」と名残惜しそうな様子でしたが。
それではまた次回!
コメント (2)
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