その三
このように下卑なところがこの世に現実に未だに存在すると言うのだろうか!
トイレは流さないのである。男性も女性も大便がそのまま残っている。小便の便器はそのまま痰壺になり、タバコの灰皿になり、何時も詰まっている。
トイレから出てくる男女全ては手を水で洗って手を空中にぶらぶら振りながら出てくる。空干しである。自然干しなのだ。
男性トイレのドアの内側には女性器をアップした落書きがあり、案の定タバコを押し付けて中心部が黒くなっていて破られて穴が開いている。
恐らく昔、子供のころ信介の日本の田舎の何処かで目にした光景だったかも知れない。うっすらと記憶が過る。
街へ足を運べば町のど真ん中のストリートで容易に目に飛び込んでくるのはお母さんに看取られて小さな子供が所構わず尿や便をしている。
しかも通りの路面は斑に汚れが染みついて一種独特の匂いが漂っている。
さっきのオフィスビルの中のトイレから漂って廊下に広がっている匂いが連想されて奇妙にも同じ味わいが重なる。
そして、通行人はポイポイと紙くずや不要物を平気で道路に投げ捨て散らかして通り過ぎる。それが皆、自然の動作なのだ。平気のへっちゃらなのだ。
この町は今では発展する中国の三大都市と呼ばれて大都市化の道をまっしぐらに走っているかなり有名な地方都市なのだが。結局、信介が一番腰を長く落ち着けることになった所だったから寧ろ憎しみの方が強い。つまり、中国人の気持ちを代弁できるほど生活の愛憎が理解できたのだ。但し、信介が目に止まったこれらの情景は普通の中国人には気がつかない。当たり前過ぎて誰も気にする人はいないのだ。恐ろしいほどの実態に、信介は出くわしている。もしかして信介自身もこのような現実に気付いたのはつい最近のことだったかも知れない。このような環境にはっとし目を丸くし、一人恐怖に陥ったのは信介が我が子を東京に進学させた後のことだった。
このように下卑なところがこの世に現実に未だに存在すると言うのだろうか!
トイレは流さないのである。男性も女性も大便がそのまま残っている。小便の便器はそのまま痰壺になり、タバコの灰皿になり、何時も詰まっている。
トイレから出てくる男女全ては手を水で洗って手を空中にぶらぶら振りながら出てくる。空干しである。自然干しなのだ。
男性トイレのドアの内側には女性器をアップした落書きがあり、案の定タバコを押し付けて中心部が黒くなっていて破られて穴が開いている。
恐らく昔、子供のころ信介の日本の田舎の何処かで目にした光景だったかも知れない。うっすらと記憶が過る。
街へ足を運べば町のど真ん中のストリートで容易に目に飛び込んでくるのはお母さんに看取られて小さな子供が所構わず尿や便をしている。
しかも通りの路面は斑に汚れが染みついて一種独特の匂いが漂っている。
さっきのオフィスビルの中のトイレから漂って廊下に広がっている匂いが連想されて奇妙にも同じ味わいが重なる。
そして、通行人はポイポイと紙くずや不要物を平気で道路に投げ捨て散らかして通り過ぎる。それが皆、自然の動作なのだ。平気のへっちゃらなのだ。
この町は今では発展する中国の三大都市と呼ばれて大都市化の道をまっしぐらに走っているかなり有名な地方都市なのだが。結局、信介が一番腰を長く落ち着けることになった所だったから寧ろ憎しみの方が強い。つまり、中国人の気持ちを代弁できるほど生活の愛憎が理解できたのだ。但し、信介が目に止まったこれらの情景は普通の中国人には気がつかない。当たり前過ぎて誰も気にする人はいないのだ。恐ろしいほどの実態に、信介は出くわしている。もしかして信介自身もこのような現実に気付いたのはつい最近のことだったかも知れない。このような環境にはっとし目を丸くし、一人恐怖に陥ったのは信介が我が子を東京に進学させた後のことだった。
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